ブラッド・ピットのゾンビ映画「World War Z」観て参りました。若息子に「Man of Steel」を見に行こうと誘ったら、スーパーマンは何度も同じことやってっから興味ない、むしろ「ワールド・ウォーZ」が見たい、と。わにお君もそれに乗って、こっちのほうがいい、と。二対一かよ、チッ…と、思った私は怖いの苦手。でも、LA Timesのレビューが素晴らしくて、家族愛を描いた最高の映画だ、主題はゾンビ-アポカリプスではなく家族の為に全力を尽くす父の奮闘で、ホラーじゃないみたいな書き方だし。効果的なビジュアル・イッフェクト、ブラッド・ピットはカリスマ性に溢れ、パニックシーンの臨場感が素晴らしいとベタ褒めだから、怖そうだけど観てみたいかなーって気になるじゃありませんか。しかし実際には、
ゾンビ速っ!ゾンビ強っ!ゾンビ多過ぎっ!!
物凄い速さで走って置いかけてくるゾンビ。頭ガンガンぶつけて車の窓割りに来るゾンビ。蜘蛛の子みたいにワラワラ寄ってきて高い塀を登ってくるゾンビ。半端じゃなく怖いよ、アンタ達。まじでホラーだよ。
上のレビュー書いた奴、前に出ろっ!
確かに、ブラピ演じるお父さん、ジェリーが、妻と娘たちのために一生懸命頑張る映画でした。主夫として毎朝パンケーキを作ってるだけの無精髭のお父ちゃんが、かつて国連の紛争地域調査員として敏腕を振るった能力を買われて、旧友の国連事務副長から死者をゾンビに変えてしまうウイルスの発生源を探る調査への要請…と、いうか、この仕事を受けるなら、米軍に守られ食料も確保された空母での妻と子供たちの暮らしを保証するよ、断るんなら家族揃って難民被災地に移送ね、って脅しを受けます。そこで、お父さんは昔取った杵柄で大奮戦。以下、超ネタバレのストーリー紹介:
国連の要請で派遣される米軍移送ヘリとコンタクトのために、混乱を極める街で高い場所を探すブラピ一家。見付けた高層アパート内では、娘と同年代の息子のいる一家が宿を提供してくれます。その家族はピット一家の誘いを断って家に立篭もりますが、当然ゾンビに襲われる。でも息子は、かろうじてブラピ一家に合流し、ブラピ一家と孤児となった少年は無事に保護されますが、空母で家族をこのまま安全に保護して欲しいなら、俺らの役に立て、と、脅されます。仕方なく、ウイルスの正体と治療法を求めて、人類最後の希望の若きウイルス学者をエスコートし、最初の症例が報告された韓国へ向かうブラピ父ちゃん。しかし、学者兄ちゃん、基地に着いた途端すかさず死ぬ。今や人類の未来はプラピ父ちゃん一人の肩に!
駐留米兵士の英雄的な助けを借り、雨の中、自転車こいで輸送機に辿り着いたブラピ父ちゃんの次の目的地は、他の都市がワヤなのに、事前に高い壁を築いてゾンビの侵入を防いだイスラエル。こりゃ何か裏があるんじゃね、と、確かめに行ったのだな。モサドの偉い人と話して、他の国が無視した、インドで「アンデッド」が発生したという報告を真剣に受取って備えた事が判明。パレスチナ人も「生きた人間を一人保護することは、敵のゾンビを一人減らすこと」と城壁内に受入れる、天使のような清い心のイスラエルさん。入城したパレスチナ人は歓喜で歌い出し、この騒音(笑)が壁の外の大量のゾンビを引きつけます。ゾンビは物音に反応するのです。折角イスラエルさんが保護してあげたのに、パレスチナ君はバカだなぁ… って、この辺でLA Timesが、この映画を褒めまくっていた大人の事情を垣間見たような気がした。
美人揃いのイスラエル女性兵に守られてエルサレム内を避中、老人と少年をゾンビが避けて通るのを見たブラピの脳内にひらめくものが
一枚刈の美人兵士がゾンビに手を噛まれますが、ブラピのとっさの判断で手を切り落と、ゾンビ化を免れます。死んでからゾンビになるまでは、映画に都合良く短くて12秒。イスラエル兵の英雄的な自己犠牲により、空港を飛び立つ最後の飛行機に乗込めたブラピと一枚刈(名前はセーゲン)。スイスのWHOに向かうよう手配しますが、実は後部トイレにゾンビが隠れており、乗客のばかチワワが吠えて、こいつを起こしていまう。で、後ろからゾンビがわらわら。機内で手榴弾をぶん投げる、容赦無いブラピ。機体に穴開く、お客吹っ飛ぶ、飛行機墜落。しかし、ブラピと一枚刈り姉ちゃんだけは生還。どんだけご都合主義やねん?!
