つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

三姉妹のイレズミを狙え!

2006-02-08 19:39:24 | マンガ(少年漫画)
さて、いよいよこれを紹介してしまう第435回は、

タイトル:コブラ(全18巻)
著者:寺沢武一
文庫名:ジャンプ・コミックス

であります。

以前、鴉天狗カブトを紹介した時に、『コブラを語り出したら、一巻ずつやらないとページが足りない』と書きましたが、さすがにマズイかなぁ、と思ったのでダイジェストで我慢します。

時は未来。
貿易会社に勤めるジョンソンは退屈な日常に飽き飽きしていた。
唯一の楽しみであるボーナスも、惑星旅行にすら行けない微々たる金額……。

彼は、ちょっとした刺激を求めてT・M社を訪れる。
そこでは、人の潜在意識を具現化し、望むままの夢を見せてくれるのだ。
ジョンソンは夢の中で無敵の海賊コブラとなり、宇宙を駈け巡った。

意気揚々と帰宅するジョンソン。
だが途中で、夢の中にしかいない筈の海賊バイケンと鉢合わせしてしまう。
危機に陥るジョンソン――その時、彼の左腕が閃光を放った!

というわけでスペース・アドベンチャー・コブラです。
今回は旧版コミックの紹介に留め、カラー版で発表された作品についてはまた別の機会に書きます。

主人公は、言わずと知れた不死身の男コブラ。
左腕に仕込んだサイコガンを武器とし、超人的なタフさを誇るスーパーマンです。
格好良さもさることながら、ピンチの時も平気で飛ばすジョークが楽し過ぎ。

「わっ、よせ! 今、手がふさがっているんだ。あとにしてくれ!」
(敵が待つわけないのに……)
「おかしな夢をみちまったぜ。ねる前にチョコレートエクレアを食べすぎたかな」
(いや、エクレアで悪夢は見ないだろう)
「顔はかんべんしてくれ。オレはともかく、女の子たちが悲しむ」
(たち、ってとこがらしいです)

そして、忘れてはならないのが彼の相棒レディーでしょう。
彼女はライブ・メタルと呼ばれる特殊金属のボディを持つアーマロイド。
宇宙船タートル号のメイン・パイロットであり、無茶ばかりするコブラの子守役であり、滅法強い戦士であり、ひじょ~に素敵な一人の女性でもあります。

あとは、コブラの宿敵クリスタル・ボーイかな。
強靱で、しかも光線銃が通用しないボディを持つ強力なサイボーグ。
デザインもさることながら、コブラとの会話がかなり洒落ています。

ではちょっとだけお気に入りの話の紹介をば。

『最終兵器の秘密』(三巻)……伝説の古代火星人が残した最終兵器。手にした者は全宇宙をも支配すると言われるそれを破壊するため、コブラ達は惑星ザドスに向かう――。番外編とも言える、ソード人の話がかなり面白い。ゾンビのように襲ってくる兵士や、奇抜な攻撃を仕掛けてくる偽王バベルなど、とにかく凝っている。本編の最後で戦うことになる最終兵器のデザイン、能力設定も上手い。実際のとこ、よく勝てたなってのが本音。

『ロボットはいかが?』(六巻)……ロボット市場にやってきたコブラ。目的はこの星の銀行だったが、一体のロボットに懐かれてしまい、仕方なくそれを購入する。ところが、そのベルマR78型には重大な秘密が――。六巻は非常に贅沢な短編集だが、その中でも一番好きなのがこれ。オチが卑怯? そんなことはない。コブラはおとぎ話である、こんなのもアリだ。蛇足だが、アニメ版はさらに出来が良くて非常に嬉しかった。レディーも出たし。(爆)

