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さて、リンカーン。ここ1、2年、南北戦争150周年とやらで、いろいろなイベントやら、映画やらが作られてきたが、その総決算のような気がしないでもない。アメリカ16代大統領、普遍的に尊敬され、アメリカのもっとも大変な時に国の舵を握ってきた不屈の人物である。おまけに最後に役目を終えたかのように舞台を去っていく・・・。まるで絵にかいたような、物語でもこうはうまくいかないだろう~と思うほどの流れである。
どう描いても興味深いものになるだろうが、それを真っ向から、真面目一本、とにかく戦争を終わらせることと、奴隷制をなくすための憲法を修正すること。過ぎてしまった今から思えば、どちらも国のためのことであるし、もちろん人道的なことで、この二つが相いれなかったということ自体が不思議な気がするが、実はとんでもなく相反するものだったということが皮肉だ。
映画は、すでにリンカーンが二期目に突入し、すでに戦争のすう勢は決しており、南軍が劣勢であることは明らかだったころから始まる。悲惨な戦場はスピルバーグらしく、泥にまみれ、あがき苦しみ、残酷にねちねちと映し出される。「プライベート・ライアン」よろしく、延々と流れるのかな・・・と思いきや、意外に早く画面は切り替わった。スピさんの見せたい焦点はそこじゃないんだ!という思い入れが見えた。
リンカーンが目指すは憲法の改正であった。修正条項というと、日本語的にはもともとの法があって、それを修正、手直しした、というように解釈したくなるが、アメリカ合衆国憲法は、独立した際に制定された1787年憲法といわれるもの。前文と7条の条文からなる基本中の基本の法律だ。そこに時代の流れや変化に応じて足されていくものがいわゆる修正条項となる。従来の規定は変えずに、修正すべき内容が生まれれば、それが付け足されていく。そこで付け足そうとしたのが修正13条である。
修正13条
第1節 奴隷制もしくは自発的でない隷属は、アメリカ合衆国内およびその法が及ぶ如何なる場所でも、存在してはならない。ただし犯罪者であって関連する者が正当と認めた場合の罰とする時を除く。
第2節 議会はこの修正条項を適切な法律によって実行させる権限を有する。
明確な奴隷制を否定する条項なのだが、これを可決、成立させるためには下院で3分の2以上の賛成が必要となる。上院ではすでに可決。残るは下院のみだが、票は微妙。リンカーンのライフワークともいえるこの修正条項の成立のためには、なりふり構わず、プライドすら捨てても構わない!!といった彼の不屈の精神がむき出しにされる。
戦争は間もなく終わるだろうし、北軍の勝利は目に見えている。終わってしまえば、嫌な言葉だが、南側と取引し、票をいただくこともできなくなる。成立させるために許された時間はもうない。成立できるなら、どんなことでもする必要がある!という意志が見える。清廉潔白だけじゃ、百戦錬磨の政治家なんてやってられない。じゃあ、何をしてもいいのか?いや、その根底にあるのは、確固とした正義の理念と信念!ゆるぎない信念があるからこそ、どんなことがあろうと前に進まなければならないと、自らの行動を信じるのだ。
疲れ果て、落ちくぼんだ目、大きな体を折り曲げて、子供を抱くリンカーンを見てると、ダニエル・デイ=ルイスではなく、まじに国難に身を投じ、まるで人柱みたく奮闘したリンカーン自身に見えてきた。リンカーンがどんな人物だったのか、知る人はいないはずなのに、万人が納得するリンカーンの姿だったのではなかろうか。
急進派のスティーブンスになったトミーさんもなかなかいい。敵対する民主党の議員たちの憎々しい雰囲気がまたいい。あんだけ民主党を悪者みたく仕立てて、問題が起きなかったのか・・と、他人事ながら心配申し上げた。でも、議会でのやりとりは、まんま当時の状況らしかったので、この辺も納得のことなのだろう。
うちのJGLもちょいと地味ながらいい味出してました。とにかく役者がみんなお見事。で、人一倍存在感の大きかったロビイストのビルボ氏。うーん、いいじゃん!なかなかのキャラだわ~と思ってみていた。どこかで見たことあるような、でも思い出せない。。。。誰??
