わにの日々-中西部編

在米30年大阪産の普通のおばさんが、アメリカ中西部の街に暮らす日記

Japan Deco@Dayton Art Institute

2014-12-21 | Museumsとイベント
 オハイオ州デイトンにあるDayton Art Instituteは、小規模ながらも充実した美術館です。5月に訪れて以来でしたが、1920年から45年の日本のアールデコを振り返る特別展を見たくて出かけてきました。第一次世界大戦後から第二次世界大戦終了までの、大正・昭和初期の「モダン」という言葉がぴったり来る洗練された作品の数々にため息しきり。1929年の「婦人世界」で紹介された「モダンガールの資格十カ條」が紹介されていましたが、なかなかに刺激の強いものです。実家がパーマ屋さんにの私は、わたしゃ若い頃はモガだったのよ、なんて方を(故人も含め)何人もお見知り置きしておりますが、彼女たちに対して大きな尊敬の念を抱いちゃいました。だって、私には絶対無理!ムリ!無理!な条件だもん。参考までに、この記事の下に、その十箇条をコピペしておきます。

 私がミュージアムを訪れる際の楽しみの一つは、カフェとギフトショップなので、お昼少し前に到着し、まずは腹ごしらえ。ここのカフェは、前に来た時も味が薄いなと感じたのですが、今回も薄かったw でも、雰囲気が良くって好き。薄味には胡椒かければ無問題!

 お目当ての「Deco Japan」展は、実に粋で見応えがありました。とっても気に入ったレトロなポスターやおしゃれな置物がたくさんあったのですが、個人コレクションなので撮影は禁止。売店にも、絵葉書等の関連グッズはなくて、展示の目録だけでした。ざーんねん!レプリカがあったら家に飾りたいポスターが何枚もあったのですが!この展示は、フロリダを皮切りに全米を巡回しており、グーグルで検索をかけるといくつかの美術館の特設サイトを見ることができるのですが、特にシアトル美術館で開催された際のページは充実しています。先の十箇条の英訳抜粋版が紹介されています。

 今でこそ、「Cool Japan」なんて言われていますが、私が若い頃は、日本といえば『顔がない』、『無個性』というイメージで受け止められていました。ところが半世紀以上前に、こんなにもスタイリッシュな独特のアールデコが完成されていたなんて!この展示の副題は「美術と文化を形造る:1920-1945」なのですが、確かに現代の日本おポップカルチャーのスタイルに繋がるものが感じられました。

  
大きなバナーが吊ってあった美術入口と、美術館の売店(売店写真はFacebookからお借りしました)

    
私が頂いたランチ(珍しく食べる前に写真撮ったw)と、
レプリカがあったら欲しかったポスター2つ(Googleの画像検索から拝借)


 美術館への入場料に加え、特別展示会料金が12ドル。高っ!と、引いてしまうのは、未だにワシントンD.C.に住んでいた頃の、入場料も特別展示も一切無料だったスミソニアン+国立美術館にたっぷり甘やかされたせいだと思いますが、地方中都市で頑張ってくれている施設を、少しでも応援すべくお布施のつもりで支払う。来年の特別展予定も心躍るものが連なっているし、今度行った時には、会員になろうと思います。美術館そのものも雰囲気がいいのですが、切符売り場のお姉さん、監視員の方、売店の上品なご婦人… 館内の職員さん達も感じが良いのです。この温かな感じは、大きなミュージアムでは感じることのできないもの。きらきらしいダイヤモンドやサファイヤという宝石よりは、真珠や翡翠といった感じのこの美術館、大好き!


