状況が一変しかねなくなった。STAP細胞問題である。今日午後3時から、小保方晴子氏の上司でSTAP細胞研究の最高責任者であり、小保方氏の論文作成を指導し、かつ論文の共著者でもある理化学研究所の発生・再生科学総合研究センター副センター長という要職に就き、理研の調査チームが「改ざん・捏造」と決めつけた論文の関与についても「研究不正には関与していないが責任は重大」と断罪された笹井芳樹氏が論文の疑惑発覚後、初めて報道陣の前に姿を現して記者会見をするというのだ。
小保方氏は理研の職員で、しかも小なりとはいえ「ユニットリーダー」(一般的職位としては課長職に相当するらしい)という一国一城の主だ。しかも理化学研究所は私企業ではない。独立行政法人という官公庁の出先機関であり、その職員は国家公務員に準じる。一般の国家公務員では、いくらキャリア組でも30歳で課長職というのは、あまり聞いたことがない。言うなら小保方氏は理研のエース中のエース(だった)と言っても過言ではない。
その小保方氏が勤務先の理研と真っ向から対立している。毎日新聞の調査によれば、9日に行われた小保方氏の記者会見以降STAP細胞問題についてのツィートが急増しているようだが、小保方氏を支持あるいは応援するツィートが批判派の2倍に達しているという。これは昨15日にSTAP細胞論文の共著者である米ハーバード大学のチャールズ・バカンティ教授が京都市で行われた気管支関係の国際会議の基調講演で「STAP細胞は存在する」と断言する前の調査だから、おそらく昨日から今日にかけて小保方氏支持のツィートが爆発的に増えているだろう。
そして今日午後3時には理研サイドで大きなカギを握っているとみられている笹井氏が東京で記者会見を行うという。このブログは、笹井氏の記者会見が行われる前に投稿するから、読者によってはすでに笹井氏の記者会見をテレビでご覧になった後かもしれない。
笹井氏がなぜ大きなカギを握っているとみられているのか。STAP細胞研究の最高責任者(名目上のではない)であり、研究活動の総指揮をとっていただけではなく、若い小保方氏の論文作成を直接指導してきた人物だからである。笹井氏はマスコミの報道によれば、論文の撤回には同意しているが、STAP細胞の存在については肯定的ニュアンスのコメントをしているという。STAP論文の著者たちに撤回を呼びかけた共著者の一人である山梨大学の若山照彦教授はSTAP細胞の存在もほぼ否定している。なお若山氏は2012年に山梨大学が生命環境学部を新設した際教授として招聘されたが、その以前は理研の発生・再生科学総合センターのゲノム・リプログラミング研究チームのチームリーダーであり、現在も理研の客員主管研究員である。小保方氏がSTAP細胞からSTAP幹細胞の作製を若山氏に依頼したのは、笹井氏のアドバイスによると言われている。
実は3月10日、NHKがニュース7で若山氏のインタビューを放映して以降、一気にSTAP細胞問題が社会問題化した。そのインタビューで若山氏は「研究データに重大な問題が見つかり、STAP細胞が存在する確信がなくなった。研究論文に名を連ねた研究者たちに論文の取り下げに同意するよう働きかけている」と語ったのだ。この時点では若山氏はSTAP細胞の存在については完全否定するような発言はしていない。というのも、若山氏はかつてチームリーダーとして理研で研究活動をしており、山梨大学教授に転職したのちも理研には客員主管研究員として籍を置いており、若山氏が告発した時点では理研は単純な論文のミスと考え「研究の本質的な部分については揺るぎのないものと考えている」と発表していたため、多少理研サイドに配慮したのであろう。
が、その時点から渦中の小保方氏はマスコミの前から完全に姿を隠してしまった。私は3月11日(STAP疑惑が浮上した翌日)に投稿したブログ『小保方晴子氏のSTAP細胞作製は捏造だったのか。それとも突然変異だったのか?』と題するブログに続いて、14日には『小保方晴子氏のSTAP細胞作製疑惑に新たな疑惑が浮上した。彼女はなぜ真実を明らかにせず逃げ回るのか?』と題するブログを投稿している。
