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ウォリスとエドワードの時代 第二次世界大戦前夜!!

2013年02月12日 | お勉強コーナー
王様っていうのは、どうなんでしょね。なりたいもんでもないし、不自由だし、執着するもんでもなさそうなんですが、そうもいかないのがやはり王様ということで。幼いころから王様教育を施され、あんたは王様になるんですよ!!と、育てられて王様になった人が、途中放棄するってことが重要であり、かつ問題であると。

別に、エドワードは王様やってても何の問題もなかったと思うのですよ。ただ時代がそれを許さなかった・・・ということなんでしょうね。

ということで、ざっとあの頃の時代と、この王様の怒涛の人生の顛末をなぞりたいと思います。

さて、エドワードは、大英帝国の君主として名高いジョージ5世の王子として1894年に誕生。当時のイギリスは世界に冠たる帝国で、多くの植民地を有し、『光栄ある孤立』などという国の立場を示していたのであります。ただし、ロシアの動きも不穏だし、いつまでも孤立状態を続けていくのも難しい。でも、名誉も守っていかねばらない、と。そんな列強ひしめく中で、政治的な力はなくとも、世界中にちりばめられた植民地の君主として君臨せねばらならない!非常に重い責務を背負っていたのであります。






ジョージ5世




そんな厳格な父のもとで、なぜかエドワードは、今でいう“ちゃらい”感じの洒落男になってしまったのであります。ネクタイの結び方のウィンザーノットは、彼が結んでいたから名づけられたというのが、もっぱらの説でしたが、それは諸説あるということらしいです。でも、とにかくおしゃれ。着崩したおしゃれ?とでも言いましょうか、型破りなのにかっこいいと。どんなもの着てもかっこいい!という人が、たまにおりますが、そんな人だったらしい。

生き方もおしゃれ同様、革新的で古いものにとらわれない。ラジオに出演したり、人々の前でたばこを吸う姿を見せたり、一歩先行く人だったようです。うーん、50年後に生まれてたら、きっと受け入れられたでしょうね。





エドワード王子(プリンス・オブ・ウェールズ)



それでも王族としての使命、あるいは高貴なものの使命・≪ノブリス・オブリージュ≫を果たすために、軍人として従軍したり、恐慌の真っ最中には貧しい地区に積極的に出向き、何かをなさねばらない!と強く主張したりもしておりました。映画の中で、炭鉱のまずしい町を訪問している姿がありましたが、あれは史実。とにかく監督は、きちんと史実を追っていこうとした!というのが見て取れます。

彼は気さくで、親しみやすい人柄。王子であるのもかかわらず、ざっくばらんで場の雰囲気を盛り上げる人気者。ついたあだ名が【プリンス・チャーミング】と。それは女性に対しても同じで、かなりのプレイボーイだったのであります。アメリカの文化にも興味を示し、ジャズやカクテルをこよなく愛していた、というのも映されてました。

奔放な精神の持ち主で、どうやら君主としての厳格な精神性や、モラルはなかったようです。そんな彼と出会ったのが、ウォリス・シンプソン。当然人妻。不遇な少女時代を過ごし、親もなく、親戚に引き取られて育てられたという彼女は、注目を浴びるのが大好き。人の視線を集める才能の持ち主であったようです。

自分の生い立ちから、そうならざるを得なかったのかもしれません。最初の結婚は軍人と。夫がアル中で別れた後、海運会社を経営するシンプソン氏と再婚。社交界にデビューし、ロンドンへも行くようになった。そこでエドワードと出会ったのでした。

グラマーでもなく、取り立てて美人というのでもないけど、なぜか魅力的。ウィットに富んだ会話と、イギリス女性にはない、はっきりとした自己主張のもの言いが、どうやらエドワードには新鮮に見えたんでしょうね。彼が惚れ込んで、離さなくなった。それをうまく利用した面もあるでしょうが、まさか王子様に頼まれたり、言われたりしたら、断れないでしょう。世間では彼女のことを【ロイヤル・ミストレス】と呼びましたが、ずるがしこい女性と思われていたようです。クレバーとずるがしこいは、ほとんど同じ。

離れられなくなった二人の行く末を、イギリス中が心配していたころ、かのジョージ5世が亡くなってしまう。いよいよエドワード8世の誕生です。この時エドワード41歳、ウォリス39歳。




ウォリス



1936年1月に即位したエドワードですが、ウォリスをあきらめる気はさらさらなく、あくまでも彼女と結婚する気でした。でも、まずシンプソンと離婚してもらわねばならない。10月に離婚成立。普通ならば何の障害もなくなったはずです。でも、王と結婚するということは王妃になるということ。ウォリスは二度の離婚歴を持ち、かつアメリカ女!そんな女性をイギリス国民は王妃として温かく迎え、認めるか?

否でしょう。とてもじゃないが、そんな女性を受け入れるわけにはいかない。でも王様は彼女じゃないと絶対にダメっていうし。ここで内閣が最後通牒を突きつけるのです。王としての人気とカリスマは魅力的。大衆も味方につけている。でも・・・・。ここで女をあきらめたら、絶対的な支持を得た王様になったことでしょうな。

内閣は王に
1.彼女を断念する。
2.内閣の意向に逆らって結婚する
3.退位する
この3つから選択するよう王に迫ったのです。そして王は、3を選ぶ。時は1936年。ナチスドイツが台頭し、このままではヨーロッパは危うい状態になりそうなとき。片や東の方にもとんでもないでっかい社会主義の国がその勢力を押し広げている。こんなことで、政治空白を作ってるような悠長な時間を過ごすわけにはいかない。そんなことは王も重々わかってる。そして女をとったと・・・・。

ここでエドワードは国民に向かってラジオで退位の演説をするのでした。12月11日。。。





退位演説のエドワード8世



苦渋の決断、王を途中で放棄する辛さ、いろんなものをないまぜにした思いを素直に吐露する内容。こんな自分ですまないと。でも、自分が王としてやっていくには、愛する者の支えがないとだめなんだ、と。ここは泣かせます。

可哀そうなのはウォリスですわな。われらが王を奪った女ですから。王は演説して、皆に謝罪し、自分の意見を述べる場があったのですが、彼女には何もない。逃げるようにフランス行き、あとは元王と隠者のような暮らしを送るしかないのでした。

そのあとを受けて即位いたのがジョージ6世。かの「英国王のスピーチ」の吃音の王様です。現エリザベス2世の父君。





ジョージ6世




この映画のエドワードはガイ・ピアーズがやってました。





「英国王のスピーチ」のエドワード



さて、王を退位し、一公爵となったエドワードは、翌37年にウォリスと結婚。エドワードは「愛に関する限り、私は勝った」と言ったとか。1972年5月にエドワードは77歳で死去。ウォリスは86年、90歳までエドワードを偲んで余生を過ごしたのであります。


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2 コメント

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ウォリスさんって (KON)
2013-02-12 14:46:13
実際、どんな女性だったんでしょうね?
「英国王のスピーチ」では、ズケズケものを言ういくらか鼻持ちならない方に見えましたが。
ヘレナ・ボナム・カーターさんが無視してたのも印象深いです。
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>KONさま (sakurai)
2013-02-14 22:36:48
評価が思いっきり分かれそうな典型的な人かもですね。
前に特集した番組では、イギリス女性にないはっきりとものを言う!というのが、エドワードにはえらく新鮮で、魅力的に見えたとありました。
そういう女性は、イギリスの上流社会では嫌われそうですよね。
愛されたのはよーく分かるんですが、実際はどうだったんでしょうかねえ。
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