わにの日々-中西部編

在米30年大阪産の普通のおばさんが、アメリカ中西部の街に暮らす日記

ザ・ワールズエンド また、ねたバレ!

2013-08-25 | 映画・ドラマ・本
 サイモン・ペッグとニック・フロストのコンビ最新作、「ザ・ワールズ・エンド(The World's End)」観てきたよ!実は私自身は全く、この映画をチェックしてなかったんだけど、若息子がこのコンビの映画が大好きで、『ショーン・オブ・ザ・デッド』、『ホット・ファズ-俺たちスーパーポリスメン!-』、『宇宙人ポール』はしつこく何度も観ており、この映画も楽しみにしていたよう。でも、飲酒、麻薬、暴力シーンに、性的描写と下品な言葉と、見事なまでにR指定(「Restricted」の略で、17歳以下は大人と一緒じゃなきゃダメよ、って映画)の条件を兼備えているだけに、保護者として同伴しました。いやー、ほんとに全部揃ってて、母と息子が並んで観るのは、やや気不味いものが…

 事前チェックしてなかったのが幸いして、えーっ?こうなるのー?!っと、意外な展開に驚きっぱなしでした。今や中年となった高校時代の仲良し5人組が、高校卒業の夜に達成できなかった12軒のパブはしご酒に再チャレンジすべく、故郷のニュートン・ヘブンに集合。12軒目のパブ、「The World's End」目指し、ビールを飲みまくる、ってお話なんだけど、これは、ペッグ―フロストのコンビ+エドガー・ライト監督のパロディー・コメディー三部作、Three Flavours Cornetto trilogy(または血とアイスクリーム三部作)の三作目だけあって、一筋縄ではいきません。ゾンビ映画、ポリス・アクション映画に次いで、今作はSF映画をもじっています。中年男たちは世界を救うためにビールを飲むのだ。以下、わにブログ恒例の白抜きで大々的ネタバレ!:
 前知識の全く無しの私にとっては、まさかの「ボディー・スナッチャー」展開でした。密かに異星人に侵略された街で、一人、また一人と肉体を乗っ取られ、別の何者かに変貌してしまうという、過去に何度も映画化されたジャック・フィニイ作「盗まれた街」を原作とする映画です。『宇宙からの遊体X』も、このモチーフですね。正統派としては、2007年の『インベージョン』が、リメイク最新作ですが、1956年に制作された『ボディー・スナッチャー・恐怖の街』は、マッカーシーの赤狩り時代に制作されただけあり、フィニーの原作に込められたパラノイアに対する揶揄して批判する作品として観ることも出来ます。フィニーは、リリカルなタイムトラベル物のほうが知られていると思うんだけど、こういったSFも書いていたんですね。

 この映画では、乗っ取られた人間がなってしまう「謎の何か」はロボット。それが判明するシーンでは「What's going on?!?(一体どうなってんの?!)」と超混乱しちゃったよ。くたびれたおっさん五人がビール飲んでノスタルジーに浸る映画を見てたら、いきなりロボットだもん。この三人組の作品なので、このまま成就を懐かしむおっさんの話では終わらないだろうとは思ってたんだけど、タイトルが似てるから「宇宙の果てのレストラン」辺りが来るかと思い始めてたとこで、頭を取ったら青い血(?)がダラダラのロボット。衝撃でした。

 今までの作品は、ペッグが冷静で常識のある役、フロストがボケ役でしたが、今回は逆で、キれてるのはペッグのゲイリーで、落着いてるのがフロストのアンドリュー。でも主題が二人の友情なのは同じ。でも、フロストは今までのどんくさいデブ役からは意外なm武闘派ぶり、企業顧問弁護士という役柄に見合って、知性が滲み出る感じで、これまた驚きました。

 高校時代は仲間の中心だったゲイリーが、それぞれに成功して安定した生活を送っている4人を集めて、バカげた梯子酒をしようというプロットは、この頃、ハリウッド映画でよく見る、かつての悪童仲間が再集合して、バカして、仲間割れして、最後には友情を確かめ合うという同窓会ものフォーマットを踏んでいるのかと思いきや、ここにも、それだけでは収まらないシリアスなテーマが潜んでいます。

 街で一番クールな若者として人生を謳歌していたゲリーは今やアル中。もう一度、仲間と、あの高校時代最後の夜、人生最高の一夜を再び取り戻したい。The World's End、「世界の終わり」への到達だけが、今の彼にとっての生きる証。友人達のように責任ある仕事もなければ、家族もいない彼の、人生における唯一重要なことなのです。高校時代に乗り回した古い愛車「ビースト(野獣)」に乗り込み、故郷の街に向かう際のBGMは、20数年前のお気に入りの曲のカセットテープ。今どき、カセットテープ?しかも、車のカセットに入ってた??その謎も、後から明かされます。直接セリフで説明すること無しに、背景を語るのは脚本の妙でしょう。

 毎度ながら、作中には色々なSF映画のネタが盛り込まれてており、オタクな私は自分の分かる範囲で楽しみましたが、それ無しでも十分に面白い。最後に、マッドマックス化してるだけでも「こう来たか!」なのに、更に予想を裏切る愉快な展開。ロボットになっちゃった人達は、ロボットのまんま前とあんまり変わらない暮らしをしてるのは、ゾンビになっても実は元の生活の戻っただけって『ショーン』のオチと同じ?思えば、『ホット・ファズ』でも、大騒ぎの果てに、街は以前と変わらない平安を取り戻してましたね。何があっても、人間なんて変わらないさってのも、三部作のテーマなのかな?

 観終わった後の後味がいいのも、ペッグ+フロスト映画の特徴ですね。私的には、身がつまされる部分もあったのですが、若息子は今までの『ショーン』、『ホット・ファズ』、『ポール』を含めた4作でも一番気に入ったんだって。現役高校生の彼は、高校時代を頂点に、堕ちていくばかりだったという男を描いた映画に、何を思ったのか…??


 三部作は完結したし、ペッグもフロストも単独出演作が増え、世界的な知名度も上がったけど、まだまだ、このコンビのホロリとするバディー・コメディーを観たい。今後も面白い作品を撮り続けていって欲しいな。日本での公開は来年になるそうですが、なーんで、そんなに時間差があるのかなぁ??


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