第一條
第一に彼女はしとやかな女らしさの敵でなくてはならない。斷髮の剃りあとがどんなに青々してゐるかなどと苦にすべからず。隣に坐つたお孃さんに對しては、わざと兩膝を組んで傲然とするくらゐの勇氣が必要です。
第二條
どんなに「お汁粉」が食べたくても我慢して喫茶店に入らなければならない。ひよつとすると、女學校時代の癖が出て「田舎」などを食べたがるものだが、モダンライフには古典と野趣は大禁物。味覺もあくまで近代的であり、都會的でなくてはならない。喫茶店に入つたらまず「ジンジャエル」を注文する事。
第三條
どんな蓄音機でも好い。ジャズのレコードさへあるなら——。其処で足踏みし乍ら「ゴールデンバット」をふかさなければならない。少々むせるくらゐは仕方なし。「敷島」や「大和」や「なでしこ」は大の禁物。客間用、外出用としては金口をかならず用意する事。尤も外出用のときは安い金口で結構——。
第四條
洋酒と名のつくものはひと通り飮んで、然も名前を覺えなければならない。此れは少々資金がかかるのでときにおごらせる必要がある。「ボーイさん、まああなたは可愛らしいロビンだこと」などと言ひ寄つて、魅惑的なやはらかいところを見せるべし。彼はマネージャーに内緒にカクテルを調合してくる。
第五條
外國の流行雜誌は少なくとも五種類ぐらゐ見なければならない。丸善の店頭でめくつてもよし。其のなかから半日がかりの辛抱強さで、帽子からコルセットにゐたるまでの氣に入りを見つけ出すべし。一本のピンなりとも輕率に買つてはならない。巴里やホリウッドの最新流行を調べたうへで、尤も新奇なものを買ふこと。
第六條
「ねえ、此處にもトーキーが愈々來るんですつてね……だけどあれはどうかしら——。あら!ドロレス・コステロはずいぶんひどいわ、だつてジョン・パリをとつちやふんだもの……」戀人の存在などを忘れて、シネマに熱中する癖をつけなければならない。彼もまたシネマに熱中すべければなり。
第七條
踊れても踊れなくても、兔に角ダンスホールへ出入りし、いつもあつちこつちのホールの「御招待劵」を持つてゐなければならない。若しペーブメントで知り合ひのモボちやんに會つたら、一枚づつ寄附する事。そして其の雰圍氣のデカダンスを誇張して吹聽すべし。ただし二三日したらまた返してもらふべし。
第八條
土曜日曜の夜は、必ず銀坐へ散歩に出なければならない。そして偶には、どんな男でも好いから、ゴルフ・マンの支度をさせて同道する。相手が疲れたらソーダファウンテンでプレーンソーダをおごる事。味ものは野暮なり。かくして少なくとも十一囘は往復すべし。ただし夜店ショーウインドをのぞくべからず。
第九條
伊勢屋のノレンをくぐるのに、ヘキエキしてはならない。そしてどんなに無理しても間服をつくるべし。冬服から夏服にうつる間、一寸行方不明に成る如きはモガの恥なり。伊勢屋の番頭は甘いから、たんまり貸して呉れます。公設質屋ならなおよからん。ただし此の際はつけほくろの位置に注意する事を要す。
第十條
己に利害關係のある男性のすべてに、まづ唇を提供すべし。彼がどんなにハゲチャビンたりとも醜男たりとも、躊躇してはならない。そして其の際必ず「あなただけよ」とささやくべし。なべて男は甘きものなり。ただし「貞操」を提供すべからず。「貞操蹂躙」「慰藉料請求」の訴訟沙汰は、最早過去の遺物でもある。

オマケ

モガになれそうはないヘタレなわたくし

映画「Unbroken」反日?真実?ただのバカ?

2014-12-18 | 時の話題
 北朝鮮を揶揄したコメディー、「The Interview」がえらい物議をかもしだし、SONYのお偉いさんのメールは流出するわ、公開時のテロ予告は出るわで大変ですが、同時に収入ジリ貧のソニーには随分と強力な宣伝となったような気がする今日この頃、暴露されたメールの中で「最低限の才能しか持ち合わせていない甘ったれ」と言われた、アンジェリーナ・ジョリーさんの(悪い方で)話題の最新作、「Unbroken」が、トーランス市で先行上映されたそうです。なぜトーランス市かといいますと、映画の主人公、オリンピック選手であり、太平洋で漂流し、日本軍の捕虜として収容所で時を過ごした実在の人物、ルイス・ザンペリーニ氏は、トーランスで育った「おらが街のヒーロー」だから。市内の小型飛行機用の空港が「ザンペリーニ空港」という名前であることからも、市にとっての彼の重要さが伺われます。そんな縁で、ザンペリーニ氏の遺児たちに加え、市長や市の歴史協会の関係者が公開前のプレミアに呼ばれたと伝えるのが、この「Daily Breeze」紙の記事です。

 ところで、ザンペリーニ氏が卒業したトーランス高校は今だ健在で、下の写真がそれなのですが:
   

