迷宮映画館

開店休業状態になっており、誠にすいません。

イタリアとシチリアについて

2010年02月13日 | お勉強コーナー
イタリアとシチリアについて。

映画『副王家の一族』の最後、主役のコンサルヴォが第一次世界大戦後の議会のあたりから「イタリアはできた。イタリア人ができるのはいつか?」とつぶやくが、映画を見る限り、イタリア統一の生みの苦しみ・・・を描いたようには、感じなかった。

しかし、イタリアという国、またシチリアという島の歴史を見ると、非常に面白く、また興味深いものがある・・・・。ということで、勝手にイタリア&シチリアについて。

さて、イタリアは、ご存じのように古代ローマ帝国として、一世を風靡した大帝国を作った人々を祖先に持つ。それはイタリアにとっては、非常な誇りであり、自分らがヨーロッパの尊敬されるべき民族、あるいは文化の継承者であるとの自負を持っている。

しかし、ローマ帝国崩壊後のイタリアの様子からは、なかなかその誇り高き民族として生き方ができてこなかった。その辺が、「イタリア人ができない・・」につながるのでは。


古代ローマは紀元前8世紀ごろに、ロムルスとレムスが建国したという伝説から始まるが、その後、貴族と民衆の政治闘争の末に、共和制の国家が成立する。この共和制が成立したころから地中海方面に領土的な展開を広げていく。

その先駆けとなったのが、シチリアである。

シチリアは、イタリア半島のつま先の先にある島で、まるで長靴のさきっちょで、けっぽられているような場所にある。場所はそのまま、中身も表わしていて、そこに住む人々は、ずっと各所から蹂躙され続けてきた。

歴史はローマよりも古いが、イタリア半島の対岸のアフリカとも近いことから、地中海の要所である。アフリカ側には、当時地中海一繁栄を誇ったカルタゴがあるが、カルタゴとローマがシチリアをめぐって相争ったのがポエニ戦争である。

カルタゴのハンニバル将軍が活躍するのが、この戦争だが、ローマが勝利。シチリアはローマのものとなり、ローマが大帝国を作る最初の属州となる。その後、500年くらいは、安定した時代を送るが、ローマ帝国が崩壊すると、イタリアとともに、苦難の歴史をたどることになる。

イタリアは、ゲルマン民族の移動の際に、東ゴートや、ランゴバルトに支配され、次々と国名が変わる。9世紀になって、カール大帝の治世のときに、フランク王国に北部は組み込まれるが、南部はいくつかの国に分かれたままだ。ちょうど半島の真ん中あたりにローマがあって、そこは教皇領として、ある意味聖域になる。この辺が、北部と南部を分けやすくしている要因かもしれない。

11世紀に入ると、スカンディナヴィア半島に住んでいたノルマン人が、どんどんと南下してきた。いわゆるヴァイキングの方々である。彼らは、フランスのとっ先を占領し、果てはブリテン島まで征服し、さらに地中海まで進出して、シチリアをいただいてしまう。さすが、ヴァイキング。

シチリアは次々とご主人さまが変わり、イタリアは、まとまらないことこの上ない。

11世紀から13世紀にかけて、十字軍が派遣されるが、それはキリスト教側が敗北し、自分らの程度の低さを暴露したようなもんだったが、東に活路を開いて、貿易に目をつけたのは、イタリア各都市の商人だった。

ヴェネツィア、ミラノ、ジェノヴァ、ピサ、などなど、そしてかのフィレンツェ!!東方貿易で潤ったイタリアの商人たちは、国としての統一の必要などないくらいに儲ける。自治が可能だった。

その後、大航海時代に入ると貿易の中心地はイタリアの各都市から移り、繁栄は下火になるが、それでも国家としてまとまろうという気風はなく、それぞれが独立国家として運営されていた。

それを一つにまとめてしまったのが、かのナポレオンである。ナポレオンの第一歩もイタリア遠征から始まるが、彼によって外からとはいえ、一度まとまったイタリアは、統一を目指す運動が勃興する。



ナポレオンのアルプス越え


ナポレオンの時代が過ぎ去ったあと、ヨーロッパはまたもとの秩序に戻るが、統一運動を推進する動きは徐々に大きくなる。カルボナリの活動などが有名だ。それらの運動は、うまくいかず、大体が失敗に終わるが、それでも挫折してはまた起こる!!を繰り返していく。

そして、独立運動家のガリバルディが、シチリアに上陸。シチリアを征服し、統一運動の旗手となっていた隣の島のサルディーニャ王に、シチリアを献上したのが、この映画の舞台の頃だ。



ガリバルディ




それまでシチリアはスペイン・ブルボン家の支配下にあった。そこをイタリア人の手に取り戻し、イタリア統一の一つの試金石とする。シチリアにとっては、またご主人さまの首がすげ変わっただけで、何が変わろうか・・・という思いだったのではないか。