この時点ではまったく報道がなかったが、雲隠れしたのは小保方氏だけではなく、笹井氏も姿を見せなくなっていたようだ。当然、報道陣は渦中の小保方氏だけでなく、STAP細胞研究の最高責任者である笹井氏も探し回っていたはずだ。が、二人とも勤務先の理研はおろか自宅にも帰らず、ホテルを転々として姿を隠していたようだ。『週刊新潮』が一度、小保方氏をキャッチして話を聞いたようだが、新聞やテレビの前に姿を現すことはなかった。
一方、いったん「研究の本質的な部分については揺るぎがない」としていた理研は、論文についての精査を続けた結果、4月1日に最終報告を発表、「論文には改ざん・捏造の不正が確認された。取り下げを勧告する」とした。この最終報告を受け、笹井氏は「すでに作成された図表データをもとに文章を書く過程でアドバイスする役割を担っただけで、問題になった図表データの過誤は論文発表前には全く認識していなかった」というコメントを発表して責任を回避しようとしていた。また理研も笹井氏については「責任は重大だが、不正には関与していない」と発表、「組織的な改ざん・捏造ではなく、小保方個人の不正行為」と断定したのである。マスコミの一部から「トカゲの尻尾切りではないか」と、理研の対応に批判が出たのはそのためである。
私はその翌日(4月2日)、『小保方氏ら14人共著のSTAP論文は「改ざん・捏造」だったのか? 論文取り下げには全員の同意が必要』と題するブログを投稿、論文の取り下げ勧告については小保方氏が沈黙を続けている以上「やむを得ない処置と言えよう」と書いた。が、理研の最終報告についてはこう指摘しておいた。
STAP細胞の研究そのものが不正となると、小保方氏の研究者生活は終わりを告げることになる。少なくとも『ネイチャー』に論文を投稿した時点では、理化学研究所の調査対象になった3人(※若山・笹井・丹羽=後述=の3氏)だけでなく、ほかにも10人の国内外の研究者全員が小保方氏の不正研究を見抜けなかったということになる。世界最高権威とされる科学誌に投稿する論文、それも常識的にはありえないとされた発見に、発見者の小保方氏以外に13人もの研究者がいとも簡単に権威づけのために名前を貸したのか、という疑問が生じる。もしそうだとしたら、『ネイチャー』に掲載された論文すべてが疑いの目でみなければならないということになる。しかも小保方氏以外にも『ネイチャー』論文には笹井氏や丹羽氏以外にも理化学研究所発生・再生科学総合研究センターの研究者6人が共著者として名を連ねている。この6人の研究者は一切STAP細胞研究に関係していなかったというのか。理化学研究所の調査対象にすら入っていなかったということは、そういうことを意味する。日本の基礎研究の最高峰の一つとされている理化学研究所では、そうした名前の貸し借りが日常的に行われているとしか考えられない。
理研はSTAP細胞論文を「改ざん・不正」と決めつける一方、STAP細胞の作製そのものもでっち上げだったとは、さすがに断定はしなかった。というのは研究グループを率いた笹井氏が、論文の撤回には同意したものの「STAPを前提にしないと説明が容易にできないデータがある」と主張していたからのようだ。そのため、理研は発生・再生科学総合センターのプロジェクトリーダーであり丹羽仁史氏をリーダーとして検証研究を6人のスタッフで1年かけて行うことにしたのである。ただし、この検証チームからは笹井氏も小保方氏も意図的に排除されている。
こと、ここに至って、沈黙を続けていた小保方氏が反撃に出た。理研に対して不服を申し立てるとともに、マスコミの前にようやく姿を現し、2時間半の反論会見を行ったのだ。その記者会見はほとんどのテレビ局が緊急生中継したほどの過熱ぶりで、私も翌日の4月10日には『小保方晴子氏が反撃を開始した①――STAP現象は証明できるのか?』と題するブログを投稿、翌11日にも『小保方晴子氏が反撃を開始した②――論文のミスは悪意の所産だったのか?』と題するブログを投稿した。
この二日にわたって書いた小保方氏の説明に対して私が感じた疑問は、専門的なことを除けばその後多くの研究者たちが同じく指摘し始めた。
