わにの日々-中西部編

在米30年大阪産の普通のおばさんが、アメリカ中西部の街に暮らす日記

アメリカの悪夢

2016-03-24 | アメリカのニュース
 悪い夢、英語ではナイトメアといいますが、私も何度も繰り返し見る悪夢のパターンが有ります。一つはあリがちなタイプで、単位が足りなくて大学が卒業できないという夢。しかも、既に留年一年してて、2年目なのに、またたった一つの科目の単位が、また取れそうにないという夢。もう一つは、旅行先とか、学期末で、決まった時間内に荷物を詰めねばならないのに、荷物が多すぎて詰められないという悪夢。他にも、自分の脳味噌のどこにこんな発想があったんだろうと不思議に思わずにはいられない奇天烈な夢。でも、これらは所詮は夢。大学は数十年前にちゃんと卒業したし、実際の私は沢山の所有物を持っているわけじゃない。

 でも、この悪夢は現実のものとなる可能性が出てきました。その悪夢とは、
トランプ大統領のことです。

 出馬時には、何かの冗談かテレビ向けのスタントととしか思えなかった、政治経験が皆無で病的に目立ちたがりなテレビ・パーソネルが、アメリカ国民の絶大な支持を集めています。若息子曰く、トランプ自身よりも、彼の偏見に満ちた扇動的な発言を信じ、同意するアメリカ人に、彼のような候補者の出馬を許す今のアメリカの環境に腹が立つ、と。私も彼の意見に同意です。

 トランプは口を開くたびに、女性、障害者、イスラム教徒、移民を貶める発言をメディアに垂れ流し、基本的人権を侵害しています。自分では、不動産王として「ビジネスの天才」を自称していますが、実際には何度も商売に失敗しているし、だいたいが、自身の力で富を築いたのではなく、転がり込んできた巨額の遺産を基にバブルの波に乗って一等地にビルをボコボコ建てただけ。彼の最大の「作品」である、ニュージャージー州のカジノ・リゾートも今や風前の灯であることを鑑みても、彼の経営能力が本人は主張するほど優れてはいない事は明らかでしょう。

 彼が主張するマニフェストが、アメリカ孤立主義を謳い、貿易摩擦、安全保障危機、世界的な外交関係の崩壊、経済危機等を引き起こしかねないという危険にも増して懸念されるのは、アメリカという国の礎である民主主義を否定する彼の差別と偏見に満ちた偏狭さです。若息子を含む多くのトランプ反対者が「腹が立つ」のは、まさにこの点でしょう。

 移民やイスラム教徒を排除すると公言し、拷問を肯定し、日本と中国を一緒くたにして攻撃し、憲法に保証された表現や宗教の自由を制限すると言う、アメリカ的価値観を全く軽視した彼の発言に熱狂する多くのアメリカ人に、私は大きな危機を感じます。彼の攻撃する「移民」は中国やメキシコからの不法移民だけではありません。私も米国に住む外国人ですから寒気を感じます。

 実際には、金にあかし、鼻先に権力と名誉欲をちらつかせて、政治経験豊かなスタッフを揃え、開けてみたらスタッフに任せっきりで、結果的には凡庸な政治を行うのかもしれません。かつての、優秀な官僚が切り盛りするから、誰が首相になろうが何の変化もなかった日本のように。実際の政策は代わり映えせず、外交は閣僚に任せ、本人はテレビやソーシャルメディア上で派手なことを言い散らかすだけみたいな。あれ?北の誰かさんに似ているぞ?

 私はヒラリー・クリントンの掲げる政策案や、過去の彼女の発言や所業から伺える人格に諸手を挙げて賛成はできないのですが、他の選択肢が彼女だけに見える今、ヒラリー姐さんに超頑張って欲しいよ!

ズートピア:うさぎのジュディーが可愛すぎ!

