わにの日々-中西部編

在米30年大阪産の普通のおばさんが、アメリカ中西部の街に暮らす日記

ウルヴァリン SAMURAI ねたばれしなきゃ感想書けない!

2013-08-13 | 映画・ドラマ・本
 近くのシネコンでの上映回数が減っているのに危機を感じて、「ウルヴァリン:SAMURAI」を観に行きました。次々と公開されては、ハラハラと散っていく夏のブロックバスターに埋もれていく作品が、今年の夏は特に多いように思います。大ヒットといえるのは、CGアニメでしかも続編の「怪盗グルーのミニオン危機一髪」だけで、鳴り物入りだった「アイアンマン3」や「マン・オブ・スチール」も期待程のヒットではなかったし、「スター・トレック」、「パシフィック・リム」「ワールド・ウォーZ」も、そこそこヒットはしたけど、あくまでも「そこそこ」で、去年の「アベンジャーズ」のような大当たりは出ませんでした。この「ウルヴァリン SAMURAI」も、出だしは好調だったけど、どんどん興行成績が落ちて、やっと国内で制作費の100億ドルをなんとか超えたとこ。でも、せめて日本の光景を大きな画面で見るためだけでも、と、いそいそと劇場に足を運びました。

 東京の雑踏やラブホテル、長崎の田舎家、新幹線といった、「ちゃんとした日本」が舞台かと思えば、いかにもセットの謎日本が出てきて忍者と対決したり、重要な登場人物も、真田広之演じる矢志田信玄と、ヒロイン、真理子と雪緒はちゃんと日本人なのに、他の主要キャラ男性二人、森と原田は日本語が変とか、中途半端というか、全てが徹底しきれていない。色々な設定が、その場その場の都合に合わせて、テキトーに決められたようで、全編通していい加減な感じがしました。

 この頃のアクション映画では必須の、走る列車上の対決も、新幹線となるとスピード感ありますが、相手のヤクザが障害物を飛び越えるわ、ウルヴァリンと対等にやりあうわで強すぎ。時速300キロで走ってる列車の屋根で、突き立てたナイフに頼ってしがみついてられるだけで、こいつ、普通の人間と違うやろ、と。この映画に出てくるミュータントは、ウルヴァリン、バイパー、そして、雪緒には予知能力があって、ミュータントらしい(?)んだけど、扱いが微妙。これはX-Menシリーズとは少し違うんだから、ミュータントは重要要素ではないとはいっても、日本人にはミュータントはいないの?ってほど、無視されてる。

 雪緒は、子供の頃に浮浪児としてゴミ箱を漁っていたところを矢志田に拾われ、真理子と一緒に育ったって設定だけど、現代日本で、浮浪児が路上でゴミ漁りは無理があるような… リアルに日本となんちゃって日本が混合してるのと同様、マーベル世界というか「作られた舞台設定」と、現実世界がテキトーに混ざってる感じで、とにかく全体的に、ご都合主義が目につきました。だいたい、カナダは冬だけど、東京は暑そう。長崎じゃ子供たちが半袖着てるのに、北に行ったら雪が降ってるとか、一体、季節はいつ?

 もう一つ、気になったのは、日本語字幕の出る場面が少ない。冒頭は、予告でも紹介されている第二次大戦中にローガンが日本人将校、若き日の矢志田を助けるシーンなのですが、ここで、敵だ、空襲だ、広島のと同じだ、早く逃げろ、なんて台詞は、全く字幕なし。舞台が長崎で、対岸の大爆発は原爆なのですが、字幕がないので、あれが原爆だったと通じたかどうか。しかも、爆発による煙が晴れたら、もう大丈夫だ、って外に出ちゃうローガンと矢志田。放射能の影響ゼロかよ(呆)

 矢志田はローガンに自分の刀を贈ろうとするのですが、この日本刀の銘が「不老不死」で、なるほど、これはローガンのための刀なんだねぇ…なんだけど、これも字幕での説明無し。ただ日本市場のためだけに作った設定ですか?他にも、日本語が出てくるけど字幕なしのシーンが幾つかあって、不親切だなって思いました。ところで、矢志田のイメージは、ロゴといい、名前といい、東京でローガンが見かけた看板から察せられる商品(スポーツグッズ)といい、モデルはヤマハっぽい。出てくる車はアウディだから、トヨタじゃホンダではないよね。東京から長崎に行くのは、新幹線から電車を乗り継ぎ、フェリーに乗ったのに、帰りは車で、しかも、車中で会話もしなかったらしいローガンと雪緒。何時間も無言で走ってたんかw まぁ、色々と矛盾が…

