小林紀興の「マスコミに物申す」

第三の権力と言われるマスコミは政治家や官僚と違い、読者や視聴者の批判は一切無視、村社会の中でぬくぬくと… それを許せるか

安保法案成立の意味を改めて検証する。③ & TPPが発効すればアベノミクスは崩壊する。

2015-10-12 04:12:56 | Weblog
 先週(10月5日)投稿したブログで、政治家や学者が思い込んでいた間違いをいくつか明らかにした。思い込み、とは怖いもので、「ウソも100回繰り返せば、本当だと思うようになってしまう」という格言があるように、100回同じウソを繰り返し聞かされれば、真実であるかのような錯覚に陥りやすい人間の弱さの証左と言えなくもない。
 たとえば安保法制の整備が必要だという安倍総理の「論理」は、二つの前提から成り立っているが、同じ説明を100回以上繰り返されれば、メディアや国民の多くも、つい信じ込んでしまいかねない。そのことを明らかにする。
 一つの根拠は「日本を取り巻く安全保障環境は激変し、一層厳しさを増している。中国の海洋進出や北朝鮮の軍事力強化は、日本にとって脅威だ」というものだ。果たして本当にそうか。
 中国の海洋進出とは、南シナ海にある南沙諸島を埋め立てて軍事基地建設を始めたこと差しているが、この軍事基地(未完成だが)は、日本にとって本当に脅威なのだろうか。南沙諸島と一般には言われているが、最大の島でも面積は約0.5km2しかなく、事実上、人が居住し生活できるような島ではない。例えば韓国に実効支配されている島根県の竹島は2島37岩礁からなる総面積0.2km2ほどの広さで、韓国が実効支配しているというが、そこで韓国人が居住し生活しているわけではない。にもかかわらず韓国が武力で侵略しているのは、広大な排他的経済水域〈EEZ〉に埋蔵されていると考えられている海洋資源や石油・天然ガスなどの権利を国際社会に認めさせるのが目的である。もちろん竹島を日本攻撃の軍事拠点にしようなどとはまったく考えていない。
 実は中国が南沙諸島を埋め立てたのは、韓国のように広大なEEZの確保することだけではない。南沙諸島は南シナ海における海上交通の要所であり、かつ南シナ海の制海権・制空権を握ろうという目的も大きい。そのため中国だけでなく、ベトナム、フィリピン、マレーシア、ブルネイ、中華民国(台湾)がそれぞれ領有権を主張し合って譲らない状況が続いていた。中国だけが南沙諸島の一部に軍事基地建設のための埋め立て工事を行ったかのような主張がなされているが、ブルネイを除く5か国(台湾も含む)が南沙諸島の一部をそれぞれ実効支配しており、軍隊・警備隊も常駐している。中国が南沙諸島を埋め立てたのは、フィリピンが屈辱的な「地位協定」に反発して米軍基地を撤去させ、そのことによって生じた軍事的空白の虚を突いた行為だった。
 安倍内閣は「ホルムズ海峡が機雷で封鎖されたら日本の生命線が脅かされる」などと、現実的にはありえない想定を「集団的自衛権行使」の1ケースとして挙げているが、もし中国が日本に対する敵視政策を取り出したら、ホルムズ海峡が平穏でも南シナ海海域を日本の船舶や航空機が通過できなくなる。ホルムズ海峡をリスクとして考えるなら、中国の南沙諸島埋立もリスクとして「集団
的自衛権行使」の対象にしなければ、論理的につじつまが合わないだろう。中国が日本に対する敵視政策をとり、南シナ海を封鎖することを考慮に入れる必要がないなら、日本を敵視してホルムズ海峡に機雷をばらまく国などありえないことくらい中学生でもわかる話だ。
 もちろん日本に対する敵視政策をとるアラブ諸国がないとしても、政治的にも軍事的にもきわめて不安定な中東地域では、何が生じるかわからないという危惧すべき要素はある。が、そうしたケースであっても、ホルムズ海峡以外に石油を運ぶパイプラインもあり、また数年間分の原油備蓄施設を作る方が、安保法制によってアジア諸国の警戒心をあおるよりはるかに有効だ。
 次に北朝鮮の軍事力強化(ミサイル開発や核武装化)は、日本を敵視した政策ではまったくない。北朝鮮が核不拡散条約機構から脱退して核開発を始めたのは、アメリカがイラン・イラクと並べて北朝鮮を「悪の枢軸」や「ならず者国家」と名指しして敵視政策をとり始めたことがきっかけである。日本は自ら核武装しなくても、「アメリカの核の傘」によって日本は守られていると勝手に思い込んでいるから安心しきっているが、北朝鮮も「いざというときには中国が核の傘で守ってくれる」という安心感が持てたら、多くの国民が貧苦の生活にあえいでいる中で、国民の生活より核開発を重視したりはしない。