その基本的なポイントは、①小保方氏が200回以上もSTAP細胞の作製に成功しているのに、ほかに再現に成功した人がいないのはなぜか、②STAP細胞を作製するのにはちょっとしたコツやレシピが必要というが、特許の関係で公開できないという主張は説得力に欠ける、③インデペンデントに(小保方氏の研究とは直接の関係がない人の意味)成功したというが、その人の名前を明らかにできないなら信用できない、というものだった。
ところが、こうした批判を受けて14日、小保方氏がかなり説得力がある説明
を文書にしてマスコミに配布した。たとえば①に関しては、研究者の中には「200
回以上もの実験をそんなに短期間にできるわけがない」と批判していた人もおり、それに対して小保方氏は「私は毎日、それも1日に複数回の実験をしていた」とはねつけた。②の「コツやレシピ」についても、「言葉ではなかなか伝えきれないので、再現実験をしている人から協力を要請されれば積極的に協力する」と断言した。③については「迷惑がかかってはいけないので、私の判断だけで名前を公表することはできないが、理研はその事実を知っている」と述べている。ただし、③の成功者について理研は「成功したとは認識していない」と反論している。
そういう状況の中で、カギを握っていると目されている笹井氏が今日午後3時から記者会見をするという。ただ、笹井氏はなぜわざわざ東京で記者会見を行うのか。理研の会見も、小保方氏の会見もすべて大阪で行われてきた。理研の発生・再生科学総合研究センターは神戸にあり、笹井氏の自宅も神戸にある。理研や小保方氏の記者会見に出席したマスコミの記者たちも、大阪勤務の人たちが中心だったはずだ。そうした経緯を考えても、わざわざ東京で記者会見を行うというのはやはり不自然さを感じざるを得ない。ひょっとしたら、理研の官僚的体質に嫌気がさして、理研に反旗を翻す意思を固めたのかもしれない。
実際、笹井氏は万能細胞の一つとされるES細胞研究では世界的な権威者である。京都大学医学部を卒業後、米カリフォルニア大学ロスアンジェルス校医学部の客員研究員を経て、母校の京大再生医科学研究所教授になり、昨年4月に理研に移った。ノーベル賞を受賞した山中伸也京大教授とは宿命のライバルと目されてきたほどの研究者だ。屈辱感を抱きながら理研にしがみつかなければならないような立場ではない。
もし、笹井氏が腹をくくって記者会見に臨むというなら、おそらく理研の承認を得ずに個人的に行うつもりなのだろう。そうだとすれば、これまでは防戦一方だった小保方氏にも追い風が吹きだしたのかもしれない。このブログの冒頭に述べた米ハーバード大学のチャールズ・バカンティ教授が昨日の気管支関連の国際会議の基調講演(テーマは「再生医療と幹細胞」)のなかで「STAP細胞はある」と断言もしている。ハーバード大学教授というだけで世界の一流研究者の折り紙つきのようなものだが、国際会議の基調講演を行えるほどの大人物ということになると、理研が束になってかかっても適いっこない。そのバカンティ教授が講演で小保方氏を名指しで「ボストンに戻ってこい」と呼びかけたというから、風向きが一変するかもしれない。
いずれにせよ、理研への不服申し立てを行った小保方氏が、形勢を逆転すべく自ら開いた記者会見でかえって窮地に追い込まれた感があったが、記者会見での説明が不十分だった部分を補うべく、かなり説得力があると私は認める文
書をマスコミ各社に送付したこと、またおそらく理研があずかり知らない記者会見をSTAP細胞研究の最高責任者の笹井氏が、理研の発生・再生科学総合センターがある関西から遠く離れた東京でわざわざ開くという行為そのものが、今日の会見に並々ならない決意で笹井氏が臨むつもりではないかと思わせるに足る十分な根拠がある。
いずれにせよ、理研が1年かけて行うという小保方氏のSTAP現象の検証研究から、笹井氏も、肝心要の小保方氏も外したことは、もはや理研が日本屈指の研究機関というより、もう救いようがない官僚機構に成り下がってしまったことを意味する以外の何物でもない。笹井氏がどういう発言を今日するかは知る由もないが、理研は会見の前に「急きょ、検証研究に小保方氏の参加を要請することにした」と発表すべきだ。小保方氏を排除しての検証研究の結果など、発表したとたんに「やはり結論ありきだった」と世界の科学界から拒絶反応が出るのは必至である。そういう常識すら失っている理研は、もはや研究機関としてはだれも相手にしてくれなくなる。