 あれ?って思われましたか?そう、数々のハリウッド映画やドラマでお馴染みの美しい校舎、中でも「ビバリーヒルズ高校白書」のウェスト・ベバリーヒルズ・ハイの正体がこの高校。このドラマの撮影料で、トーランス市の教育委員会は長年に亘って大層潤い続けたそうな。でも、この市を潤している最大の財源は、撮影料ではありません。

 トーランス市は、Wiki先生の説明にあるように、「全米でも日本人及び日系アメリカ人が最も集中している都市の一つ」です。私も住んでいたことがありますが、日系人だけではなく、駐在する日本人も多く、和食レストランは数えきれないほど、日系スーパーもマルカイ、虹屋、Mitsuwaと全チェーン店が揃う、日本人コミュニティーが確立されている場所でもあります。トヨタが本社をテキサスに移すというニュースに「うちの娘婿もトヨタで働いてるのに、孫に会えなくなっちゃうよ~」と、泣きを入れてた市長というのが、当にこの記事に出てくる市長。市内の学校は、日系企業、特にホンダ、トヨタから巨額の援助を受けており、無論、市を支える税金をたっぷり払っている。トヨタの移転は、市にとって死活問題なのです。

 そんな日本人と日系企業に支えられまくっているにも関わらず、ホイホイと反日・抗日で話題になっている映画に大喜びなのは、一体どうよ?と、私は思った。原作は、日本人は古来からの習慣で人肉を食べる、なんて書いてある信憑性のおけないシロモノ。「らしい」「だろう」で創りあげたセンセーショナリズムを煽る内容のような気がします… って、ごめんなさい、本を読んでないのでなんとも言えませんし、読みたくもないんで。でも、実は映画は、噂とは裏腹で感情的に日本を貶めようとする内容ではないのか?とも、考えられるのですが、ネットで見た映画のポスターは、日本人としては感じのいいものではない。けったくそ悪いんで、自分のブログに貼りたかねーんで、Googleででも見てくださいな。

 この記事の出ていた「Daily Breeze」は、トーランスというより、お隣のBeach Cities:マンハッタン・ビーチ、ハモサ・ビーチ市、レドンド・ビーチ市の地元紙なのでツッコミが甘いのかもしれないけど、そういった日本での物議に全く触れられていないのを不思議に思って、意見を投稿してみました(またか!ですね、はい、分ってます)。私の投稿と、それに対する誰かの返事の和訳は以下の通り。その原文のDaily Breezeのサイトの画面キャプチャが、これ(クリックで大きな画面を見られます)。

わにこのいいたいこと
 この映画の公開は、日本では大いに待ち望まれています…悪い意味で。日本では、ザンペリーニが日本の捕虜収容所で受けた扱いが酷く誇張されていると言っています(日本人が米兵を食べたと??)私は、この映画が本当に反日なのかどうかを確かめるために、この映画を見に行くつもりです。ザンペリーニは疑いなく、トーランス市の英雄でしょう。そして同時に、トーランス市は多くの日本人と、ホンダや(少なくとも今のところは)トヨタの本社を含む日本企業の所在地でもあります。元トーランスの住民として、私はこの映画に対しては複雑な心境であり、本当に言われている通りの日本を貶めるような作品なのかどうかを一刻もはやく確かめたいと思っていますし、この作品が実はトーランスでは全く撮影されていないという事実に失望しています(トーランス高校は多くのハリウッド映画やドラマに登場した学校ですよ!)また同時に、この記事の中で、この映画の反日であるという噂に関する情報が全く含まれていないことにがっかりしました。


自転車乗りさんのおへんじ
映画について語ることはできませんが、日本人の手による捕虜の扱い、戦争犯罪の報告は、原作本の中で描写されているものと単純かつ明快に整合しています。もし、あなたが言うところの実存主義者的な見解が本当だとしたら、日本の収容所を運営していた多くの日本人は本当に化け物のような奴らです。それは以前の軍に支配された日本であり、今の日本には余り関係はありません。


 なんだか、思いっきり、私の意図と外れた返事来ちゃったんですけど… とりあえず、アンタの言う「日本人の手による捕虜の扱い、戦争犯罪の報告」ってののソースくれって返事しといた。こういう映画を黙って受け入れちゃうと、これが真実として根付いてしまう。モノイがある時は、きっちりモノイをつけとかねばならないというのが私の信条。かの「戦場のメリークリスマス」も、ネットのある時代だったら、随分と話題になったでしょうね。悪い意味でw