『黒竜王』(九巻)……全長六〇〇kmにも及ぶ巨大な船・ジゴルに飲み込まれたコブラとナタリー。ジゴル内部は黒竜王と呼ばれる謎の人物が恐怖政治をしく独立世界だった。コブラは脱出口を知るために、黒竜王に会いに行くが――。旧版コブラを語る上で、外せない話であろう。最初にゲームになったのがこれなのも頷ける。黒竜王の仕掛けてくる幻覚の描写がとにかく秀逸で、何度見てもヤバイ。特に、アップで迫る××××の絵(P93)なんかもう……。

『神の瞳』(十二巻)……この世に二個存在すると言われる指輪『神の瞳』。パピヨンとドローレは互いに相手の持つ指輪を狙っていた。二人の争いに巻き込まれるコブラだったが、サイコガンに限界が訪れ危機に陥る――。個人的に大好きな敵キャラ・マードック君が出る話。「俺の名はマードック!」って、聞かれてないのに名乗るとこや、二度も蘇って来たのに結局最後までコブラに名前を呼んでもらえなかったとこがいい。神の瞳が短期間のうちに見せる世界のバリエーションの多さには脱帽(よー、考えるわこんなに)。特に、最後の一個前の『小さな××の世界』のアイディアは素晴らしい。

まだまだ好きな話は沢山あるけど、とりあえずのくらいで。

豊富なアイディアを詰め込んだ不思議世界を舞台に、コブラの大活躍を描く本作は一級のエンターテイメントです、物凄~くオススメ。
カラーページを復活させた完全版も出てることだし、この機会に手に取ってみてはいかがでしょうか?

三番手の本は出ないだろうなぁ

2006-02-07 20:12:33 | その他
さて、ちょいと方向を変えて第434回は、

タイトル:No.2キャラクター伝説――二番手英雄伝
出版社:双葉社

であります。

ナンバー2と聞いて、どんなキャラクターを思い浮かべますか?
「二番目に強い奴!」――基本ですね。一番強いのは主人公だし。
「引き立て役!」――せめて、縁の下の力持ちと言ってあげましょう。
「副社長!」――いや、間違ってはいませんが……。

本書は二番手と呼ばれるキャラクター達を集め、彼らが所属作品で果たした役割やその生き様を分析していくムック本です。
漫画からゲームまで、コンドルのジョーからアオレンジャーまで、どっかで聞いた奴等が多数登場、二番手とはいったい何なのか? を問いかけてきます。

本書では二番手キャラを八種類に分類しています。

☆グループ内のニヒル系野郎型……主人公が生真面目な場合に力を発揮します。
☆導き型……教師役と言ってもいいでしょう。
☆サポート型……頼りになる(?)相棒、ですかね。
☆味方内ライバル型……主役二人組、の主人公じゃない方かな。(笑)
☆完全ライバル型……運が良ければ一回だけ主人公に勝てる。
☆コメディ担当型……清涼剤となるか、トラブルメーカーとなるか。
☆案内人・傍観者型……主人公と違ってマクロな視点で世界を見る人。
☆リーダー型……真っ先に眼からビーム出る人が思い浮かぶのはなぜだろう。

こうやって並べると、人気の出るサブキャラの要素が殆ど揃ってますね。
特に群像劇では、こいつらを上手く、何人動かせるかで作品の評価が分かれます。

キャラクター分析だけじゃなく、コラムも充実。
二番手キャラクターになるための十七箇条では、貴方が格好いい二番手になれるかどうかチェックできます。
でも、楽器を弾けとか動揺するなは解るにしても、親元に帰省するなとかゲームソフトを発売日に買ったりするな……って、何か違う気が。
他にも、作品世界についての突っ込んだ考察や二番手キャラがこっそり語る一番手の悪口、二番手キャラ名&迷セリフ合戦等々、遊び心満載です。

一つの作品を追っかけるなら専門サイトを探す方がいいと思いますが、ずらっと並べて比較したいなら結構オススメ。
個人的に、ナイト2000とサマルトリアの王子が載ってたのはかなり嬉しかったです……懐かしい。

三月ウサギ?