2016-03-13 | 映画・ドラマ・本
 ディズニーがまた、どえらいヒロインを生み出しましたよ!とてもメッセージ性の強い映画でした。予告を観て、次はこれ見る!と、決めた「ズートピア」、かなり期待値を上げて観に行きましたが、その期待を全く裏切らない良作でした。ワタシ的に
超おススメ!!
ただ、「パンダ」みたいに花びらが降ってきたり、飛び出したりはしないので、わざわざ3Dで見る必要はなかったかもしれない。3Dならではの映像は、「マダガスカル3」の評判を思い出しても、ドリーム・ワークスのほうがサービスいいかも?私は「アナと雪の女王」も3Dで観なかったので、見た人の比較した3D画像に関する感想を聞きたいです。

 とにかく、主人公、うさぎのジュディー・ホップスが本当に魅力的。かわいくて、そこはかとなく漂う健康的なお色気は、世界中のケモナーをKOしそう。手塚治虫氏が草葉の陰で「時代が私に追いついた」と盛り上がってるかも?気分や服装次第で、耳が上がったり下がったりするのも、反則的な可愛さです。健気で頑張り屋、初のウサギ警官になるために、サイズや力といった多くの生まれ持ったハンデをものともせず、むしろそれを活かして目標に向かって努力し、夢を現実にする。でも頑固でもクソ真面目でもなく、肩肘張らずしなやかに生きている姿は、現代女性の理想の姿の一つかもしれません。ちなみにジュディーには兄弟姉妹が275羽いるらしい。

 主人公のキャラクターはもちろん、ストーリーや登場人物(動物?)には、多くのメタファーが盛り込まれています。また、警官による暴力、人種差別、性差別、偏見、いじめ、異人種間恋愛、肥満等、現在のアメリカの抱える問題に対するメッセージが、強く押し出されています。ジュディーとニックがそれぞれに抱える子供の頃の嫌な思い出も、ひ弱いウサギであるがゆえにいじめられ、警官になると夢を馬鹿にされてもひるまなかったという「正統派」なジュディーに対し、捕食者であるがゆえにいじめられ、ステレオタイプに押し込まれたニックのそれは、皮肉に満ちています。これには、アカデミー賞が白人寄り過ぎるという、つい先日の騒ぎを思い出さずにはいられませんでした。黒人でアカデミー賞受賞者のジェイミー・フォックスが「本当に黒人俳優が自分たちの演技はノミネートとされた誰よリも優れていると信じているならうぬぼれだ」とい発言しましたが、心のなかでは多くがそう思っていたはず…

 話がずれました。すごく面白かったし、色々な教訓が含まれているとは思いましたが、でも、小さな子供には怖すぎるシーンもあり、対象年齢がどの当たりを狙っているのか判らない。アナ雪の氷のモンスターよりすっと怖いし、ネタバレになるので詳しくは書きませんが、シチュエーションも子供にはトラウマになりかねないシーンがいくつかあります。
      
かわいいだけじゃなく、頭も切れる!にんじんペンが大活躍。玩具で売ってるの、私買いそう


 捕食者と被食者の関係が克服された時代、かつての捕まえて食べる側、食べられる側の動物たちが共存しています。努力でウサギとして初めて警察学校を、しかも主席で卒業したジュディは、大都会ズートピアに配属されますが、水牛の警察長官に駐車違反取締を命じられてがっかり。それでも、1日で100枚の駐車違反切符を切ってこいと命じられ、「正午までに200枚切る!」と自分で目標を決め、実行します。なんしかウサギですので、メーターの切れる小さな音も聞き逃さない!数秒の遅れでも違反切符くらっちゃいます。本当にこんな婦警さんがいたら困っちゃいます。駐車違反切符のノルマなんて、勿論あってはならないのですが、実際にNY市警がノルマを課していてすっぱ抜かれたことがあるので、この辺りも実は黒い。