 ウルヴァリンさんの筋肉は凄いです。すごすぎて、これ本物?って、何度も思いました(右の写真とか凄くない?)。本物だったら、ドーピングしてるよな。ヒロインの真理子役は、モデルのTAOさん。別に美人じゃないけど、雰囲気のある女性。でも、背が高いので、お父さん役の真田広之さんが可哀想…orz 日本刀を振り回して活躍する福島リラさん、なんだか、奈良美智さん描く子供たちみたいな個性的な容貌で、アメリカで人気出そう。この映画ではとてもチャーミングだったし、世界で活躍して欲しいです。そうそ、この映画では、スタン・リーのカメオはありません。ほとんどがオーストラリアと日本での撮影で、参加してる暇がなかったとリー御大は言ってるけど、実は、X-Menのシリーズでは出演してないんですね。そして、お約束のエンドクレジットの予告シーン、「お?おおっ?!」で、期待が膨らみます。

 でも、この映画を見終わっての第一の感想は兎に角、盛大にネタバレになっちゃうので白ヌキしますが出てくる日本人男性が全員クズかバカ!命を助けてもらった礼を言いたいとローガンを呼び出しておきながら、実は自分がその能力を奪って不老不死になりたかった矢志田老。自分がコンツェルンの後継者でないとと知り、実の娘を殺そうとヤクザを送り込む信玄。真理子の婚約者で(えらく若いが)法務大臣なんだけど、婚約は政界引退後の自分の地位のためで、部屋に外人ねーちゃん呼んで遊んでる森と、クズぞろい。真理子の幼なじみで、矢志田家に仕える忍者の原田は単細胞なアホ。残りは使い捨ての護衛や忍者か、刺青ヤクザに、酔っ払ってバイパーに絡むアホ。日本には、まともな男は一人もおらんのか?主人公の傷を直すのが獣医ってのもお約束ですが、ここではラブホテルの管理人の孫で獣医の卵の男の子。ヤクザと日本随一のコンツェルンに追われてるローガンを助けるには、相当な危険を犯しているはずなのに、ただの間抜けにしか見えない。この映画って、日本に好意的なんだか、そうじゃないのか、悩んじゃいます。

 つい殺してしまったジーンの幻影に悩まされるウルヴァリンことローガンは、日本を代表する大企業の矢志田財団の一人娘で後継者の真理子を護衛しているうちに、互いに惹かれ合っていくんだけど、このロマンス(?)も微妙で、なりゆきで一回だけヤっちゃっいましたって感じ。ローガンの再生には、ジーンを振り切る必要があり、真理子の存在はその為に必要なんだけど、残念ながら二人に何の情熱も感じられないし、絆が芽生えたようにも見えない。情緒あふれる海沿いの古い日本の田舎家、互いに浴衣姿でお床入りというシチュエーションは、「007は二度死ぬ」そのまんまで、単に、これがやりたかっただけちゃうんか、と。

 日本といえばロボット!らしくて、パワースーツが出てきます。「パシフィック・リム」のは巨大ロボだけど、こっちは体に直接、装着するタイプで生命維持装置付きらしい。長崎の基地が空襲された時には、まずアメリカ人捕虜を逃し、自分の大事な刀を差し出して命の恩人のローガンに感謝した矢志田だけど、年月を経て、卑怯なジジイに成り下がったらしく、死んだふりして孫娘を傀儡に権力を振るい続けるつもりだったようです。自業自得とはいえ、知らずに殺された息子も哀れ。でも、この段階で既に「どーせ中身はジジイだろ」って見え見えで、中から矢志田の顔が出てきても驚かないよー。それよか、「私はお祖父様を埋めました」って、慕っていた祖父をあっさり殺しちゃう真理子がコワイわ。

 エンドクレジットの途中で、空港でローガンの前に、マグニートと教授が現れるシーンが有ります。これは、次作への期待が超膨らみますね。マグニートと教授がタッグを組んでる?教授、生きてたの?ってことは、ジーンも??


 ま、いろいろ苦言もありますが、アクションは派手だし、日本も光景も懐かしく、私的には劇場で見た価値あり!平日の夕方なので、劇場内はせいぜい30人くらいしか居なかったけど、日本人らしき年配カップルが何組かおられましたよ。日本が舞台ということで、見に来られたのかな?真理子が作る鍋料理が美味しそうだった~!鍋ってことは、やっぱ季節は冬?ご飯に箸を立てちゃうローガンに「これは死んだ人へのお供えにすることだから、しちゃダメ」って真理子が諭すシーンが好きだな。「Nothing is without meaning.(意味のない事なんか無いのよ)」って台詞が、日本的で気に入りました。あとね、バイパーが手袋を取りながら歩いてくるシーンが有るんだけど、その次のシーンでまた手袋を取ったと思うの。この前にバイパー(毒蛇)が脱皮するシーンがあったけど、手袋も脱皮?これから見る方、確かめて~。他にも「あれれ?」なシーンが一杯あって、それもご都合主義というか、手抜いてるな、って感じた一因かも。

 ところで、上映前に、キアヌ・リーブスの「47 Ronin」の予告見たよ。なんじゃこりゃー?!?


DVD, Blue Ray発売時に、ロサンゼルス・タイムズに載っていた記事の紹介、」ウルヴァリン:監督とH.ジャックマンが語る日本」も、よろしければ見て下さいv