迷宮映画館

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南北戦争について

2012年11月03日 | お勉強コーナー
さて、南北戦争です。
映画でも、たくさん描かれてきた南北戦争。古くは、超有名な「風と共に去りぬ」、名作「グローリー」、隠れた逸品「楽園をください」、何気に好きなのは「ジャック・サマースビー」と、いろいろとあります。何と言ってもアメリカ歴史上、最大の被害をもたらし、犠牲者の数も、他の戦争の比ではない最悪の戦争。アメリカ人にとって、大きなトラウマである戦争であると。

原因はもちろん、奴隷制度に対する相違が大きなものですが、それだけではないと言うように、その昔お勉強したのではと思います。ということで、少々アメリカの歴史のお勉強を。


☆新大陸発見
 コロンブスがインド目指して西に旅立ちをしたのは、1492年。ほとんど、勝つ見込みのない賭けに出たのだったが、ここで賭けに勝ったのはコロンブス。彼が到着したのは、サン・サルバドル島(もちろん、そんな名がついていたわけはない)で、インドではもちろんないし、アメリカ大陸でもないのだが、明らかにヨーロッパ人にとって、新しい時代の幕開けとなったことには、違いない。その際、パトロンになったのはスペイン。その後、スペインは新大陸に足を向けるようになった。しかし、そこを新たな居住地に積極的にしようと言う気はなく、ひと山当てようとか、金を探す・・・と言うのが主な目的であった。

それはイギリスも同じで、神の教えを伝えに行く!などという崇高な目的はなく、怪しげな山師たちが、うようよいた。超危ない地。それが大きく変わったのがピルグリム・ファーザーズ達の渡航となる。


☆イギリスの植民地化
 16世紀末、エリザベス1世の時代、スペインはアルマダの海戦(1588年)で負け、世界の覇権も大英帝国に移っていく。イギリスもご多聞にもれず、人山当てようと言う輩が新大陸に渡っていた。あんな危ないところ、誰も行きたくない。しかし、エリザベス1世の死後、ジェームズ1世が王となり、様子が一変する。
 
スコットランドから突然イングランドの王になったジェームズ1世はピューリタン(新教徒のこと。特にカルヴァン派のことをイギリスでピューリタンという。清教徒ともいう)嫌い。迫害されたピューリタンは、船で新大陸への移住を決意した。今までの新大陸へ行った連中とは、明らかに気持ちが違う。新大陸に骨を埋める覚悟だ。この連中を【ピルグリム・ファーザーズ】(巡礼者の始祖)と呼ぶ。

最初に渡った人々の生活は苛烈を極め、ほとんどが亡くなってしまったという。この時のことは「ニューワールド」(テレンス先生作)や「ポカホンタス」などの作品がある。その時に助けてくれたのが、当然ネイティブ・アメリカンの人々。彼らを救ったのが、かぼちゃ。サンクス・ギビング・デーのかぼちゃ、一連の感謝祭から、アメリカ風お盆のお祭りにかぼちゃを大いに食べるのは、その時のお礼の意味。


☆アメリカ独立
 18世紀までに、続々と移民がやってきて、東海岸は重要なイギリスの植民地になっていた。一番最初に住みついた、W(白人)AS(アングロ・サクソン)P(プロテスタント)、いわゆるWASPがアメリカで一番幅を聞かせているのは当然だ。後発の移民は、それなりの順番で、アメリカほど綺麗に序列立っているところもないと言われる。移民同士はコミュニティを作り、あまり他との交流はない。よって、人種は混ざり合うことなく、モザイク状態。アメリカの場合は、【人種のサラダボール】と言われる。

東海岸に出来た英植民地は全部で13。本国としても、自分達でうまくやってるんだから、適当にうまくやってくれと、自治を認め、植民地人たちもある面、自由にやっていた。それを大きく変えたのが【七年戦争】(1756年~1763年)と言われる、イギリス対フランスの植民地を巡る戦争である。

ヨーロッパでも行われた一連の戦争をこういうが、その中でもアメリカで行われた戦争が一番ひどく、【フレンチ・インディアン戦争】と言われた。

ちなみに、戦争には、負けた方の名称がつくことが多い。◎◎◎対●●●戦争と言った場合、長い時は、あとの●●●が残る。それが負けた方だ。

この場合は、イギリス・インディアン対フレンチ・インディアン戦争。ネイティブ・アメリカン達は、部族ごとに両方の側について、自分達の益になるために、一緒に戦った。と言うことは、負けたのはフレンチとインディアン連合軍と言うことになる。この時の様子を描いたのが、かの名作!「ラスト・オブ・モヒカン」だ。

映画でも描かれていたが、ものすごい金のかかった戦争で、イギリスの国庫もきつくなった。もっとも、さらに傾いたのがフランスで、これがフランス革命の大きな原因だ。

戦争は植民地のためにしたこと。戦費の穴埋めをするのは当然だ!ということで、本国は次々と植民地側に課税をした。植民地側も黙っていない。自分達のことを決めるのなら、本国の議会に自分達の代表を送らせろ!と要求した。しかし、それは受け入れられず、課税をしてくるばかり。

