迷宮映画館

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ボローニャの夕暮れ

2010年09月13日 | は行 外国映画
イタリア、ボローニャのある高校。そこの教師として働くミケーレはごく普通の美術教師だったが、同じ学校に娘も通っていた。あまり皆と相容れず、神経質なジョヴァンナは、美しい母にコンプレックスを抱いていた。

父は娘を溺愛する。母は、娘と距離を置く。あるとき、学校で女子高生の殺人事件が起こる。名士の娘で、ジョヴァンナにやさしく声をかけてくれてた生徒。おまけにムッソリーニ派の実力者の姪だった。

犯人は一体誰?殺された生徒のボーイフレンドに嫌疑がかかるが、彼はみなの憧れの的。当然、ジョヴァンナも好きだった。でも、彼は私の方が好きなはず。ジョヴァンナはそう思い込んでいた。実はそれは父が、成績の悪い彼を進級させるために娘に目をかけるようにと、取引をしていたから。

そんなことを娘は知らない。父親は可愛い娘にとって良かれと思ってやったこと。母は、娘のためになりふり構わず、姑息なことをやることがよいこととは思っていない。

そして、犯人が判明する。それは大方の予想通りジョヴァンナ。彼を取られたと思い込んでいる。ひとかけらの反省もなく、自分のしたこともよくわかっていない。そんな娘を不憫に思いながら、父親はせっせと娘のところに通い、元気付ける。

母は、どうしても足が向かない。ジョヴァンナは、父に「母はいつ来るのか?母はどうしてる?母は?母は?母は・・・・・」

世の中はいやおうなしに戦火に包まれていく。つつましく生活を送ってきた彼らの日常は脅かされ、爆弾を落とされ、目の前で家族が死んでいく。それでも生きているものは、その日を必死でやり過ごす。小さな家族の大きな出来事は、人々の運命を大きく変える。戦火を生き延びた家族には、新たな生きる道が示されていく。そして、生きる・・・。

こんな感じでしょうか。ちょっと出来の悪い娘を持ちながら、彼女を溺愛する父親の小市民振りというか、そこまでする父親がいるか・・・とも思うが、父親の娘に対する愛情物語を続けざまに見たおかげでありかも、とも思うが、それはひたすら娘を愛するため。

その愛情に軽重はなく、どれも何より重い。まあ、ミケーレ父ちゃんの場合は、妻に少々の引け目を感じているようで、その裏返しのような気もしないでもないが、わからなくはない。それが本当に娘のためで、正しいことなのかもわからないが。

全編、とっても丁寧なつくりで、それにあわせたかのような丁寧な演技のミケーレ父ちゃんに痛み入った。娘を通して、家族が再生し、成長した過程に納得がいった。

戦争がもっと絡んでくるのかと思っていたのだが、その辺はあっさりで、市民にとって戦争なんて、本当にどうでもいいことであったということがよくわかる。我らは生きる、それが市井の人だ。

◎◎◎○

「ボローニャの夕暮れ」

監督・脚本 プーピ・アヴァーティ
出演 シルヴィオ・オルランド フランチェスカ・ネリ エツィオ・グレッジョ


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2 コメント

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Unknown (KLY)
2010-09-16 00:21:05
私は父ちゃんの溺愛振りが気持ち悪かったなぁ。近親相姦でもしてるんじゃないかというぐらいで寒気を感じましたよ。これがまだ小さい子なら解らなくもないんですけどね。父ちゃんがあんなだから娘が心の病になっちゃったんじゃないのかと思ったぐらい。実際は元々娘はああいう病の気があったらしいですが…。
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>KLYさま (sakurai)
2010-09-16 13:50:27
気持ち悪いっちゃ、気持ち悪いのですが、妻との関係とか、いろいろと内包するものがあったんだろうなあ・・・と。
ちょっと舌足らずな面もありましたが、家族のそれぞれの立場が見えてくると同時に、ずんずん入り込んで行ったような気がします。
娘さんは明らかに病気でしょう。どう見ても病気ですよ。でも、親としては、病気だともみとめたくない。その辺の気持ちもわかる。時代もあるでしょうが、極端ではあったとしてもなかなかの描き方だったと思います。
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