2006-02-06 17:57:38 | ミステリ
さて、久々にこの方な第433回は、

タイトル:三月は深き紅の淵を
著者:恩田陸
文庫名:講談社文庫

であります。

恩田陸の書く、四章構成の連作中編。
どの章も謎の本『三月は深き紅の淵を』をめぐる話になっていますが、それぞれの物語は独立しており、連結性は皆無です。


『第一章 待っている人々』……読書好きという理由だけで、会長が主催する年一回の『春のお茶会』に誘われた鮫島。彼はそこで、作者を明かさず、コピーを取らず、たった一人の友人に一晩だけ貸し出すことが許された本の話を聞かされる――。
頼むから、架空の本の賛美を延々聞かせるのはどうにかして下さい。現実でも、熱烈なファンが語る褒め言葉のオンパレードってウンザリするのに、読者が読むことのできない本についてまでやられたんじゃたまらない。

『第二章 出雲夜想曲』……隆子と朱音、二人の編集者は列車で出雲を目指していた。謎の本『三月は深き紅の淵を』の作者を突き止めるために――。
朱音が語る、作品のために作品は存在するという論理は醜悪。この人の論理に従うと、本書は物語を貶めていると思うぞ。ま、朱音の考え=作者の考え、じゃないんだろうけど。

『第三章 虹と雲と鳥と』……十一月の末、公園の崖下で二人の少女の死体が発見された。彼女達を知る人々は、その死に疑問を抱くが――。
最初に出てきた穂積さんて、何だったの? というツッコミは入るものの、四つの章の中では一番読める話。残された人々が過去を追う過程で、隠された二人の少女の愛憎が見えて来るミステリ調の展開は面白い。

『第四章 回転木馬』……最低レベルのメタ小説。作者自身が登場して、『三月は深き紅の淵を』を書いている時の心情と、それに派生して生まれた物語について一人称で語る。『麦の海に沈む果実』の原形となった話や、『黒と茶の幻想』の名前も登場する。


あの~、私は小説論の講釈を読みたい訳じゃないんですけど。
自分の小説に対する思いを語りたいならエッセイ書いてね。
以上!

売り確定。



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三つ目

2006-02-05 00:17:23 | ファンタジー(現世界)
さて、買うのも読むのも恥ずかしくなくなったの第432回は、

タイトル:マリア様がみてる 黄薔薇革命
著者:今野緒雪
出版社:集英社コバルト文庫

であります。

とりあえず、表紙の折り返しに掲載されている名前順に2巻だと思って買ってみたのがこれ。

第一巻は主人公の福沢祐巳が、学園祭を通じて紅薔薇のつぼみ(ロサ・キネンシス・アン・ブゥトン)である小笠原祥子の妹となるまでの話で、紅薔薇ファミリーの話。
この2巻はタイトルどおり、主人公たちが通う私立リリアン女学園の生徒会「山百合会」の幹部である三薔薇のうちの黄薔薇ファミリーの話。

ストーリーは、黄薔薇ファミリーの2年生で黄薔薇のつぼみ(ロサ・フェティダ・アン・ブゥトン)の支倉令、そしてその妹(スール)の島津由乃が中心。

従姉妹同士で、家もお隣という仲のよい姉妹の令と由乃。
令は剣道部に所属する、ショートカットで凛々しい美少年と言った少女。
逆に由乃は昔から心臓の持病を抱えて、三つ編みにした見た目も清楚な少女。

だが、その内実はお菓子作りや編み物が得意で、少女小説が愛読書、好きな言葉が真心という令と、スポーツ観戦が好きで愛読書が剣客小説、好きな言葉が先手必勝というまるで正反対なふたり。

そんなふたりのある日。
心臓病のために、あまりにも過保護すぎる令に業を煮やした由乃は、姉妹の契りの証であるロザリオを令に突き返してしまう。
縦関係の厳しいリリアンにあって、姉から姉妹関係を解消されることはあっても、その逆は極めて異例。