 まして北朝鮮は経済再建のためには、日本の資本と技術がのどから手が出るほど欲しいわけで、拉致問題にしても北朝鮮で一般人として暮らしている拉致被害者が見つかったら、とっくに日本に返している。もし生存している拉致被害者がいたら、それは絶対に日本には返せない、それなりの事情を抱えている拉致被害者だ。たとえば北朝鮮の政府高官と親密な関係にあり、国家機密に接しているような拉致被害者がいたら、残念ながら日本に戻ることはありえない。北朝鮮としては、日本に返しても問題が生じない拉致被害者が生存していたら、日本との友好関係を深めるためにも、とっくに返しているはずだ。ただ、そういう結果が生じて北朝鮮から拉致被害者が一人でも帰ってきたら、はっきり言ってアメリカは不快感を示す。日本と北朝鮮が友好関係を結ぶことになったら、アメリカの国益に反するからだ。安倍総理が国益の基軸をどこにおいているのか、さっぱり分からない(ことにしておく)。

 以上、検証してきたことで、安保法制構築の必要性としてきた「日本を取り巻く安全保障環境が激変し、一層厳しさを増している」という現状認識は、まったく根拠のないものだということが理解できただろう。そこまで私は一応検証してきたが、すでに自民・谷垣幹事長が講演会で安保法制の目的について「低下したアメリカの警察力を補うため」と明言しており、また米オバマ大統領も「アメリカは世界の警察ではない」と公言し、軍事費や兵力の大幅な軽減化を
進めていることからも、安保法制の目的は明々白々と言わざるを得ない。「集団
的自衛権行使」を限定的にするため(要するに「歯止め」)として定めた「新3要件」の検証を行う前に、明らかにしておかなければならないことがある。はっきり言わせと貰うと、安倍総理の発言には、具体的説明がない空疎なものが少なくない。
 たとえば「積極的平和主義」。その具体的内容を知っている日本人は、果たして一人でもいるのだろうか。政府要人のなかにもいないのではないだろうか。もしいたとしたら、たとえば自民・谷垣幹事長の講演会での発言のように、政府要人の誰かがついポロッと喋ってしまっているはずだ。が、政府要人のだれからも、「積極的平和主義」とはどういうことなのかの説明がない。
 だから安倍政権の有料広報紙である読売新聞にも「積極的平和主義」の中身が理解できず、韓国のPKO活動に対して武器・弾薬を日本が無償提供しようとしたことを、つい1面トップ記事で「これが安倍総理の言う積極的平和主義なのか」とうがった記事を書いたほどだ。事のついでに、肝心の韓国からは「日本の援助などいらない」と「贈り物」を突き返されてしまったが…。
 いずれにせよ、「積極的平和主義」活動なるものがどういう行為を指しているのか、日本人にはさっぱり分からないが、海外の友好国の政府要人からは「大いに支持された」(安倍総理)ようで、海外の政府要人には具体的中身をたぶん話しているのだろう。ということは、日本人には知られたくないことを海外要人には「絶対口外しない」という約束を取り付けたうえで話しているのかもしれない。海外の政府要人は、「積極的平和主義」の内容も分からずに「大いに支持」したりするほどバカではあるまい。
 また先ほど行われた国連総会で、安倍総理は常任理事国入りを切々と訴えたようだが(アメリカは一応支持する姿勢を示しているようだが、露・中が絶対に拒否権を行使することが分かっているからだ)、安倍総理は常任理事国入りと同時に「安保理改革」も国連総会で訴えた。が、この「安保理改革」も、中身がまったく分からない。安保理をどう改革したいのか、やはり常任理事国入りを目指しているドイツやインド、ブラジルの政府要人には説明しているのかもしれないが、私たち日本人には「何をどう改革したいのか」がさっぱり分からない。「安保理改革」と言えば聞こえはいいが、「積極的平和主義」と同様、中身はまったく空っぽとしか言いようがない。

 それはともかく、憲法解釈の変更によって集団的自衛権を行使できるケース「存立危機事態」についての検証を行おう。いわゆる存立危機事態に相当するケースとは、日本が直接攻撃を受けていなくても、他国(アメリカなど)への攻撃が日本の存立を脅かす「明白な危険がある」と(政府が)考えた場合には、