小保方氏は理研の職員で、しかも小なりとはいえ「ユニットリーダー」(一般的職位としては課長職に相当するらしい)という一国一城の主だ。しかも理化学研究所は私企業ではない。独立行政法人という官公庁の出先機関であり、その職員は国家公務員に準じる。一般の国家公務員では、いくらキャリア組でも30歳で課長職というのは、あまり聞いたことがない。言うなら小保方氏は理研のエース中のエース(だった)と言っても過言ではない。
その小保方氏が勤務先の理研と真っ向から対立している。毎日新聞の調査によれば、9日に行われた小保方氏の記者会見以降STAP細胞問題についてのツィートが急増しているようだが、小保方氏を支持あるいは応援するツィートが批判派の2倍に達しているという。これは昨15日にSTAP細胞論文の共著者である米ハーバード大学のチャールズ・バカンティ教授が京都市で行われた気管支関係の国際会議の基調講演で「STAP細胞は存在する」と断言する前の調査だから、おそらく昨日から今日にかけて小保方氏支持のツィートが爆発的に増えているだろう。
そして今日午後3時には理研サイドで大きなカギを握っているとみられている笹井氏が東京で記者会見を行うという。このブログは、笹井氏の記者会見が行われる前に投稿するから、読者によってはすでに笹井氏の記者会見をテレビでご覧になった後かもしれない。
笹井氏がなぜ大きなカギを握っているとみられているのか。STAP細胞研究の最高責任者(名目上のではない)であり、研究活動の総指揮をとっていただけではなく、若い小保方氏の論文作成を直接指導してきた人物だからである。笹井氏はマスコミの報道によれば、論文の撤回には同意しているが、STAP細胞の存在については肯定的ニュアンスのコメントをしているという。STAP論文の著者たちに撤回を呼びかけた共著者の一人である山梨大学の若山照彦教授はSTAP細胞の存在もほぼ否定している。なお若山氏は2012年に山梨大学が生命環境学部を新設した際教授として招聘されたが、その以前は理研の発生・再生科学総合センターのゲノム・リプログラミング研究チームのチームリーダーであり、現在も理研の客員主管研究員である。小保方氏がSTAP細胞からSTAP幹細胞の作製を若山氏に依頼したのは、笹井氏のアドバイスによると言われている。
実は3月10日、NHKがニュース7で若山氏のインタビューを放映して以降、一気にSTAP細胞問題が社会問題化した。そのインタビューで若山氏は「研究データに重大な問題が見つかり、STAP細胞が存在する確信がなくなった。研究論文に名を連ねた研究者たちに論文の取り下げに同意するよう働きかけている」と語ったのだ。この時点では若山氏はSTAP細胞の存在については完全否定するような発言はしていない。というのも、若山氏はかつてチームリーダーとして理研で研究活動をしており、山梨大学教授に転職したのちも理研には客員主管研究員として籍を置いており、若山氏が告発した時点では理研は単純な論文のミスと考え「研究の本質的な部分については揺るぎのないものと考えている」と発表していたため、多少理研サイドに配慮したのであろう。
が、その時点から渦中の小保方氏はマスコミの前から完全に姿を隠してしまった。私は3月11日(STAP疑惑が浮上した翌日)に投稿したブログ『小保方晴子氏のSTAP細胞作製は捏造だったのか。それとも突然変異だったのか?』と題するブログに続いて、14日には『小保方晴子氏のSTAP細胞作製疑惑に新たな疑惑が浮上した。彼女はなぜ真実を明らかにせず逃げ回るのか?』と題するブログを投稿している。
この時点ではまったく報道がなかったが、雲隠れしたのは小保方氏だけではなく、笹井氏も姿を見せなくなっていたようだ。当然、報道陣は渦中の小保方氏だけでなく、STAP細胞研究の最高責任者である笹井氏も探し回っていたはずだ。が、二人とも勤務先の理研はおろか自宅にも帰らず、ホテルを転々として姿を隠していたようだ。『週刊新潮』が一度、小保方氏をキャッチして話を聞いたようだが、新聞やテレビの前に姿を現すことはなかった。