……はずだったのだが、それをやってしまった由乃。
そのことは新聞部が発行する「リリアンかわら版」に、まるで小説のように憶測と創作で掲載され、似たようなことがあちこちで起きる始末。
ついでに、そのふたりの姉である黄薔薇さま(ロサ・フェティダ)は、そんなことが起きているなんてことすら知らないほどのぼけっぷり。

しかも黄薔薇さま(ロサ・フェティダ)まで、何やらありそうな気配……。

と言うわけで、ストーリーは黄薔薇ファミリーの出来事を中心に、祐巳と祥子のふたりのちょっとした変化も交えて進んでいく。

まー、なんとゆーか、令、由乃の姉妹は、この百合話でなくとも王道中の王道。
ネタ、オチともに、支えるほうと支えられるほうの見た目と内実の対比をテーマに進むと言う、これまた王道。
黄薔薇さま(ロサ・フェティダ)のネタも、混乱を深めると言うアクセントにはなっているが、まぁ、そこまでストーリー上、必須のネタかと言われるとどうかな。
まぁ、黄薔薇ファミリー3人いるし、タイトルどおりで行くと出さないわけにはいかないとは思うけど。

あと、文章。
一人称の文体は前作と一緒だから、と言うわけではないのだろうが、一人称の中心人物が変わるのに最初かなり違和感があった。
慣れればどうってことはないのはないけど……。

それから話し言葉。
前作は、基本的に祐巳、祥子の話だったし、薔薇さまの3人はそれぞれ特徴のある口調で書いていたのでいいのだが、ここに由乃がメインで加わったため、話し言葉の区別をつけるのがめんどい。
流れに乗ったまま、すいすい読んでいると、いまのはどっちのセリフだ? と言うことがしばしばある。

そのあとに誰のセリフかと言う地の文があればいいのだが、それがないことがそれなりにあるので、こういうところは減点対象。
場面転換も、流れを滞らせるくらい妙なときもあるので、こういうところもいただけない。

やはり2巻目となると、そこそこあらが目立ってきたりするもんだぁねぇ。

それにしても、最後の最後は祐巳と祥子のふたりで締めてくれているのだが……。
お姉さまと呼ばなければ返事をしない、って、子供か、祥子さんよ……。



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2006-02-04 13:57:41 | ファンタジー(現世界)
さて、2冊目を読もうの第2弾は、死にたいひとだけアマゾンで絵を見ようの第431回は、

タイトル:乃木坂春香の秘密2
著者:五十嵐雄策
出版社:電撃文庫

であります。

表紙絵は、少し慣れた(笑)
買うときも、他に集英社文庫とか、コバルト文庫とか、画集とかと一緒に買ったので、気にはならなかった(笑)
てか、1巻買っちまったんだから、もうどうでもいいのさっ(爆)

さて、完全無欠の、だが天然ボケというお約束の塊を地でいくヒロイン乃木坂春香と、春香のアキバ系趣味という秘密を知ってしまったことから、友達づきあいが始まった綾瀬裕人のベタなお約束ラブコメディの2巻。

1巻と変わらず、60~100ページあたりをうろうろする短編4本にエピローグを加えた構成。
文体も、主人公である裕人の一人称で軽快な語り口調で読みやすい。

そしてストーリーはと言うと、相変わらずというか、まぁ、そこがいいんだがと言うか、ベタ(笑)

その最たるものが2巻で登場する新キャラ。
最初の短編である第五話で登場する乃木坂姉妹の父 玄冬。
わけのわからないうちに、春香が出場するピアノコンクール(場所ロンドン)に連れて行かれた裕人は、そこで玄冬と出会う。
厳つい顔にサングラスで、どこからどう見てもマフィアの親分としか思えない姿。

さらに乃木坂妹の美香の「お義兄ちゃんになるひと」と言うセリフや、春香が助けてもらいたいときに頼ってしまう裕人に対して、こめかみに怒りマークを付けるあたり、かわいい娘たちを蝶よ花よとかわいがる、いかにもコメディに登場するお嬢さまの父、と言う設定。