 その頃、ズートピアでは、動物が謎の失踪を遂げる事件が続発していました。花屋さんをしている温厚で家族思いの夫が行方不明だと訴えるカワウソの訴えは、調査に忙しい長官から門前払い。そこへ、ジュディーが助け舟を出しますが、48時間以内に事件を解決できなければ辞任しろと言われてしまいます。事件の鍵を握るのは詐欺師のキツネ、ニック。かくして、ジュディートニックは48時間以内に失踪したカワウソを見つける任務に繰り出すのですが、お硬い刑事とストリートスマートなチンピラのコンビが、48時間だけの猶予を与えられて事件解決に挑むという状況がまさに、エディー・マーフィーの出世作「48時間」そのものです。

   
警官は大きくて強い動物ばかり。水牛のボゴ長官はウサギの警官にお冠

  

 有名な映画のパロディーがふんだんに散りばめられており、そこも見所だと思います。ニックが「ありのままに~」って歌うシーンも有りました。そして、LA舞台の映画でお馴染みの巨大ドーナツもお約束通り転がります。かつて私は、このドーナツ屋の近所に住んでおり、白内障の手術をしてド近眼が治るまでは、映画で転がるドーナツを見るたびに、もしLAに大地震が来たら、目がよく見えない自分は、あのドーナツの下敷きになって死ぬモブ要員かも知れないと恐れていたものでした。

   
おなじみ巨大ドーナツも転がる


ニックの知合いの詐欺師が売ってる海賊版。これ、全部観たい


 カワウソを見つけるという、警察にとっては取るに足らない事件を追っていたニックとジュディーは、街全体を巻き込んだ陰謀を暴くことになります。でも、そこで事件解決でめでたし、めでたし、ではなく、さらなる陰謀へ、そしてもっと深い問題へと進展していくのです。脇役も皆、印象深いキャラクターで、小さなエピソードが全て伏線となる脚本は、お見事だと思います。でも、劇中では、ニックがウサギ農場で作っているブルーベリーを食べてたり、太った気のいいチーターがドーナツ大好きというシーンはありますが、肉を食べるシーンはありません。また、ズートピアには犬や猫は住んでおらず、鳥もいません。その辺りは謎。そして、一大総合都市であるズートピアには、熱帯雨林の街、小動物たちの街、砂漠の街等、実は動物の生態に合わせた色んな環境の街があるのですが、街の中心で彼らが共存しています。通勤電車に3サイズのドアがあったり、芸が細かい。

 仕事が遅いことで定評のある自動車局の職員は皆ナマケモノなのは、「MiB」の、郵便局員は実は全員エイリアンに次ぐ爆笑ネタですが、銀行職員は皆ハムスター、そして、せっかく警察学校を主席で出たのに、任された仕事が駐車違反取締り(Meter Maid)で、主人公が落ち込んだりバカにされたり、これに職業差別だって文句言い出す人がいないか心配。

 私自身があまり前知識なしに見て、とっても楽しんだので、ネタバレは控えますが、書きたいことが一杯ある~!日本で公開されたら、語りまくりたい一作です。ところで、日本のポスターのはミッキーが隠れてるそうですが、映画の中にも、乳母車にミッキーのぬいぐるみが入ってたり、チーターの模様がさりげにミッキー型だったり。このポスターの隠れミッキーは、実は「どうせ、ここだろ」と思ったらドンピシャで直ぐ分かっちゃったんですが、バレは白抜きで。ジュディーのニンジン柄バッグの真ん中は実はミッキー型なんだよね。このバッグすっごく可愛い。欲しい!

