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十字軍のころのヨーロッパって その2

2010年12月12日 | お勉強コーナー
いよいよリチャード1世の登場です。
リチャードは、ヘンリの息子。どうやら勇猛果敢、戦争大好きな自分を常に戦いの場においていたい・・・という人物だったようです。

当時の王様には、ニックネームがついていましたが、この人は『獅子心王』!獅子の心を持った王。ここからどんな奴だったかは容易に想像がつきます。



リチャード1世(1157~1199)在位1189~1199


ちなみに、ノルマン朝初代王となったウィリアムは『征服王』、次のジョンは『欠地王』。

リチャード1世は、悪名高い3回目の十字軍に参加して、その名をとどろかせます。紳士のイスラーム教徒を残虐に殺したなどという逸話も知られていますが、いろんな国から集めっているだけあって、十字軍自体もまとまったもんではありません。



帰り道、リチャードはオーストリアで足止めをくい、捕えられ、故国は多額の身代金を払ったなどということもありました。ジョン王の時に、国庫にさっぱり金がない・・というのもほとんどは、リチャードが戦いに金を使ったり、身代金だったりと、ジョンの失政ばかりをあげつらうのも、かわいそうな気もします。

リチャードの政治能力はどうか言うと、まるでわからない。10年の治世のうち、国にいたのは数カ月。そして戦いの場で死んだ。国民にやたら税金をかける王様より、勇猛に戦ってる王様の方がそりゃ格好はいいのですが、実際に政治を行っていたらどうであったでしょう。

長いこと戦争に行ってる人にありがちですが、リチャードは男色の気があったのではといわれております。後継ぎがいません。後継ぎのいないまま、亡くなり、次なる王は、弟のジョン。イギリス歴代の王の中で、一番不人気、人望なし、失政続きで、悪名高いジョン王です。



ジョン王(1167~1216)在位1199~1216


映画の中でもかなりぼろくそに描かれておりましたが、実際国庫は火の車で、どうにかしなければならない状況には違いない。その火の車状態を作ったのは、兄のリチャードなのに、なぜに自分が税金を取り立てようとすると、非難されるのか!!と思う気持ちはわからないでもない。

もうひとつ彼の人気を落としたのが、フランスとの戦いで負けてしまったこと。不人気な政治を一気に挽回するのにもっともいい方法は戦争に勝つ!!これが一番。しかし、フランスとの戦いに敗れ、大陸にあった領土を失ってしまいます。失政続きのジョンに、前代未聞のことが起こる。これがかの有名な≪大憲章≫(マグナ・カルタ)を国民からつきつけられる!!

本来ならば、失政続きで、王としての責任を問われ、その座を降りるべきところを、王の権利を制限することを認める・・・ということで、王の座を守った、というものです。
貴族たちの承認なくして、勝手に課税してはならないとか、具体的な内容はいろいろとありますが、王であっても法のもとにあるのだ。。。という原則をうちたてたものが、≪大憲章≫です。

この原則は800年近くたった現在も生きていて、法の支配や、法の歴史、イギリスの不文憲法の勉強の時は、必ず登場するのが、これです。

さて、1215年、ジョンはいったん≪大憲章≫を承認しますが、その後すぐに反故にします。彼のことですから、全く驚きませんが、貴族たちは当然ながら一斉に反発。その騒乱の中、ジョンは赤痢で死んでしまいます。

あとを継いだのが息子のヘンリ。こいつもおやじ似で、≪大憲章≫を認めない。そこから貴族たちが立ち上がり、貴族たちによる話し合い、いわゆる議会が始まります。イギリスの議会は、700年以上の歴史を持つもんで、議会大好き、何より議会を重んじるという考えは、この長い歴史によるもんでしょう。

さて、ロビンフッド。これは実在の人物ではありませんが、こういう人物が生み出される要因はあるわけです。それはイングランドのあった≪森林法≫というもんが、背景にあります。