憲法解釈の変更によって、(72年政府見解では)行使できないとされた集団的自
衛権、すなわち自衛隊の海外での「実力」(武力)を行使できるようにするというものである。で、衆参両院の特別委で議論されたのは、①「具体的にどういうケースが存立危機事態に当たるのか」②「政府の恣意的な判断で自衛隊の海外での実力行使ができるようになる可能性がある」という2点である。
 まず論点が分かりやすい②から検証する。
 野党8党のうち、次世代の党、日本を元気にする会、新党改革は、基本的に安保法案に賛成したうえで「修正案」を参院特別委に提出した。安保法案とは国連平和支援法や自衛隊法改正、PKO協力法、武力攻撃事態対処法、米軍等行動関連措置法など安保法制に関わる10本の法律(改正法を含む)を一つにまと
めた「平和安全法制整備法案」である。政府は国会審議に衆参合わせて220時間を費やしたと主張するが、個々の法律10本に換算すれば、1法案についてはわずか22時間しか費やしていないことになり、国民の圧倒的多数は「審議不十分」と見なしている(各メディアの世論調査による)。
 それほどまでに安倍政権が安保法制の成立を急いだのは、メディアによれば「安倍総理が訪米の際、オバマ大統領に対して今年夏までには法案を成立させる」と約束し、アメリカが安倍総理の約束を前提に軍備を縮小し、かつ兵力も大幅に減少する計画を推進することにしたからだという。アメリカが財政立て直しのために軍事費を大幅に軽減し、そのことによって弱まった米軍事力を補うことが、安保法案成立を急いだ理由だ、といううがった見方もあるが、それを裏付ける公文書はまだ公表されていない。ただ、自民・谷垣幹事長が講演会で「安保法制の目的は低下しているアメリカの警察力を補完すること」と明言したことはNHKがニュースで録画報道しており、谷垣氏の立場からして状況証拠としては相当の重みを持っていると考えてもいいだろう。 
 それはともかく、その時点の政府の恣意的判断で集団的自衛権行使に踏み切る可能性は、だれが考えてもありうることで、そのため次世代など野党3党は、安保法制には反対しないものの、集団的自衛権行使の要件として「例外なき国会の事前承認」を「修正案」として提出したのである。が、参院特別委の土壇場で、この「修正案」を与党がのまなかった。
 与党がのまなかったのは当り前の話で、突然「日本の存立危機事態」(※与党が言う「存立危機事態」を私が認めているわけではない。ただ、そうした状況が生じた場合の現実論として私は書いていることをお断りしておく)が生じた場合、集団的自衛権を行使すべきか否かを長々と国会で審議している余裕などありえない。そんな余裕があるくらいなら、そもそもそういうケースは政府が言う「存立危機事態」に該当しない。たとえば、これは①でさんざん議論されたことだが、日本の防衛活動を行っている米艦隊が他国から攻撃された場合、
自衛隊が米艦を防護すべきか否かを国会でのんべんだらりと審議などしていた
ら、アメリカの日本に対する信頼感は一瞬にして喪失する。つまり、いざとい
う時、アメリカは頼りに出来なくなることを意味する。
 で、与党は国会の「例外なき事前承認」はあくまで拒否し、かといってせっかく歩み寄ってきた野党3党の顔も立てる必要があり、「国会での事前承認を原則とするが、政府が閣議決定などを行うことで国会関与を強化する」という玉虫色の合意で野党3党の支持を取り付けた。しかしこの合意が安保法案に盛り込まれたわけではなく、従って法的拘束力もない。ま、3党のご機嫌を損ねないよう「口約束」というアメ玉をしゃぶらせて、とりあえず与党の単独採決という事態を回避したというのが真相だ。
 野党3党が参院特別委で法案に賛成したため、菅官房長官は「強行採決では
ない」と強調しているが、そう考えているのは菅官房長官くらいで、「単独採決」と「強行採決」を同意語と本当に思っているなら、菅氏は小学校高学年の「国語」の授業から日本語を勉強し直してきなさい。

 次に①の「存立危機事態」というのはどういうケースなのかが、国会で紛糾した。国会審議の大半は、この議論に費やされたと言っても過言ではない。が、ここまでで今回のブログの文字数(実数)はすでに5200字を超えた。私のブログの読者を焦らせるつもりではないが、野党もメディアも理解できなかった安保法制の真実の検証は、次回のブログで書くことにする(続く)。

