田舎のせいか、この辺りの猫は外飼いが多いらしく、猫達がフリーダムに裏庭を通っていくので、犬のモカはガラス戸に張り付いて鼻を鳴らしています。ゴージャスなフッサーラな猫達が多いのは、寒い地域のせいでしょうか?お友達になりたい~!モフモフさせて欲しい~!
はてさて、中西部のアメリカ農村部に引っ越してきて10日目。野生の王国みたいなロッキーの麓に暮らしたことは有りますが、そこはあくまでもデンバーのベッドタウンで、Small Townではあったけど、設定的には「田舎」と言えませんでした。でも、ここは本物の農村部のSmall Townです。農業、工場勤務にサービス業が少々で、就業者人口のほぼ全て。残りは引退後のお年寄りか失業者。さぞや長閑と思われるかもしれませんが、なんの、なんの、アメリカの貧しい田舎町はカオスなんである。つい先週まで、アパートの隣人が麻薬でハイになッて、お巡りさんにしょっぴかれていくような所に住んでいた自分が言うのも何ですが、一週間ちょっとしか住んでないのに、既に思わず身震いする事を見聞しました。
先ず、出社第一日目に通りすがりに耳にしたのが、立ち話している人の娘さんが週末に拳銃を突きつけられて財布を取られた話。そして先週末、スーパーのレジで前に並んでた女性が携帯での会話内容。どうしても聞こえてしまったのですが、元夫だかBFだかにストーカーされていて、何度も住むところを変え、電話番号も最近だけで3回変えた。接近禁止命令が出ているのに、未だに付きまとわれ、昨夜も避難先に現れたので、警察に来てもらった、と。いや、公衆でそんな話、大声でしないでいいから(呆然)。そして今日、貸家広告目当てで週に一回しか発行されない地元の新聞を買ったら、その一面が、近くのでクリスタル・メスの製造に失敗してアパートが爆発ってニュースだった。金曜夜に消防車のサイレンがうるさかったのは、その所為か…orz
タトゥーがすごい、というのも驚き。何が「凄い」かといいますと、そのデザインのセンス。タトゥーはアメリカでは日本よりもずっと寛容的に受け入れられています。気候が穏やかで、肌を露出する機会の多いLAでは、知的職業の人々のタトゥーも珍しくもありません。長袖と思ったら手首までびっしり刺青だったことも何度も有ります。色鮮やかで、ここまでびっしり入っていると、もう軽く「タトゥー」ではなく、「刺青」と呼びたいのは私のこだわり。この辺りで見るのは、デザインも余り凝っていない一色彫りばかりですが、私が「凄い」と思うのは場所。幼児二人を連れた若い女性、こめかみ辺りが青いのでアザかと思ったら、小さな星がびっしり彫ってあった。顔にイレズミって、一体あなたはマイク・タイソンですか?もう一人は、一見ごく普通の若い女性。首に鷲の紋章のような大きなタトゥー。首の後ろ側のタトゥーは珍しくないけど、前というのはギャングのメンバーみたい。入れる時凄く痛かったんじゃないかと余計な心配しました。しかも二人共、いかにも自己主張タイプではなく、服装もトレーナーにジーンズ、ちょっと太めな典型的田舎の白人さんタイプなのに目立つ所にタトゥーを入れてるのが意外というか驚きでした。
ロシアでここ数年、貧しい若者の間にクロコダイルという安価で大変に危険な麻薬が広がりつつあるそうです(クロコダイルで画像検索すると恐ろしい)。モスクワなどの都市部では、失業率も高く、貧しい若者たちの麻薬問題がアメリカでも報道されますが、まずは足元を見ろと。息子の高校でも常用してる級友がいるそうですし、お隣さんは、よりによって私の引越し日にもハイになって騒いでいた。しかも、ちょっとドラッグやってハイになってただけだから心配いらないと、謎な弁解をしていた。いや、ちょっとドラッグやるっての、立派に違法だから。
コロラドやワシントン州ではマリファナが合法化。麻薬というと、都市部の裕福な層か、むしろ麻薬で身を落としたホームレスが思い浮かびますが、ここに来て、アメリカにおける違法ドラッグ問題はむしろ、地方のほうが深刻ではないかと思うようになりました。高い失業率、限られた娯楽、そして閉塞した環境で、自家製生出来る安い麻薬のメスが蔓延する。
今をときめくジェニファー・ローレンスが注目を浴びるきっかけとなった映画、「
ウインターズ・ボーン」の舞台はミズーリ州の山岳地帯ですが、過酷な貧困の中、収入を得るために地域全体が共謀してメスを作って売っており、ミイラ取りがミイラになって廃人化した中毒患者もいる悲惨な状況が描かれていました、麻薬や貧困の問題はデトロイトなどの都市部を中心に語られることが多く、ハリウッド映画でも麻薬といえばLA舞台が多い中で、注目を浴びにくい地方の極度な貧困と麻薬問題を取り上げた秀作です。
左は主人公が食用にするリスの撃ち方を妹に教えているシーン
私が引っ越してきたのは、この映画のような山間部ではなく真っ平で一見開放的ですが、その風景はとても良く似ている。冬なんで空が鉛色なのは仕方ないけど、その荒涼感たるやすさましいものです。少し街の中心から離れると廃墟さながらの家が並び(人、住んでるんですよ)、街の大通りも店の半分以上は閉まっており窓にベニヤ板が打ち付けられている。アメリカの抱える真の貧困問題は、地方にこそあると、私もここで初めて実感するようになりました。とにかく雇用機会がない。選択肢がない。若者の農村部離れ、都市流入が深刻な問題となる日本が、むしろ健全に思えるほどです。これも、大学進学率が高い、日本の高度な教育レベルのなせる技でしょう。それに、大学進学のために街に出なくとも、高校出たてでいきなり東京や大阪都行っても、やる気があればなんとかなりそうなのが日本。高校の卒業証明書持って大都市に出ても、、最低賃金の仕事を、既にネットワークを確立してる移民と奪い合わなきゃならないのがアメリカ。
土地に縛り付けられ、教育を得る機会もない。アメリカ人口の大部分は実際には、こういった状況にあるのではないでしょうか?シカゴ出身の黒人であるオバマ大統領、というよりミシェル・オバマ大統領婦人は、このような現状を知っていて、健康な食生活を推進しているのかもしれません。その他にも、低・中間所得層の引上げを目的とする国民全員健康保険、幼児教育の促進、最低賃金値上げや、残業手当免除の撤廃を掲げる、オバマ政権に私は共賛同します。この底辺層を引き上げずに景気回復はあり得ないし、アメリカは廃れていく一方でしょう。そして日本は、これを教訓に、麻薬ダメ、絶対!厳しく取り締まると同時に、反麻薬教育を浸透させるべき。そして、国民全体の教育レベル維持に全力をつくすべきだと思います。そして、移民問題にも留意すべきでしょう。出生率が低いから移民をもっと受け入れよう、外国人にも参政権を、というのは、ほんとうに危険だと思います。いやマジでね、私自身は自然がいっぱい~、お家カワイイ~、物価安い~、無駄使いしないで貯金できそ~、なんて、脳内お花畑なんですが、状況は悲惨よ、ここ。