WHOのリサーチセンターに辿り着いてみれば、そこでも、3人の男性と1人の女性科学者達を除いて、皆ゾンビ化。ゾンビが特定の生者を避けたのは、本能的にウイルスの媒体としての人体を求めているので、死にかけには興味ないからではないか。だから、羅患したように「カモフラージュ」したら、ゾンビは襲わないんじゃね?と自説を披露するブラピに賛同する科学者達。でも困ったことに、病原菌は全部ゾンビが徘徊するB棟に保存されているのだな。怪我人ブラピ、片手になったばかりの一枚刈と、案内役のローマで妻子を失った科学者(すごい死亡フラグ)が決死隊を組んで、B棟へ突入。
一枚刈と科学者は逃げ延びますが、当然の成行きでブラピはウイルス保存室内に取り残され、華岡青洲の妻となる。適当に打ったウイルスが効いた(侵した)ブラピをゾンビは無視し、悠々とB棟を後にします。適当に打ったウイルスはちゃんと抗薬があるタイプで、適当に持ってきたカンフル内にちゃんとそれが含まれてて、ブラピ生還。その後、「カモフラージュ」ウイルスが生産され人類は危機を逃れ、ブラピが死んだと思った米軍に空母から追出されて、ノバシコティバの難民保護地にいた妻子と感動の再会。目出度し、目出度し、なんだけど…
最後は、ブラピの「これで終わったわけじゃない。それどころか、終わりまではまだまだ遠い。」という台詞で締めくくられます。
俺達の戦いはこれからだ!エンドかよっ!?!ですので、続編製作は既に決定済だそうです。はぁ、そうですか…orz
この家族には、このテの映画によくあるような複雑な家庭の事情はありません。お父さんが娘達と元妻の愛と信頼を取り返すために云々って下心無しに、純粋に家族のために父ちゃんは頑張ります。そこを私は大いに評価います。それまでは普通の人だったのが、いきなり超人になって無双するのではなく、元々、危険な紛争地をくぐり抜けた経験と知恵を豊富に持つ主人公というのも説得力があると思う。しかも、シークレットエージェントとかじゃなく、国連職員という地味だけど堅実な職業なのも、実は新しくない?正直、国連にそんな有能な人材いるんかな?って気はするけど(実際の紛争調査員って凄い数の途上国出身国連軍兵士に囲まれて、危険な場所には近づかなそうだし)、なんか現実味がある。ジェリー(ブラピ父ちゃん)が空母に付いた途端いきなり、「大統領は死んだ。副大統領は行方不明だけど、多分死んでる」なんてアッサリ言われちゃうのも、アメリカ第一主義なハリウッドの大作には珍しいと思う。
アップになったブラピは、顔に皺が目立ち、後半はギトってくる髪や髭には白髪がのぞき、老けたと思わざる得ません。でも痛さは全くなく、年齢から逃げない、むしろ正面から押し出してくる態度に男気と自信を感じさせました。美男俳優には、アップがきついのに無理しててイタい人、年齢が顔に出ない謎な人(ボトックス?)、美形やめて個性派とかイロモノ派に転向しちゃった人もいるけど、ブラピや、ロバート・ダウニーJr.、ダンゼル・ワシントンなんかは、いい年の取り方をした顔してると思う。83歳、未だ現役のクリント・イーストウッド御大や、現役を退いたとはいえ年齢を経て渋さと味を増したショーン・コネリ―等、元ハンサム俳優、今超かっこいいジジィの前例もあるし、同年代の私としては、これからも彼らが味を深め、いろんな役柄で楽しませてくれるかと思うと嬉しいです。
この映画は、マックス・ブルックスによる2006年発売のゾンビの発生による終末を描いたホラー小説を基にしています。私は原作未読ですが、Wiki先生によりますと、「ゾンビとの戦いを経験した人々にインタビューして書かれたオーラル・ヒストリーという設定になっており、登場人物は軍人、政治家から宇宙飛行士、主婦までさまざまである。ゾンビの発生源である中国をはじめ、アメリカ、ロシア、日本、ドイツなど世界中が舞台として登場する」そうです。映画は全く違った形を取っており、ひたすら不死身のブラピ父ちゃんの奮戦が描かれます。巨大市場、中国を意識して、発生源が中国という設定もなく、イスラエルの宗教右派と政府間の内戦もない。原作をパラ見した若息子によると、ゾンビの設定の一部や発見された対策法に類似点がある程度らしい。原作は、ゾンビ・パンデミック終了後の、色々な人の談話によって構成されているそうなので、その形式で、ちょっと「羅生門」みたいな映画も見てみたかったかな、とは思う。
私は何度も椅子から飛び上がったし、死者の目玉がぐるりとひっくり返ってゾンビになったー!なんてシーンが目に焼き付いてトラウマですが、ホラーが平気な人なら楽しめると思う。2時間以内で上手く収められているし、特撮も仰々し過ぎない。ゾンビは時にユーモラスですらあるし、よくできた娯楽作品だと思いました。ところで、私のゾンビに対する素朴な疑問。「ウォーキング・デッド」とか、随分と長い間ゾンビと戦ってるけど、ゾンビってそんなに長持ちするの?夏場とか、直ぐ腐ってダメになりそうなんだけど?