(追記)実はこのブログは8日には書きあげていた。が、9日にTPP交渉が大筋合意に達したというニュースが流れた。賛否両論が飛び交う中で、どうしても書いておかなければならないことがある。
 いかなる政策・外交も、日本(国民・産業)にとってだけ都合がいい、などということは絶対にありえないという現実を、私たちは基本的発想法として理解しておく必要がある。日本だけでなく、いちおう「民主主義国家」は間接民主主義(代表民主主義とも言われる)を採用している。様々な政策や外交関係のすべてを、国民投票で決定するなどということは事実上不可能だからだ。そのため選挙で選ばれた議員(今回は国会議員に絞って書く)の多数決であらゆる政策や外交関係が決められていく。政策(とくに法律)は一応国会の採決で決められるが、外交関係はほとんどのケースを政府が決めている。これが間接民主主義の最大の欠陥でもある。
 その欠陥は、すべての「民主主義国家」に共通した問題でもある。しかし多くの民主主義を標榜する国では(特に欧米先進国)、日本の国会のような「強行採決」が行われない仕組みにしている。民主主義が絶対に克服できない「多数決原理」の欠陥を少しでも修正しようという試みが行われているからだ。
 その試みとは、「党議拘束」を議員に対してかけないというものだ。たとえば9日に大筋合意に至ったTPP交渉では、主導権を握っていたアメリカで、オバマ大統領が属する民主党が「アメリカの国益が守れない」と猛反発している。自らが属している民主党の支持が得られないため、オバマ大統領は「自由貿易主義」をモットーにしている共和党と手を組むことにした。アメリカがTPP交渉に参加している、主に新興国の主張に大幅譲歩したことによって、TPP交渉は大筋合意に達した。
 こういうケースを日本に当てはめれば、安倍総理が自民党の反対を押し切るため、民主党や維新の党など野党と手を組んで政策を実現することを意味する。が、そんなことは日本ではありえない。いくら安倍総理が強権体質の持ち主であっても、肝心の自民党の合意なくして勝手に安保法制を法案化することなど不可能だからだ。なぜか。「党議拘束」という欧米先進国には見られないシステムが日本では、なぜか採用されているからだ。はっきり言えば、日本の政党は「非民主的組織」なのだ。「物言えば唇寒し秋の風」が日本の議員の鉄則なのだ。
 とくに「政党助成金」などというバカげた政党へのバラマキ制度を作ってしまった結果、日本の政治は「共産主義化」してしまった。政党助成金を一切受け取らない日本共産党は、そういう意味では実に立派な政党といっても過言ではない(誤解されると困るので、私は共産党支持者ではない。その最大の証拠は、私は「護憲派」ではなく「改憲派」であることで十分だろう)。
 それはともかく、TPP交渉の大筋合意に同意した日本は、たいへんな政策矛盾を抱えてしまった。そのことに気付いているメディアも政治家も、残念ながら皆無である。
 安倍政権が誕生したのは2012年12月の総選挙の結果である。安倍内閣は日本経済再建を最大の政策目標に掲げ、国民も大いに期待した。が、この時点での安倍内閣の経済政策は「3本の矢」ではなく二つだけだった。
 一つはデフレ脱却のための「大胆な金融政策」、つまり日銀・黒田総裁による金融緩和と円安誘導によって、日本産業界(輸出産業)の国際競争力回復を目的にしたものだった。結果、自動車や電気など輸出メーカーは史上空前の利益を計上したが、輸出量(例えば自動車の輸出台数)はまったく回復しなかった。輸出メーカーが史上空前の利益を計上できたのは、円安による為替差益が大幅に増えたからにすぎなかった。つまり「国際競争力の回復」という本来の目的から考えると、「大胆な金融政策」は完全な失敗に終わったことを意味する。
 二つめはバラマキ公共工事による、経済活性化と雇用の増大を目的とした「機動的な財政政策」である。その結果、建設業界は、やはり史上空前の利益を上