ここに来て、植民地側はイギリスから独立すべきであるとして、独立戦争が始まった(1775年)。「パトリオット」がその時のことを描いている。当初、劣勢だった植民地側は、ヨーロッパ各国からの有形無形の支援を受け、形勢逆転。1783年にイギリスはアメリカ独立を認め、アメリカは合衆国として、歩み出す。


☆草創期のアメリカ合衆国
 もともとバラバラだった合衆国は、ステイツ毎(日本では州と訳してしまったが、ステイツはあくまで国だ)の自治を認め、各々が強い独立性を示していたが、ある程度のまとまりがないと、出来あがったばかりの国としては、体裁が整わない。要するに、他国からバカにされてしまう。なんせ出来あがったばかりのよちよちな国だ。アメリカは出来あがった時から、波乱含み。あくまで連合にこだわるフェデラリストと、州の自治性を強調したい、反フェデラリストの二つが並んで始まった。

反フェデラリストは、その政党名を民主共和党という。この党はその後、二つに分かれ、民主党と共和党になる。あの二つの党は、もともと同じだったのだ。国の基礎が固まり、フェデラリストの役目が終わると、フェデラリストは消滅。対立していた相手がいなくなった民主共和党自分達が分裂して、対立することになった。

この辺から、アメリカの西部開拓がはじまる。フランス領だったルイジアナを買収し(買った相手はあのナポレオン!)、いよいよ西に手を伸ばして行く。「大草原の小さな家」は、その頃の西部開拓の古き良き時代の象徴みたいな話だ。ニコール・キッドマンとトム・クルーズの仲のよかった時の「遥かなる大地へ」は、アイルランドの移民が、新しい土地を得ようとする話だ。


☆南北戦争への道
 新しい州がどんどんと出来ていく。1850年ごろには西海岸まで到達し、アメリカのフロンティア(辺境・・人が住んでない未開の地。ちなみにネイティブ方々は、ちゃんと住んでいた)は、消滅した。アメリカは東西にも長いが、南北にも長い。気候の違いや、住んでいる人の気質の違いなどから、はなっから経済体制が違っていた。北は新興の工業地域。南は、プランテーションを利用した集団農業だ。綿花やタバコなどを作っていたが、奴隷の労働力がなければ成り立たない。一方、工場などに従事する労働者が多い北では、安い労働力の奴隷がいると、自分たちの仕事がなくなる。

さらに、自分達の未熟な工業品は、産業革命真っ最中のイギリス製品に太刀打ちできるはずがない。自分達の製品を売るためには、保護貿易でなくては困る。北はあくまで保護貿易。農産品を売るためには自由貿易を望む南。百八十度違っていた。

南は奴隷が必要、北は必要ない。奴隷廃止か否かではなく、必要かどうかが問題だった。州が増えて行くたび、その州は、奴隷を認めるか、否かの選択を強いられた。北からと南からの強い圧力を受け、新州はどちらかを選択する。南北の亀裂が大きくなっていった。

1820年、南北の亀裂をなんとか収拾するために、ミズーリ協定が結ばれる。ミズーリを奴隷州にするが、以後は北緯36度30分以北には奴隷州を認めないとした。そのとき、奴隷州が11州、自由州は11州であった。



その後、テキサスがメキシコから独立を宣言すると、1845年にアメリカの州となる。領土の拡大を望むアメリカは、メキシコとの国境線の問題をきっかけに、メキシコを挑発。1846年、アメリカ-メキシコ戦争が始まる。結果はアメリカの完勝。カリフォルニアとニューメキシコを獲得することになる。この辺は「レジェンド・オブ・ゾロ」なんて言う映画で、ちゃんと描かれていた。

カリフォルニアが準州から州に昇格する際、「1850年の妥協」といわれる出来事が起こる。カリフォルニアは南に位置しているので、ミズーリ協定で行けば、奴隷州になる。しかし、新たにアメリカに加わる地域に、あえて世界的に非難を受けつつある奴隷制を入れるべきなのか。そこで、カリフォルニアを自由州とする代わりに、北に逃げた逃亡奴隷を厳しく取り締まる権利を南に与える事にした。これが「1850年の妥協」というもの。

問題を明確化せず、うやむやにすることによって、なんとなく~と言う状態でうまくいきそう・・な時に「カンザス・ネブラスカ法」が成立する。これはミズーリ協定を廃棄し、奴隷州かそうでないかは、その州の住民に任せられるというもの。またぞろ問題が再燃する。世の中には平和的に物事を解決しようとするものばかりではなく、暴力的に誇示したい人がいっぱいいるのだ、悲しいことに。


