拝啓 夏目漱石先生

自称「漱石先生の門下生(ただのファン)」による日記

Fresh&Blood

2008-08-24 18:45:17 | 映画
安室奈美恵が出した企画モノシングル『60s70s80s』。そこに収録された映画『フラッシュダンス』の主題歌「WHAT A FEELING」のリメイク曲のPVには、安室及びダンサーの他に、モロ『ロボコップ』なロボットダンサーが登場していた。安室自身がカクカクした踊りを見せるシーンもある。映画『ロボコップ』は、スピード感溢れる目まぐるしいカット割りが印象的なSF映画。その技術は後続の映画は勿論、80年代のミュージックビデオにも大いに影響を与えた。安室の「WHAT A FEELING」PVは、「80年代テイスト取り入れるなら『ロボコップ』は不可欠だ!」という考えのもと作られたのだろう。多分。
『ロボコップ』。オランダ人監督、ポール・バーホーベンのハリウッド進出第一作にして代表作。母国オランダでエログロな映画を撮りまくり、興行的には成功したものの批評家に叩かれまくったバーホーベンはオランダに嫌気がさし、ハリウッドに進出した。批評家に叩かれたといってもオランダ最大の映画賞を受賞したり、アメリカのアカデミー賞にノミネートされたりもしている。まぁ賛否両論なのだろう。バーホーベンのエログロ魂はハリウッドでも健在。大ヒット作『ロボコップ』も、成人指定を免れるためにグロいシーンがいくつかカットされたと聞く。そんな彼がハリウッド進出直前に全編英語台詞で撮った映画、『グレート・ウォリアーズ 欲望の剣』を最近見たので感想を。
1985年公開の映画。DVD化はされてないらしく、観るには今やレンタル店の片隅に完全に追いやられているビデオコーナーを探すしか無かった。でも近所のTSUTAYAには無くて。ビデオどんどん処分されてるからね…。で、「こりゃWOWOWか木曜洋画劇場に期待するか」と思ってたら、先日ひょんな所で見れてしまった。ニコ動。まさに灯台下暗し。
主演は『ブレードランナー』でアンドロ軍団のリーダーだったルドガー・ハウアー。物語の舞台は中世ヨーロッパ。主人公・マーティンが属する傭兵団は、雇主の命令通り城に攻め込み、まんまと略奪に成功。しかし突然雇主に裏切られ、報酬を貰うことなく厄介払いにされてしまう。マジ切れした傭兵団は雇主への復讐を誓う……。上映時間は125分。大部分がバイオレンス描写で、傭兵達がここぞとばかりに大暴れ。舞台が中世ということで、可愛いお姫様や王子(実際は王子ではないが、劇中で彼の果たす役割を鑑み、便宜上王子としておく)も出て来るのだが、とにかくバイオレンス。
原題は『Fresh&Blood』(肉と血)。中世ヨーロッパが舞台なのでロマンチックな風景も出てくるのだが、やっぱり血と肉で染め上げるのがバーホーベン流。例えば作品序盤、お姫様と王子は木陰でキスを交わすのだが、木には首を吊った腐乱死体がぶら下がっている。中世は戦や小競り合いが日常茶飯事だから死体も日常。だからってそんな所でいちゃつかんでも…。
そんなお姫様、紆余曲折あって誘拐され、マーティンら傭兵軍団に犯されそうになる。なんとか身を守るため、姫は傭兵軍団のボスであるマーティンの女になることを志願し、他の傭兵達には手が出せないポジションに付く。世間知らずだった姫が、逆境に立たされた事で開眼するのだ。以降、姫は横暴な傭兵達の行動に振り回されつつ、逞しく成長していく。逆境に立ち向かい、血まみれになりながら強く成長していくヒロイン、というのはバーホーベンの映画によく出てくる。時に血まみれに(『グレートウォリアーズ』)、時に過剰に性的に(『氷の微笑』『ショーガール』)、時に糞尿を浴び(『ブラックブック』)…と過酷な運命を辿るヒロインたち。バーホーベンが鬼畜とされる所以だ。それでも彼女たちの美しさは全く損なわれない。寧ろ返り血でさらに輝く。悲惨な女性を美しく撮るのが得意中の得意なのだろう。
だから思うのだ。バーホーベン先生、日本で大奥を舞台にした映画撮ってくんねーかな、と。日本のドラマや映画の大奥モノで描かれる「女の闘い」ってなんかヌルいもん。バーホーベンだったら、『氷の微笑』のシャロンストーンばりに将軍を誘惑したりとか、高級打ち掛けを糞尿まみれにしたりとか、そんなシーンが期待出来そうではないか…。

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