げたが、あらゆる建設関連事業のコストが膨大に上昇し、入札ゼロの公共工事計画が続出し、予算は計上したものの発注できないという事態が全国各地で生じた。その典型が、新国立競技場が建設できないという事態を生み、予算を再編成して白紙から計画をやり直すという、みっともない状態が生じたことは、国民すべてにとって周知の事実である。この計画を推進した文科省の責任者は、それなりに責任をとらされたが、最高責任者である元総理は居座り続けている。
 安倍政権が誕生したときの経済政策は、この2本柱だけである。後に「アベノミクスの3本の矢」と称されるようになった3本目の矢である「成長戦略」なる魅力的なキャッチフレーズは、2013年4月19日に行われた日本プレスクラブでの安倍総理の会見が初出とされている。が、この時点では「成長戦略」なる政策は、誰にも中身がまったく分からなかった。「積極的平和主義」や「安保理改革」と同様、内容ゼロのキャッチフレーズでしかなかった。
 また、成長戦略なるキャッチフレーズは安倍総理が考え出したものですらなかった。2009年7月の総選挙で歴史的な大勝によって誕生した民主党政権(鳩山内閣)が、政権獲得後に「規制緩和」などを柱にした「成長戦略」というキャッチフレーズを打ち出している。成長戦略などという言葉は、おそらく特許庁に出願しても「商標登録」は出来なかっただろうが、少なくとも民主党時代につくられ、すでに手垢がついた言葉を「アベノミクスの3本の矢」と誇らしげに語るのは、一国の総理としていかがなものか。
 さて、TPP交渉の大筋合意問題に戻る。もうすでに7500字を超えているので、このブログでは要点だけ述べることにする。詳しい分析と検証は、加盟各国が批准して発効が確実になった時点で行う。
 さてTPPが発効すれば、当然のことだが輸入食料品の価格は軒並み下落する。つまり、少なくとも食料品に関しては「超デフレ」が始まることを意味する。家計の支出に占める食料費の割合である「エンゲル係数」が、食料品のデフレ下によってどう変化するか、今後の経済政策を考える上で極めて重要な要素を占めることになる。
 実は14年度の日本のエンゲル係数は24.3%に達し、21年ぶりの高水準になったことが総務省の調査で明らかになった。エンゲル係数は家計のゆとり度を示す基準値で、数値が高いほどその国の生活水準や文化的生活レベルが低いとされている。つまり、日本のエンゲル係数が急上昇したということは、日本人の生活水準が下がり文化的生活レベルが低下したことを意味する。
 その理由は、はっきりしている。14年4月の消費税増税と、政府・日銀の円安政策によって輸入食料品が高騰し、その結果、購入を減らすことが出来ない食料品に対する支出が増大したためだ。
 もう一つ、重要な指標がある。日本人の人口構成だ。安倍総理は「アベノミ
クスの新3本の矢」を掲げ、政策の軸足を「日本の安全保障環境の再構築=日
米同盟の強化による抑止力の向上」(安保法制)から、再び経済政策に移そうと
している。このブログでは「新3本の矢」の検証をする余裕がないので、後日
行うことにするが、安倍総理は「希望出生率1.8」を掲げている。公約ではなく「希望」にすぎないから、どうせなら「希望出生率2.5」くらいの大ボラを吹いてみたらどうか。どうせホラを吹くなら、でかいホラのほうがいいぜ。
 真面目な話に戻る。つい最近5年ごとの国勢調査が行われた。まだ正確な統計数値は出ていないが、総務省が推計した今年9月1日現在の日本人の人口総数は1億2685万人。年齢別の内訳も公表されているが、あまり細かい数字を並べても意味がないので、大きく3段階に分ける。
●0~19歳…2207万人(日本人総数に占める割合は17%)
●20~64歳…7098万人(同56%)
●65歳以上…3380万人(同27%)
 いちおう大雑把に、日本経済を支えている人口を20~64歳とすると、ほぼ一人が一人の子供や高齢者の生活を支えていることになる。実際に何らかの仕事をして、その報酬として収入を得ている人は全人口の40%に満たないのではないかと考えられる。TPPが発効したのちの猛烈な食料品デフレを、金融政策で防ごうとすれば(少なくともアベノミクスの金融政策は円安誘導に軸足を置いている)、180円くらいまで円を売り続ける必要があるかもしれない。日銀も、日本財政を破滅させるような金融政策を実行できるだろうか。私はエコノミストではないから、緻密な計算はエコノミストに任せるとして、論理的な考え方を示すだけにとどめる。今回のブログも長文になってしまい申し訳ない。