一方、いったん「研究の本質的な部分については揺るぎがない」としていた理研は、論文についての精査を続けた結果、4月1日に最終報告を発表、「論文には改ざん・捏造の不正が確認された。取り下げを勧告する」とした。この最終報告を受け、笹井氏は「すでに作成された図表データをもとに文章を書く過程でアドバイスする役割を担っただけで、問題になった図表データの過誤は論文発表前には全く認識していなかった」というコメントを発表して責任を回避しようとしていた。また理研も笹井氏については「責任は重大だが、不正には関与していない」と発表、「組織的な改ざん・捏造ではなく、小保方個人の不正行為」と断定したのである。マスコミの一部から「トカゲの尻尾切りではないか」と、理研の対応に批判が出たのはそのためである。
私はその翌日(4月2日)、『小保方氏ら14人共著のSTAP論文は「改ざん・捏造」だったのか? 論文取り下げには全員の同意が必要』と題するブログを投稿、論文の取り下げ勧告については小保方氏が沈黙を続けている以上「やむを得ない処置と言えよう」と書いた。が、理研の最終報告についてはこう指摘しておいた。
STAP細胞の研究そのものが不正となると、小保方氏の研究者生活は終わりを告げることになる。少なくとも『ネイチャー』に論文を投稿した時点では、理化学研究所の調査対象になった3人(※若山・笹井・丹羽=後述=の3氏)だけでなく、ほかにも10人の国内外の研究者全員が小保方氏の不正研究を見抜けなかったということになる。世界最高権威とされる科学誌に投稿する論文、それも常識的にはありえないとされた発見に、発見者の小保方氏以外に13人もの研究者がいとも簡単に権威づけのために名前を貸したのか、という疑問が生じる。もしそうだとしたら、『ネイチャー』に掲載された論文すべてが疑いの目でみなければならないということになる。しかも小保方氏以外にも『ネイチャー』論文には笹井氏や丹羽氏以外にも理化学研究所発生・再生科学総合研究センターの研究者6人が共著者として名を連ねている。この6人の研究者は一切STAP細胞研究に関係していなかったというのか。理化学研究所の調査対象にすら入っていなかったということは、そういうことを意味する。日本の基礎研究の最高峰の一つとされている理化学研究所では、そうした名前の貸し借りが日常的に行われているとしか考えられない。
理研はSTAP細胞論文を「改ざん・不正」と決めつける一方、STAP細胞の作製そのものもでっち上げだったとは、さすがに断定はしなかった。というのは研究グループを率いた笹井氏が、論文の撤回には同意したものの「STAPを前提にしないと説明が容易にできないデータがある」と主張していたからのようだ。そのため、理研は発生・再生科学総合センターのプロジェクトリーダーであり丹羽仁史氏をリーダーとして検証研究を6人のスタッフで1年かけて行うことにしたのである。ただし、この検証チームからは笹井氏も小保方氏も意図的に排除されている。
こと、ここに至って、沈黙を続けていた小保方氏が反撃に出た。理研に対して不服を申し立てるとともに、マスコミの前にようやく姿を現し、2時間半の反論会見を行ったのだ。その記者会見はほとんどのテレビ局が緊急生中継したほどの過熱ぶりで、私も翌日の4月10日には『小保方晴子氏が反撃を開始した①――STAP現象は証明できるのか?』と題するブログを投稿、翌11日にも『小保方晴子氏が反撃を開始した②――論文のミスは悪意の所産だったのか?』と題するブログを投稿した。
この二日にわたって書いた小保方氏の説明に対して私が感じた疑問は、専門的なことを除けばその後多くの研究者たちが同じく指摘し始めた。
その基本的なポイントは、①小保方氏が200回以上もSTAP細胞の作製に成功しているのに、ほかに再現に成功した人がいないのはなぜか、②STAP細胞を作製するのにはちょっとしたコツやレシピが必要というが、特許の関係で公開できないという主張は説得力に欠ける、③インデペンデントに(小保方氏の研究とは直接の関係がない人の意味)成功したというが、その人の名前を明らかにできないなら信用できない、というものだった。