ノルマン朝以来、厳しい規制が敷かれ、森林法によって、農民たちは、土地を取り上げられ、森で自由に狩猟などが出来なくなっておりました。代官は地方政治に大きな権限を持ち、彼らの不正や圧力は半端ない。今回の代官は、弱めでしたが、いつものロビンフッドの大いなる敵は代官で、この映画はその前段階のようです。

また、教会も蓄財に一所懸命で、農民からしてみると、神の使いとは到底思えないとんでもないやつら・・・。ということで、この時代、最下層にいて、とことん苦しめられていた農民たちの不満のはけ口が英雄、ロビンフッドを生み出したのですが、農民の代弁者という性格は、少々薄めだったのがラッセル@ロビンだったように思えます。

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6 コメント

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Unknown (KLY)
2010-12-12 22:04:23
「ひとにひとこと(1215)マグナ・カルタ」なんて暗記したなぁと。(笑)
いや歴史の解説面白く読ませてもらいました^^
結局必要に応じて出来た議会、そしてそれ故に700年の歴史を持つ。これは日本も含めそれを形から真似し始めた国々とは根本的にちがうもんなんだろうなという気がしました。
自ら作り出した、自ら勝ち取ったものを簡単に放棄するようなことは出来ないですもんね。
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Unknown (エクスカリバー)
2010-12-13 21:24:51
この頃の話は興味があって、例えば佐藤賢一さんの『英仏百年戦争』なども何度か読み直したりしているのですが、どうにもこうにもややこしくて閉口しています。
同一人物が名前を変えて出てくるというのは、日本人的には馴染めませんねえ(苦笑)。

でも、こうやって映画を絡めたりすると、より分かりやすくなりますね。
是非、「映画で学ぶ世界史」とか、そんなようなものを執筆して下さいませませ。
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>KLYさま (sakurai)
2010-12-14 14:41:26
日本だったら、鎌倉時代ですからね。
よく引き合いに出すのですが、今も御成敗式目が生きてるようなもんだ!なんてね。
イギリスの議会の歴史の重さと、それに対する思い入れは、他のどの国のものとも違うもんなんだなあと痛感します。
やっぱりこの辺のいざこざは、面白い!歴史はやめられないです。
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>エクスカリバーさま (sakurai)
2010-12-14 19:44:41
おぉ!佐藤賢一さんですか!
同郷です。
あたしよりだいぶ若いんですが、大学の後輩です。って、あっちは全然知らないですが。
なんかねちっこいんですよね、あの文章。
何冊か読みましたが、どうも肌にあいませんでした。

名前の意味なんかも念頭に置きながら、いろいろと読み解いていくと、面白いかもですね。
うーん、いずれ書きたいもんです。
だと、もっともっといっぱい勉強せんならんと・・。きついわ。
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お勉強に…… (hori109)
2010-12-19 16:08:04
……なりまくりです。
昨日は「大脱走」を見たんですが、独立記念日にいかにもヤンキー兵士なスティーブ・マックィーンが芋焼酎をつくり、みんなにふるまいます。
喜んだイギリス将校たちは
「サンキュー植民地!」
獅子心王時代は蛮族だったのに、第二次世界大戦下ではこんな苦いユーモア爆発。
ほんとおもしろい国民です。
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>hori109さま (sakurai)
2010-12-21 07:51:20
「大脱走」!!!
さいこうっすよね。
私の生涯のベスト10にかるく入ります。
マックィーンがとにかく格好いいんですが、あたしはデビッド・マッカラムが好きなんですよ。
助かるのと、助からないのと分かって見てるもんで、もう最初っから、思い入れたっぷりで見ちゃうんですよね。
その「サンキュー!コロニー」とかいうんでしたっけ。7月4日の記念日のことだったのでは。
以前ソラリスの大画面で上映したんですが、まじに最高でした。
その昔、うちの息子に「まじに格好いい男を見ろ!」と言って、無理やり見せたことがあります!
「グレート・エスケープ」談義でした。
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