どんよりと曇った秋は心が沈みます。
明るい紅葉の色さえくすんで見えて、鴨一羽見えない水面のさざなみの動きが静けさを破っていました。
夏はバーベキューを楽しむ家族が集まるダッファリン島です。
夫は自分の「別荘」と呼んでいました。彼のバーべキューは超簡単で、コルバッサを焼き、パプリカとピックルスにパンがあればよかったのです。だから気が向いたら「Let's go!」の一声で。。。
車のラジオから流れる音楽を聴きながら彼が瀧のように涙を流していたのもここでした。悲しくても涙が出ない人でしたからショックでした。島を一巡りして帰った私に
「ボク泣いている」と彼が言い
「そうね」と私の返事は簡単でしたが。。
その時ラジオから流れていた曲がなんだったのか、彼の若い日々を思い出させたその曲がなんだったのか。
車のラジオはいつもクラシック音楽専門の放送局をつけています。私はづっと聞き続け同じ曲に出会う日を待っていました。
ある日、聞こえてきたのがこれです。シューベルトの未完成交響曲。
涙の意味も判ったような気がしました。人生なんてみんな未完成なのに何故そんなに悲しかったのだろう。青年時代が懐かしく、故郷に帰りたいとは思わないけれど青年時代に帰りたいと言う人でしたから、若い日を思い出しての感動だったのかもしれません。
夫は思い遣りのある人でした。孤独な老人や病気の知人によく電話したり、訪問したりは定期的でしたし。。。