長い苦難の歴史は、さまざまな支配者によって、搾取され、蹂躙されてきた。それも地理的に恵まれていたため。頼れるのは自分たちだけ。家族を大事にし、一族の結束を何より大事にし、家長を中心に家柄を重んじる風潮になったのも当然のことのように思う。

それが行き過ぎて、マフィアになってしまったわけだが・・・。

この時、イタリアはほぼ統一されるが、ドイツとオーストリアとの国境にまたがる地域の帰属が決定せず、【未回収のイタリア】としての問題が残った。その未回収の問題を解決したのが、映画の最後の1919年の第一次世界大戦後のヴェルサイユ条約での決定となる。トリエステ・南チロル・イストリア地方は、イタリアに割譲され、イタリアという国が、確定したのだ。

国はまとまったが、それぞれの地方に住む人々は、ぞれぞれの地方に対する帰属意識の方が強い。シチリアの人は、自分たちはイタリア人であるよりも、まずシチリア人であると思うのであろう。

最新の画像もっと見る

8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (cochi)
2010-02-13 23:20:20
ご講義ありがとうございます。
単発的にイタリアのことは知ってるくせに、イタリア史となると、ほとんど流れがめちゃくちゃになる、それがイタリアです。
かっては日独伊三国同盟を結んだほど国なんですけどね。まぁ、向こうはこっちのことは全く知らんでしょうね。
返信する
さすが^^ (latifa)
2010-02-14 16:09:35
sakuraiさん、こんにちは。
さすがsakuraiさん~~!
もしかして歴史の先生でいらっしゃるのかな・・・。
私は、学校で習ったり、映画を見たりした時とかに調べては一瞬解ったつもりになるのに、またすぐ忘れて・・・の繰り返しです。
最近では、ヘタリアっていう漫画も読んだりしたんですけどね・・・。どうもガツンと良く解ってないみたいでお恥ずかしい限りです。

それにしても、イタリアはじめヨーロッパの国には、何度も支配者が変わる・・という経験をしている国がありますよね。

イタリアには昔から旅行に行ってみたい・・って憧れてるのに、まだ行けてないんです。南北で雰囲気が違うのも魅力です。
隣町にあるシチリア料理のレストランにたま~に行く位が私のささやかな楽しみ?ですかね(^^ゞ
返信する
>cochiさま (sakurai)
2010-02-15 11:04:50
恐れ入ります。勝手にやってます。
自分なりの解釈も入ってますので、ぜひ参考程度に。
南北に細長く、地震も多いし、火山もある。
政権も変わりやすくて、似たような国と言われてもいましたが、こっちのことは、どう思われてんでしょうね。
返信する
>latifaさま (sakurai)
2010-02-15 11:09:08
どうもおお。
そうです。本職は、それです。
もともと日本史が専門だったのですが、世界史をやらされるようになって、そっちが主になってる今日この頃ですわ。
あたしも最近は、忘れてばっかり。
自分でお勉強コーナー見てみたら、すでに「シチリアについて」なんて、書いてましたモン。アチャーの毎日ですわ。

イタリアには、ぜひ行ってみたいですね。あの歴史は半端ないですから。
おぉお、シチリア料理のレストランがあるのですか!!それはいいですね。
この映画に出てきた料理もいろいろとおいしそうでした。
返信する
感謝〓 (とよえつ)
2010-02-16 13:31:42
うわーっ!
うれしー!!!
歴史講座のブログ版ですね!
確かに、背景がよくわからないんでした。
でも、さすがです!
また是非お願いします!!!
期待してます(負担かけます)(≧∀≦)
スミマセン。
返信する
>とよえつさま (sakurai)
2010-02-16 15:41:23
ご無沙汰してます。
映画見てますか!!
こういうの見ると、余計なこととは思いつつ、つい書いてしまいたくなるのが、性分で・・。
喜んでいただけると、うれしいですわ。
励みになります。
返信する
勉強になります! (オリーブリー)
2010-02-26 18:35:18
世界史苦手なんですよぉ~。
ヨーロッパは特に複雑で、どこがどうだったかすぐ分からなくなっちゃいます(汗)
「副王家~」の最後の言葉は印象に残りましたね。
「ゴッドファーザー」でもシチリア人を強調していたような覚えがあるのですが…

オリンピックもいよいよ終わりですが、たくさんの国名に触れる中、世界地図さえごっちゃごっちゃです(滝汗)
またご教授願います(笑)
返信する
>オリーブリーさま (sakurai)
2010-03-01 22:58:33
長年やってますが、「世界史!大好き」って言う人には、あまりお目にかかったことがないです。たまにいるけど・・。
あんな複雑怪奇な世の中を覚える方が変ですから。あたしも、長年やってきたもんで、自然に頭に入っただけです。
仕事だもんね。
まあ、映画見るときに背景がわかってる見れるという特典がたまに役に立ちます。
「ゴッド・ファーザー」なんか、もろにそうですもんね。
あれの前の時代を描いた「ギャング・オブ・ニューヨーク」なんかも、えらく面白かったです。
返信する

コメントを投稿