☆リンカーンの登場
 対立がはっきりとしてきたころに、大統領に就任したのがエイブラハム・リンカーン(1860年)である。彼の持論は、とにかく連邦を維持すること。奴隷に関しては、当然反対論者であったが、強硬な!と言うほどではない。しかし、この時、南部諸州はアメリカから独立を宣言してしまう。アメリカ連合国である。

アメリカ連合国の国旗・・・レベルフラッグと言われ、ボスニアの紛争などでも、盛んに用いられた。



絶対に分裂を許すわけにはいかない。そうやって始まったのが、南北戦争(1861年~1865年)であり、アメリカの戦争史上、最大の犠牲者を出した。死者の数はおよそ60万人。(ただし、正確な数字はわかっていない)最大の犠牲者を出したゲティスバーグでは、南北合わせて、2万3千人を超えた。その戦死者への追悼演説が、かの「人民の人民のよる人民のための政治」だ。この部分だけフィーチャーされるが、実際の文章には、「この政治を地球上から無くさないために!!」と続くのでした。「87年前~」から始まる有名な演説だが、もちろんそれは独立戦争のこと。民主主義の理念を表現する言葉と言われているが、なぜか今回の映画の中で聞くと、相手はヴァンパイアでもおかしくないのが面白い。

さて、戦争は北部が経済力で勝利し、合衆国の分裂を回避した!ということになっている。そして再選されたあと、南部出身の俳優に狙撃され、命を落とすこととなった。それが 映画冒頭の1865年4月14日である。


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6 コメント

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せんせ~い! (マリー)
2012-11-04 23:09:56
こんばんは~~♪
すごい~!お勉強になりました~~~。
とっても分かりやすい授業だ!
「風去り・・」は大好きだったし~「楽園をください」も好きなんです。でもなんで南と北とそんなに争わなきゃいけないんだろう・・・?よく分からなかった。
そういうことだったのですね~。ハロウィンのかぼちゃにもそんな意味があったんだ・・・なるほど~です。

そしてオバマが大統領になったって、そんなに凄いことだったんだ。

私って無知だ~って思うことが最近多いこと多いこと。
今更人に聞けないってことも多いし(苦笑)
sakuraiさんのお勉強コーナー、大好き♪
ありがとうございます~。
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おはようございます。 (みぃみ)
2012-11-05 10:12:27
ずっと前、竜也くぅぅん(←藤原)に会いに、三浦按針なる作品を観た際、
日本にやって来ている外国人同士、プロテスタントだカトリックだと対立し、ごちゃごちゃ揉めて、
いつの間にやら日本鎖国という話が謎だったのですが、こういう背景もあったんだ~と。。。

リンカーンは奴隷解放と民主主義を提唱したすごい人、米国は、南は農業、北は工業。と、記憶していただけの情報に息吹が~♪。

ありがとうございます(^^)。

戦争の名称の付き方、目から鱗でした~。

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>マリーさま (sakurai)
2012-11-09 09:40:48
御清聴、ありがとうございます!
皆が皆、興味あるわけでもないですし、少しでも知りたいよおお、と言う方のためになればとっても嬉しい。
これで「楽園をください」を思い出して、ついぽちっとしてしまいました。。。
ビデオ持ってるのに。

さすが、アメリカ。
映画だけで、新大陸発見から、ここまでの歴史をたどれるってのも面白いですよね。
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>みぃみさま (sakurai)
2012-11-09 09:51:38
カトリックとプロテスタントの違いやら対立やら、他国への影響やらも面白いとこですよね。
その辺もぜひともUPしたいとこですが、いずれ!

どっちにしても、連邦を維持し、合衆国を守り抜いた偉大なる大統領と言う冠は変わりない。
なんだかリンカーンブームで、つぎつぎと映画化されるようなんで、どんなふうに描かれていくのか、楽しみにしたいです。
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先生! (オリーブリー)
2012-11-12 15:31:16
分かりやすい解説、ありがとうです!!
そーいえば、開拓時代(西部劇が多い?)や南北戦争ものって少ないですよね。
「コールド・マウンテン」「ダンス・ウィズ・ウルブス」「グローリー」とか?
そうそう、「レジェンド・オブ・ゾロ」はあんな映画だけど、何気に時代背景はちゃんとしてますよね~あれって、大陸横断鉄道建設中だったんでしょうか?
来年の「リンカーン」のためにも、少し勉強しなきゃ(笑)
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>オリーブリーさま (sakurai)
2012-11-13 12:37:12
探すと結構ありそうですが、開拓時代はあんまりないかも。
南北戦争が裏にある・・というのは、よくありますよね。
「ギャング・オブ・ニューヨーク」もそうだったかも。
「レジェンド・オブ・ゾロ」は鉄道とはちょっと違って、アメリカ・メキシコ戦争が舞台ですな。
「3時10分、決断の時」は鉄道建設があったなあ、そういや。
なんせ短い歴史ですから、すぐにたどれますんで、映画でたどるのも面白いです。
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