カンフー・パンダに見る米中関係

2016-03-07 | 時の話題
「カンフー・パンダ3」を観ました。ポーは実のお父さんに会い、パンダの隠れ里に向かい、マスター・シーフーの気を奪って精神世界から蘇ったマスター・カイから里を守るため、自分も精神世界に行って、「気」をマスターします。実の父や他のパンダ達と出会い、ドラゴン・ウォリアーとしてのポーが完成された今、これ以上のシリーズは望めないでしょう。あっても、スピンオフ的な短編や、次世代ものとか?ポーの成長を見守ってきた観客として、3部作の完成を見た満足感とともに、寂しい気持ちもします。今回もとても美しい映像で、3Dも凝っており、劇場で見たかいがありました。

 シリーズ第一作「カンフー・パンダ」は、中国の一部では上映禁止でした。それが、今回の「3」は米中共同制作です。そのせいか、今までよりも、ずっとオリエンタル色が強く打ち出されていました。Chi(気)が究極のカンフーとして重要な役割を果たしたり、スピリチュアル・ワールド(精神世界、要はあの世)が出てきたりというところも、アジアっぽい感じ。第一作は2008年制作・公開でしたが、四川省の芸術家趙半狄(ジャオ・バンディー)氏が、「中国の国宝とカンフーを盗み、中国で儲けようとしている」という理由で批判したせいで、四川省では上映が見合わされたそうです。中国全土では大ヒットして、「こういう映画は中国が作るべきなのに、アメリカに作られちゃうなんて!」という声が多かったとか。


アメリカ版ポスター 今回はいっぱいパンダが出てくる!

 一作目の監督はマーク・オズボーンとジョン・スティーヴンソンで、全くの(?)アメリカ人。二作目「カンフー・パンダ2(2011年)は、監督がジェニファー・ユーという韓国出身の女性です。2作目からの、特に美しい色彩は、彼女のセンスによるものが大きいそうです。そして、この「3」はジェニファー・ユー監督が続投ですが、今回は単独ではなく、アレッサンドロ・カルローニも共同監督として名前を連ねています。そして、ドリームワークス・アニメーションと中国の投資会社の合弁企業オリエンタル・ドリームワークスが製作の一部を担当しているので、中国映画として中国市場に出されているのです。

 今年1月末に米中で同時公開され、アメリカでも未だ劇場公開中で興行成績を伸ばしていますが、中国ではアニメ映画史上最高の成績を叩き出しているとのこと。この1月末という公開日も、実は中国の旧正月に合わせた戦略です。何億もの人が家族とともに過ごすために国土を移動する、このシーズンは家族向け映画にとっては、年一番の稼ぎ時で、通常は、アメリカ映画等の外国映画の公開はブロックされていました。でも、先に書いたとおり「カンフー・パンダ3」は「中国映画」なので無問題。


中国版ポスターは、なんだかお目出度い感じ

 ハリウッドにとっても中国市場は重要ですから、昨今はどう観ても中国を意識してるな、オイ!的な内容が露骨に目立ちますが、中国のホリデー映画市場に参入し、大人気を博しておるこの映画、今後のハリウッドと中国の関係を大きく変える礎石となったとも言われています。日本経済が世界を席捲したバブル期には、日本を取り上げたハリウッド映画が多く作られましたが、どうも悪徳巨大企業だったり、ヤクザが仕切ってたり、むしろ悪役が多かったような?でも「ブラック・レイン」とか、日本でもヒットしましたよね。一方で、「今後しばらくは中国人が悪役の映画は見られないだろう」という意見を多く見かけるので、中国人は自分たちが悪役にされるのは嫌うけど、日本人は別に気にしない?

 言い方を変えれば、日本がブイブイいわせていた頃(死語)、ハリウッドは日本市場を中国ほどは重視していなかったということでしょうか?ってゆーか、日本は逆に、いきなりハリウッドの映画会社買ってたけどw

 20年位前には、顔のない不気味な集団と思われていた日本(ドモアリガト、ミスター・ロボット)が、今では世界中でポケモンやゴクウ等々の「顔」で知られる国になったなんて、日本文化の進化っぷりに感慨深いです。もし、バブル期の日本を狙って、ハリウッドが「カンフー・パンダ」みたいな映画を作ったとしたら、何の映画になっていたかな?ニンジャ?あ、先に「ナルト」があるわ…