このふたりの出会いとやりとり、そしてピアノコンクールでの一夜が第五話のお話。

で、第六話は乃木坂姉妹の世話を一手に引き受ける1巻でも登場したメイドの桜坂葉月がメインの話。
最近どこか様子がおかしい葉月を気にかける春香について、葉月を尾行する裕人たちの尾行劇を描いたもの。

途中、勘違いで春香はウェディングドレス、裕人はタキシードに着替えさせられるシーンがあるなど、読者サービスは忘れていない。

第七話は1巻でも話が出ていた夏コミのお話。
……あえて、多くは語るまい……。

途中、会場のひとの多さに、裕人がはぐれないようにと手を繋いだときの春香のセリフ、
「ゆ、裕人さんの手って、大きいんですね」

……是非、読んで死んでください。
このコールタールでは粘度が太刀打ちできないベタっぷりには私も死にました(爆)

第八話は、夏コミから戻った春香が父の玄冬とケンカして、裕人宅に転がり込み、一泊すると言うお話。
ここでも新キャラ。
玄冬がまったくかなわない乃木坂姉妹の母親が登場。

さて、ネタは暗くて怖いから一緒に部屋で寝たいと言い出す春香や、それを連れ戻しに来た玄冬と火花を散らす裕人姉のルコなど、ベタキャラの特性をいかんなく発揮するベタな展開。

……にしても、これだけベタなお約束展開だって言うのに、まぁ、読めるもんだな。
とは言え、やはり1巻のインパクトにはさすがに勝てないのだろうか。
1巻に較べてノリがやや悪い感じがする。

文章も、ストーリー上の問題もあるだろうが、1巻でよく見かけられた裕人らしい地の文の突っ込みなども少ない印象。
この突っ込みがなかなかいい味になっていたところもあったのだが、ここも少ない印象だったので全体としてのノリのよさが薄まった感があるのだろう。

まぁでも、こう堅い話を読み続けたりしていたときに、こういうラブコメを読むと、やっぱり安心するなぁ(笑)
もっとも、萌え系に耐性がなければ読めないのはまったく変わらないけど。



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なぜかまた企画

2006-02-03 21:05:42 | ファンタジー(現世界)
さて、ラノベ企画2巻を読もうの第430回は、

タイトル:ヴァルキュリアの機甲II ~恋愛操作~
著者:ゆうきりん
出版社:電撃文庫

であります。

とりあえず、1冊目だけでは判断しない。
2冊目を買ってみて、それから判断する。
と言うのが最近のスタイル。

まぁ、1巻はいちおうよい部類に入っていたので読んでみることにした。
ちょっとした背景は「ヴァルキュリアの機甲」のほうを見てもらうとして……。

ストーリーは、まずヴァルキュリアたちの戦いから始まる。
ウランバートルに出現したティラノサウルスそっくりのG・O相手に戦闘を開始する。
作戦は簡単。
あらかじめ開けておいた落とし穴にG・Oをはめ、身動きがままならなくなったところで、G・Oを唯一殲滅できる「黄金の槍」を使うのみ。

しかし、G・Oを追い落とす役目のふたりが勝手な判断でそれを失敗してしまう。
指揮官である雨宮竜一郎は作戦を変更し、何とかG・Oには勝利する。
訓練を見直す必要があると考える竜一郎のいない地球で、司令官であるヘルガはヴァルキュリア騎兵隊の運用を司る委員会に出席していた。

そしてそこでお目付役として、死んだと思われていたライアー、そして騎兵隊の副隊長として任命されたシトロン・シュナイダー少尉と会い、ともに騎兵隊が住む地球軌道上の旗艦スレイプニルへと戻る。

新たな女性キャラを登場させて行われるのはタイトルどおりの「恋愛操作」
初めて「物」ではなく「人」として扱ってくれた竜一郎に対するヴァルキュリアたちの思い。
それを操作するために派遣されたシトロン。