ところが、こうした批判を受けて14日、小保方氏がかなり説得力がある説明
を文書にしてマスコミに配布した。たとえば①に関しては、研究者の中には「200
回以上もの実験をそんなに短期間にできるわけがない」と批判していた人もおり、それに対して小保方氏は「私は毎日、それも1日に複数回の実験をしていた」とはねつけた。②の「コツやレシピ」についても、「言葉ではなかなか伝えきれないので、再現実験をしている人から協力を要請されれば積極的に協力する」と断言した。③については「迷惑がかかってはいけないので、私の判断だけで名前を公表することはできないが、理研はその事実を知っている」と述べている。ただし、③の成功者について理研は「成功したとは認識していない」と反論している。
そういう状況の中で、カギを握っていると目されている笹井氏が今日午後3時から記者会見をするという。ただ、笹井氏はなぜわざわざ東京で記者会見を行うのか。理研の会見も、小保方氏の会見もすべて大阪で行われてきた。理研の発生・再生科学総合研究センターは神戸にあり、笹井氏の自宅も神戸にある。理研や小保方氏の記者会見に出席したマスコミの記者たちも、大阪勤務の人たちが中心だったはずだ。そうした経緯を考えても、わざわざ東京で記者会見を行うというのはやはり不自然さを感じざるを得ない。ひょっとしたら、理研の官僚的体質に嫌気がさして、理研に反旗を翻す意思を固めたのかもしれない。
実際、笹井氏は万能細胞の一つとされるES細胞研究では世界的な権威者である。京都大学医学部を卒業後、米カリフォルニア大学ロスアンジェルス校医学部の客員研究員を経て、母校の京大再生医科学研究所教授になり、昨年4月に理研に移った。ノーベル賞を受賞した山中伸也京大教授とは宿命のライバルと目されてきたほどの研究者だ。屈辱感を抱きながら理研にしがみつかなければならないような立場ではない。
もし、笹井氏が腹をくくって記者会見に臨むというなら、おそらく理研の承認を得ずに個人的に行うつもりなのだろう。そうだとすれば、これまでは防戦一方だった小保方氏にも追い風が吹きだしたのかもしれない。このブログの冒頭に述べた米ハーバード大学のチャールズ・バカンティ教授が昨日の気管支関連の国際会議の基調講演(テーマは「再生医療と幹細胞」)のなかで「STAP細胞はある」と断言もしている。ハーバード大学教授というだけで世界の一流研究者の折り紙つきのようなものだが、国際会議の基調講演を行えるほどの大人物ということになると、理研が束になってかかっても適いっこない。そのバカンティ教授が講演で小保方氏を名指しで「ボストンに戻ってこい」と呼びかけたというから、風向きが一変するかもしれない。
いずれにせよ、理研への不服申し立てを行った小保方氏が、形勢を逆転すべく自ら開いた記者会見でかえって窮地に追い込まれた感があったが、記者会見での説明が不十分だった部分を補うべく、かなり説得力があると私は認める文
書をマスコミ各社に送付したこと、またおそらく理研があずかり知らない記者会見をSTAP細胞研究の最高責任者の笹井氏が、理研の発生・再生科学総合センターがある関西から遠く離れた東京でわざわざ開くという行為そのものが、今日の会見に並々ならない決意で笹井氏が臨むつもりではないかと思わせるに足る十分な根拠がある。
いずれにせよ、理研が1年かけて行うという小保方氏のSTAP現象の検証研究から、笹井氏も、肝心要の小保方氏も外したことは、もはや理研が日本屈指の研究機関というより、もう救いようがない官僚機構に成り下がってしまったことを意味する以外の何物でもない。笹井氏がどういう発言を今日するかは知る由もないが、理研は会見の前に「急きょ、検証研究に小保方氏の参加を要請することにした」と発表すべきだ。小保方氏を排除しての検証研究の結果など、発表したとたんに「やはり結論ありきだった」と世界の科学界から拒絶反応が出るのは必至である。そういう常識すら失っている理研は、もはや研究機関としてはだれも相手にしてくれなくなる。
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