わにの日々-中西部編

在米30年大阪産の普通のおばさんが、アメリカ中西部の街に暮らす日記

春はどこへ行った?

2013-08-16 | 時の話題
 エジプトがとんでもないことになっています。シリアの内戦も終結が全く見えず、そして虐殺と言ってもいい、エジプトの現状。貧しい野菜売りの青年の抗議自殺から始まった「アラブの春」は、一時の幻影だったのかとすら思ってしまいます。幸運にも、平和な国に生まれた私には、安定した軍事政権と、政情不安の民主主義のどちらがいいのか解りません。安定した軍事主義の国の代表といえば、中国でしょうが、あの広い国土の大部分である農村部に暮らす人々に、だいたい「民主主義」というイデオロギーの存在することすら知られているのかどうか。そんな概念があるのかどうか。「Ignorance is bliss」といいますが、日々の生活に追われて、そんなことを考える暇なんか無いんじゃないか。それでも、家族が食べていければ…

 アラブの春の発端となった、チュニジアの一青年の当局への抗議行動としての焼身自殺は、民主主義を求める大きな運動へと繋がりましたが、反政府の理由も要は経済的な困窮に対する不満でした。大学を出ても仕事が無い。その不満が、弾圧的な政府絵の不満へと繋がり、チェニジア各地で若者を中心としたデモが起こり、ついにはベン=アリーの長期政権を打ち崩しました。この、ジャズミン革命に感化されてアラブ各国で反政府デモが広がっていきます。エジプトでは、2011年の1月末に大規模なデモが起こり、遂にムバラク政権が倒れました。チュニジア、リビア、イエメン、アルジェリア、そしてエジプトの共通する点は、長期独裁政権であったこと。だから民主化が求められるのか?アメリカ的にはそうなんだけど、同じくカストロが支配するキューバではなぜ反政府デモが起こらないのか?イスラム教国じゃないから?

 私はそうは思いません。キューバじゃ社会主義政権下、国民は豊かではないとはいえ、教育や医療等の社会サービスは無料、十分に腹を満たす事ができている。反政府デモを行う国民を暴力的に抑圧する軍や警察に巨額を費やすのではなく、社会福祉にも使われていれば、これほど多くの血が流されなかったであろうことは、サウジアラビアでは革命の兆しがないことでも明らかではないでしょうか。

 話が逸れてしまいましたが、ともあれ、長らくアメリカの庇護下にあったムバラク政権が崩壊し、選挙が行われ、革命は成功したかに見えたのですが、インターネットや携帯電話を駆使した若者たちでしたが、なぜか大統領選で勝ったのは、モスリム同胞団のムハンマド・ムルシー。タハリール広場に集まり、反政府行動をリードした若者たちにしてみりゃ「モスリム同胞団が俺たちの勝ち取った自由を掠め取った」と思うのは、無理ないかと。そのムルシーも、モスリム同胞団のさばりすぎ、俺らの権力が弱体化すんじゃね?と恐れた軍が7月にクーデターを起こして大統領を解任し、ムスリム同胞団は当然これに反発し、暫定政権は非常事態宣言。デモ側、警察側、双方に多くの死者が出ている、と、今ここ。

 オバマ大統領は、まずは恒例の共同軍事演習を中止し、オマイラいい加減にせんと援助も取りやめるぞ!と、異例なほど強行な態度に出ましたが、あんまり効いてそうにない。だいたい、石油の出るリビアのカダフィは必死に追い払ったくせに、シリアは生温く傍観。エジプトだって、真剣に鎮圧化に努力しようなんて考えていないのは、世界中のお約束でしょう。吹き出した現状への不満が、熱病のように過激な行動へと駆り立てる。その情熱は、生まれてこの方ずーっと安穏とした環境に暮らしてきた私の理解の粋を超えていますし、少しでも分かったようなふりをする気もありません。でも、傍観者ではあっても、多くの人が傷つき、死んでいく状況に、なんとかならないものかと焦る。イライラする。世界中が平和なんてのは決してありえないとは解っていても、泣けてくる。人間って辛い…