スレイプニルで展開されるシトロンとヴァルキュリアたちのやりとり。
竜一郎にいいところを見せようと張り切り、結局G・O相手にまったく役に立たなかったヴァルキュリアたち。
そうした少女たちを尻目に、登場した途端にあっさりとG・Oを倒してしまったもうひとりのヴァルキュリア。

ラストはしっかりと次巻への引きを残して2巻は終了する。

まー、タイトルどおりの「恋愛操作」のところは、読んでいてかゆくなるね、確実に。
とは言え、やっぱり思うのはそつなく作ってるなぁ、ってことかな。
軽いところ、重いところ、竜一郎という指揮官のもとでのヴァルキュリアたちの2回に渡る戦闘シーンなど、うまく配置している。

あとがきを読むと、2巻でちょうど半分。
実際に4巻で完結しているようなので、そう言う意味では構成もしっかりしているのだろう。

だが、物語の主眼がやや恋愛中心に傾いているせいか、いまいち盛り上がりに欠ける。
ヴァルキュリアたちの竜一郎に対する態度や行動と言った部分は、コメディ的にははまるかもしれないが、作品がコメディタッチのものではないので、さほど笑えると言うわけではない。

ストーリーの流れは悪くないし、いつもの頭文字羅列の名称には少しは慣れたとは言え、相変わらずうざったいところもあるが、文章の破綻も少ない。

悪くないのは悪くないし、そつなく作っているのだが、そつがなさすぎておもしろみに欠ける、と言うのが正直なところか。
4巻完結で、終わりがはっきりしているので、せっかく読んだのだからってひとにはどうぞ、と言うくらいかな。

ラストの引きも、一晩寝たらさして気にはならなくなったし。
まぁ、それくらいのもの、ということで。



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妖怪談義に花を……

2006-02-02 18:27:19 | 木曜漫画劇場(紅組)
さて、咲かせなくても読めるけどの第429回は、

タイトル:月夜烏草紙(第1巻~第5巻:以下続刊)
著者:及川七生
出版社:白泉社 花とゆめコミックス

であります。

鈴:妖怪と言うと水木しげる? とか思ってしまうLINNで~す。

扇:作者名見て、『バラ色の人生』が聞こえてきたSENでーす。

鈴:『バラ色の人生』って何だ!?
また70年代か?(笑)

扇:ミッチーって言えば解るか?

鈴:ミッチー……?
あぁ、あの王子様なんて呼ばれてたコメディアンか(笑)

扇:違う……とは言い切れんが。
いいもん、うちにベストアルバムあるから。

鈴:あるんかいっ!
ったく、こういうわけのわからんのはほっといて作品紹介でもすっかな。

さて、ストーリーですが、舞台は明治、元武士である士族の家に生まれた千鶴と、妖怪ふたりの織りなす日本的幻想奇譚であります。

扇:ちなみに、モノが宿る骨董品を扱う美少年とかは出てきません。
眼から髪までほっそい線で書き込んでいく絵はかなーり私好みだったりします。
本人曰く、正面顔が苦手らしいけど、実は横顔の方が……。(以下削除)

鈴:絵は、確かに濃ゆいほうではあるな、このひと。
でも、そうくどい感じもしないし、これはこれでこのひとの味になっているような気はするな。
じゃぁ、キャラ紹介にすっかね。

扇:その前にお知らせです。
つか、今日は早いなぁ……好きな作品なんだが。

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(何のためのCMなんだらう……)

つれづれ読書日記

鈴:では、恒例のキャラ紹介であります。
熱田千鶴、本編の主人公兼ヒロイン兼妖怪調教師(?)
紫紅&若葉というでこぼこ妖怪コンビにつきまとわれる薄幸の美少女……なんてのがまったく似合わない、ぶっとい女性キャラ。
祖母絡みで、紫紅&若葉と出会い、忘れていたころに再会し、以来つきまとわれるようになる。