なんとまあ、ジェームズ・スペイダーだったではありませんか!!懐かしいような、うれしいような、お久ぶりに拝見しましたが、いいおっさんになって、いい味出てたわ。
当然のことながら、アメリカの大統領は議会に参加することはできない。議会の丁々発止のやりとりも、緊迫な採決も見ることはできない。だまってホワイトハウスで結果を待ってるしかない。孤独だなあ・・・。孤独だけど、強くなければならない。それがはっきりと見えた。
◎◎◎◎
「リンカーン」
監督 スティーブン・スピルバーグ
出演 ダニエル・デイ=ルイス サリー・フィールド ジョセフ・ゴードン=レヴィット トミー・リー・ジョーンズ ジェームズ・スペイダー
どう描いても興味深いものになるだろうが、それを真っ向から、真面目一本、とにかく戦争を終わらせることと、奴隷制をなくすための憲法を修正すること。過ぎてしまった今から思えば、どちらも国のためのことであるし、もちろん人道的なことで、この二つが相いれなかったということ自体が不思議な気がするが、実はとんでもなく相反するものだったということが皮肉だ。
映画は、すでにリンカーンが二期目に突入し、すでに戦争のすう勢は決しており、南軍が劣勢であることは明らかだったころから始まる。悲惨な戦場はスピルバーグらしく、泥にまみれ、あがき苦しみ、残酷にねちねちと映し出される。「プライベート・ライアン」よろしく、延々と流れるのかな・・・と思いきや、意外に早く画面は切り替わった。スピさんの見せたい焦点はそこじゃないんだ!という思い入れが見えた。
リンカーンが目指すは憲法の改正であった。修正条項というと、日本語的にはもともとの法があって、それを修正、手直しした、というように解釈したくなるが、アメリカ合衆国憲法は、独立した際に制定された1787年憲法といわれるもの。前文と7条の条文からなる基本中の基本の法律だ。そこに時代の流れや変化に応じて足されていくものがいわゆる修正条項となる。従来の規定は変えずに、修正すべき内容が生まれれば、それが付け足されていく。そこで付け足そうとしたのが修正13条である。
修正13条
第1節 奴隷制もしくは自発的でない隷属は、アメリカ合衆国内およびその法が及ぶ如何なる場所でも、存在してはならない。ただし犯罪者であって関連する者が正当と認めた場合の罰とする時を除く。
第2節 議会はこの修正条項を適切な法律によって実行させる権限を有する。
明確な奴隷制を否定する条項なのだが、これを可決、成立させるためには下院で3分の2以上の賛成が必要となる。上院ではすでに可決。残るは下院のみだが、票は微妙。リンカーンのライフワークともいえるこの修正条項の成立のためには、なりふり構わず、プライドすら捨てても構わない!!といった彼の不屈の精神がむき出しにされる。
戦争は間もなく終わるだろうし、北軍の勝利は目に見えている。終わってしまえば、嫌な言葉だが、南側と取引し、票をいただくこともできなくなる。成立させるために許された時間はもうない。成立できるなら、どんなことでもする必要がある!という意志が見える。清廉潔白だけじゃ、百戦錬磨の政治家なんてやってられない。じゃあ、何をしてもいいのか?いや、その根底にあるのは、確固とした正義の理念と信念!ゆるぎない信念があるからこそ、どんなことがあろうと前に進まなければならないと、自らの行動を信じるのだ。
疲れ果て、落ちくぼんだ目、大きな体を折り曲げて、子供を抱くリンカーンを見てると、ダニエル・デイ=ルイスではなく、まじに国難に身を投じ、まるで人柱みたく奮闘したリンカーン自身に見えてきた。リンカーンがどんな人物だったのか、知る人はいないはずなのに、万人が納得するリンカーンの姿だったのではなかろうか。
急進派のスティーブンスになったトミーさんもなかなかいい。敵対する民主党の議員たちの憎々しい雰囲気がまたいい。あんだけ民主党を悪者みたく仕立てて、問題が起きなかったのか・・と、他人事ながら心配申し上げた。でも、議会でのやりとりは、まんま当時の状況らしかったので、この辺も納得のことなのだろう。
うちのJGLもちょいと地味ながらいい味出してました。とにかく役者がみんなお見事。で、人一倍存在感の大きかったロビイストのビルボ氏。うーん、いいじゃん!なかなかのキャラだわ~と思ってみていた。どこかで見たことあるような、でも思い出せない。。。。誰??
なんとまあ、ジェームズ・スペイダーだったではありませんか!!懐かしいような、うれしいような、お久ぶりに拝見しましたが、いいおっさんになって、いい味出てたわ。
当然のことながら、アメリカの大統領は議会に参加することはできない。議会の丁々発止のやりとりも、緊迫な採決も見ることはできない。だまってホワイトハウスで結果を待ってるしかない。孤独だなあ・・・。孤独だけど、強くなければならない。それがはっきりと見えた。
◎◎◎◎
「リンカーン」
監督 スティーブン・スピルバーグ
出演 ダニエル・デイ=ルイス サリー・フィールド ジョセフ・ゴードン=レヴィット トミー・リー・ジョーンズ ジェームズ・スペイダー
わたしはいい年をして途中で涙ぐんでしまうし、
妻はとうとうとこれは傑作だと。
まさかこれほどとは……
彼がきっちり作るバージョンは、すごいなあと思います。
たくさんの配役をバランスよくちらけるのが、やっぱうまいなあです。
女性とるのは、相変わらずいまいちですけど。
リンカーンの覚悟のようなものをしっかりと感じました。
なんというか、こういう感じの骨太な政治家は今の日本にはいないですよね・・・。
こんな政治家は、いないですよね。
幕末のころにでも行ったら、少しはいるかな~。
ダニエルさんはやはり、あの「NOW!NOW!NOW!」の一連シーンが素晴らしかった
歴史上の偉人であるリンカーン、彼が怒鳴り、自分のために票をとってこいとわめく様がとくに素晴らしかったです
ジョーンズさん演じたスティーブンスがなぜあのように強硬派だったのかも後半に明かされるのが良かったですね、実際やもめで黒人妻にしてる人は実は結構いたような気もします
徹底的に作って、エンタメ性なし!
私、こういうスピさんの映画は好きなんで、勉強させてもらってます。
ダニエルは、突き抜けてますからね。安心しきって見ていられる。リンカーンそのものでした。
黒人妻は結構いたでしょうね。
その辺の心境の表し方もうまかったです。
うん、でも、リンカーンが鮫と戦ったり、大きな玉に追いかけられたりという映画も見たかった。実は生きていた事にして続編作るか。
「リターン・オブ・リンカーン 地獄の修正13条廃止案」なんじゃそりゃ。
たまに作る、真面目なスピさんは、嫌いじゃないです。