扇:妖怪も調教されることも多々あるがな、君好みの関係やね。
この漫画中二番目に強いキャラ、ちなみに一番はこの方のお祖母様。
一話の初っぱなから辻斬りに襲われ、気絶した気の弱い弟を抱えて逃げるという離れ業を演じた上、妖怪に対して説教まで喰らわした剛毅なお人。
見た目は和服の似合う可愛らしいお嬢さんなので、表紙で想像を膨らませた方は開始数頁で挫折するかも知れない。(笑)

鈴:私好み……? 誤解を招くように言い方はやめたまえ。
私は責め専門だ(爆)
……冗談はさておき、次に妖怪二人組の片割れ、紫紅。
こちらは、まったく期待を裏切らない軟派な妖怪で、千鶴かわいさ余っていじわるしまくる典型的なタイプ。
まぁでも、人気は出るだろうなぁ。

扇:をい
全身白、トーンなしという振られ要素全開の長髪美形。(笑)
最初は千鶴の有り余るパワーを楽しんでいたようだが、最新刊あたりでは既にメロメロ状態になっている、いかにも妖怪らしくアイデンティティの弱い奴。
こいつに関してだけ言えば、千鶴に会う前の『過去の女』との絡みの方が面白かったと思うのは私だけだろうか……いや、いい男なんだけどさ。

鈴:まぁ、いい男だとは思うがねぇ。
では、次にもうひとりの片割れの若葉。日本人形のような姿をしつつも、こっちのほうが紫紅よりもよっぽど妖怪らしい。
つか、どっかの戦場に行って屍体食ってくんなよ、あんた(笑)
まー、成人体もないわけではないが、おそらくビジュアル的には日本人形のほうが人気がありそうなのは気のせいではあるまい。

扇:見た目は日本人形何だが実は……というのは伏せておこう。
人間との付き合い方といい、生死の割り切りかたといい、紫紅より遥かに大人。
千鶴はこいつを紫紅とセットで見ており、おかげで物語は千鶴&紫紅のいわゆるフツーの恋愛奇譚にならずに済んでいる、その意味でかなり重要キャラ。
ちなみに、成人体で現れた時に紫紅と区別がつかないことは言っちゃ駄目。

鈴:言っちゃダメって、言ってんじゃねぇかっ!
……で、とりあえず、メイン……というか、こいつらだけでいいじゃん、って言うキャラ紹介なんだが、やっぱり、いちおうなキャラも入れとくかね。

扇:んじゃ、千鶴の恋人候補だった修司さん。(過去形)
登場時はオールバックの絵師、その後髪を切った。
不幸な生い立ちのためか、やや斜に構えたところがあったものの、千鶴の全身全霊をかけた愛により復活、しかし直後に別れ別れになる。
その後再会するも、お互いの恋愛感情には折り合いをつけてしまったのか、妙に達観したキャラになっていた……つーか、老成しちゃった?

鈴:んじゃ、千鶴の恋人候補の宮ノ原敬。(現在形)
千鶴の弟の同級生で、千鶴に一目惚れして、結婚してくださいと言う猪突猛進の単純タイプだが、素直で男気に溢れててかわいい少年キャラ。
千鶴もやや困り気味ながらも、まんざらでもない感じで描かれているキャラだが、惚れた相手と親友(千鶴の弟)を天秤にかけて、千鶴を取る辺り、男気=友情より女を取る辺りが笑えたり……(笑)

扇:絵だけじゃなく、話の作り的にも水準以上の人だと思います。
キャラ同士の関係や感情の変化も上手いこと書いてますし。
LINNの読んでる漫画の中では珍しく、かなりのオススメ。(微妙な表現)

鈴;まぁ、確かに、めずらしいってのは否定せん。
つか、私の場合、間口が広いぶん、印象に残らないマンガのほうが多いんでな(爆)
……そういや、買う前にとりあえず花とゆめなら知ってるかどうか聞けよ。

扇:聞く前に買ってるんだよ。(爆)
これは事前に聞いてたから良かったぞ、新刊でまとめて買ったけどハズレなし。
ただ、この後どうなるかと聞かれると少々不安ではあるがな。

鈴:まー、長く描いてると、どうしても「?」なところとか、出てくるのは仕方あるまい。
オチをうまくつけてくれりゃ、それでいいとも言えるがね。
……と言うわけで、今日の木曜漫画劇場は、この辺りで幕間です。
では、さよ~~~~~~~~~~~~~~~~おなら

扇:五巻のヒキがちとな……それでも期待はしてるが。
パターンに則って言うなら、六巻で波乱、七巻で完結がいい感じかな。
終劇じゃ、たわけ!
次回は――何だっけ? ま、まぁ、また来週と言うことで、さようなら。

(蛇足ですが、『およかわ・なお』さんです……読めなかった)
(こっちは、「おいかわ・ななお」って読んだわ……)


☆リバイバルレビュー!☆
本書のレビューには新記事が存在します。
ネタバレ満載の最終巻レビューはこちら

ファルカンの定理……ではなくて

2006-02-01 00:14:15 | 学術書/新書
さて、単純なものほど難しいと思う第428回は、

タイトル:天才数学者たちが挑んだ最大の難問―フェルマーの最終定理が解けるまで
著者:アミール・D・アクゼル
文庫名:ハヤカワ文庫

であります。

三百五十年もの長きに渡り、数学者達を悩ませ続けてきたフェルマーの最終定理。
彼らはいかにして、この難問に取り組んだのか? そして、なぜこんなものが出てきたのか? を解き明かしていく好著。

フェルマーの最終定理は至って簡単です。
本書のカバー裏から引用すると――

「Xn+Yn=Znは、nが2より大きいとき、自然数解をもたない」
(表示の問題でこう書いてますが、nは乗数です)

以上!
nが2の時、つまり

「Xの二乗+Yの二乗=Zの二乗」

の式は成り立つけど、

「Xの三乗+Yの三乗=Zの三乗」
「Xの四乗+Yの四乗=Zの四乗」
「Xの……(以下無限)」

は成立しないと言っている、そんだけです。
ちなみに二乗の場合は、

X=3 Y=4 Z=5
3×3+4×4=5×5
9+16=25

であっさり解けます。
三乗も簡単にいけるんとちゃう? と思った方、やってみて下さい。
一生やり続けても無理です。(笑) 

序盤はこの定理のルーツとなる乗法、代数の歴史。
起源はなんと古代バビロニアまで遡ります。租税を取るため、土地の広さを正確に記録する必要があったのですね。
三平方の定理で有名なピタゴラス、「エウレカ!」という言葉をメジャーにしたアルキメデスなどの話もあります。

中盤は直接的、間接的にフェルマーの最終定理に関わった数学者達の紹介。
やっかいな問題を残して後世の数学者をシメたフェルマー、世界で最も美しい公式で知られるオイラー、偉大なる巨人ガウス等々……有名人がいっぱい。
彼らの数学者としての業績やフェルマーの最終定理に果たした役割についてダイジェスト的に触れています。

終盤はいよいよ、証明の最終段階に突入。
この簡単な定理を証明(あるいは否定)するために知恵をしぼる近代~現代の数学者達の奮闘を描きます。
個人的にP185のケン・リベットとバリー・メイザーの会話は大好き、格好良いぞメイザーじっちゃん。

フェルマーの最終定理の解説本、ではなくて、数学のプチ歴史本、かな。
数学好きな人にはかなーりオススメ、でも数学嫌いな人は手を出しちゃ駄目。
専門知識がなくても楽しめると書いてはあるけど……最低でも高校数学Iぐらいまでは理解してないと読んでて疲れると思います。

あ、また『不思議の国のトムキンス』をオススメしたくなってきた。
あれは数学嫌いの人が読んでも面白いです。