あたしぃ・・?
学校出て、保険の外交員をしているの。うざい親のところは出て、何とかやってる。なかなかお客さんをつかめないけど、お父さんはあたしの言うこと聞いてくれるから、頼りになるんだ。付き合っている人はいるよないないよな・・。いや、友達にはいると公言している手前、いる。相手はどう思っていようと。自信なんてあるわけもない。少しさびしいだけ。だから出会い系でちょっとだけ男の人と・・・・。悪いことなんてしてない。あたしは悪くない・・・。
おれ・・?
おれ、昔っからもてんだよ。顔はそこそこいいだろ。家は金持ちだし、女は黙ってても寄ってくんだ。あ、またメールが来た・・。こいつうぜえんだよ。ちょっと優しくしたら、その気になってやたらメールよこすんだけどよ、自分のことわかってねえよ。なんか、かつかつちまちまやってる奴の気がしれねえ。え!?悪いか?なんか悪いか?
あたしですか。小さなこの村でずっと暮らしてきました。娘がいたんですが、子供を置いて出てってしまったんですよ。それ以来、ずっとあたしが育ててきました。いい子ですよ。今時の若い子に、じいちゃんの面倒みさせたりして、悪いなあ・・・とも思ってきたんですが、どうしようもないんですよ。いろいろとうまくいかないことが多いんですがね、漢方薬のセールスしている人が、優しくしてくれるんですよ。悪いことなんか、何にもしてきません。
・・・・それぞれの気持ちになってしまったのだが、きっと誰も自分は悪くなんかない。いや、ちょっとは悪いかもしれないけど、誰かに迷惑かけようと、自分にとってよければそれでいい。誰だって思うことではないか。ほんの少しの偶然と、ちょっとした出会い、そして行き違いによって起こってしまった悲劇。
自分が思っていることをすべてわかってくれる他人などいないのだが、人はそうは思わない。自分の都合のいいように相手を思ってしまう。。。わからないはずだったのに、自分をわかってくれる人がいた。現実にいた。出会うべき人、愛せる人、愛してくれる人。でもなぜ遅すぎたのか・・・・。
人の気持ちの表し方の見事なこと。それぞれの思いがぐぐっと迫ってくるのだが、それは本の力だと思う。未読だが。。。ただ、文章で表わされた人の妙を生身の人間がどう表すか。それが映画だが、いやになるほど見事だった。すごい。背筋に何かが走ったほどの役者の力を見た。それは希林ばあさんと、柄本とうちゃん。この二人にやられた。
受賞の深津絵里ちゃんもそりゃよかったが、演技というより、全身全霊で迫ってくる力の方が感じられた。何をおいても希林ばあさんだ。見事にやられた。すごい。背中丸めて普通のごく普通のことをやってるときも、ちまちまと小さな幸せにすがろうとする気持ち、裏切られた時の漂泊とした佇まい。すごい。すごすぎる。
孫に貰ったスカーフを首に巻き、まっすぐ歩く姿はまともに見ていられなかった。そして柄本父ちゃん。娘に全幅の信頼を置いてたわけではないだろうが、俺の娘だ。おやじの俺が守ってやりたかった。大事に育てた娘をゴミのように捨てたやつがいる。そのことに対する慟哭と、怒り。きっと娘は「お父さん、ゴメン」と言いたいはずだ。わかってる、わかってるぞ。それらをないまぜにした父ちゃんが絶品。
役者の力を思う存分引き出して、しっかと表したいことを描き切ったと思う。
今までの役柄をふっ切って・・・と、本人自身も、周りも言ってるが、あたしはそうでもないように感じた。ブっキーは、最初がさわやか過ぎて、そのイメージがついて回ったが、結構なチンピラとか、寂しい役回りとか、哀しげな役の方が印象深くて、それほど驚く役とは感じなかった。
以前に、笑顔で喜怒哀楽を表わす堺雅人と、笑顔で喜怒哀楽を隠してしまう妻夫木・・・と感じた覚えがある。笑顔を封印した妻夫木君は何かを取っ払ったかのように素直に見えた。
傑作だと思う。
◎◎◎◎◎
「悪人」
監督・脚本 李相日
出演 妻夫木聡 深津絵里 岡田将生 満島ひかり 樹木希林 柄本明
原作・脚本 吉田修一
音楽 久石譲
学校出て、保険の外交員をしているの。うざい親のところは出て、何とかやってる。なかなかお客さんをつかめないけど、お父さんはあたしの言うこと聞いてくれるから、頼りになるんだ。付き合っている人はいるよないないよな・・。いや、友達にはいると公言している手前、いる。相手はどう思っていようと。自信なんてあるわけもない。少しさびしいだけ。だから出会い系でちょっとだけ男の人と・・・・。悪いことなんてしてない。あたしは悪くない・・・。
おれ・・?
おれ、昔っからもてんだよ。顔はそこそこいいだろ。家は金持ちだし、女は黙ってても寄ってくんだ。あ、またメールが来た・・。こいつうぜえんだよ。ちょっと優しくしたら、その気になってやたらメールよこすんだけどよ、自分のことわかってねえよ。なんか、かつかつちまちまやってる奴の気がしれねえ。え!?悪いか?なんか悪いか?
あたしですか。小さなこの村でずっと暮らしてきました。娘がいたんですが、子供を置いて出てってしまったんですよ。それ以来、ずっとあたしが育ててきました。いい子ですよ。今時の若い子に、じいちゃんの面倒みさせたりして、悪いなあ・・・とも思ってきたんですが、どうしようもないんですよ。いろいろとうまくいかないことが多いんですがね、漢方薬のセールスしている人が、優しくしてくれるんですよ。悪いことなんか、何にもしてきません。
・・・・それぞれの気持ちになってしまったのだが、きっと誰も自分は悪くなんかない。いや、ちょっとは悪いかもしれないけど、誰かに迷惑かけようと、自分にとってよければそれでいい。誰だって思うことではないか。ほんの少しの偶然と、ちょっとした出会い、そして行き違いによって起こってしまった悲劇。
自分が思っていることをすべてわかってくれる他人などいないのだが、人はそうは思わない。自分の都合のいいように相手を思ってしまう。。。わからないはずだったのに、自分をわかってくれる人がいた。現実にいた。出会うべき人、愛せる人、愛してくれる人。でもなぜ遅すぎたのか・・・・。
人の気持ちの表し方の見事なこと。それぞれの思いがぐぐっと迫ってくるのだが、それは本の力だと思う。未読だが。。。ただ、文章で表わされた人の妙を生身の人間がどう表すか。それが映画だが、いやになるほど見事だった。すごい。背筋に何かが走ったほどの役者の力を見た。それは希林ばあさんと、柄本とうちゃん。この二人にやられた。
受賞の深津絵里ちゃんもそりゃよかったが、演技というより、全身全霊で迫ってくる力の方が感じられた。何をおいても希林ばあさんだ。見事にやられた。すごい。背中丸めて普通のごく普通のことをやってるときも、ちまちまと小さな幸せにすがろうとする気持ち、裏切られた時の漂泊とした佇まい。すごい。すごすぎる。
孫に貰ったスカーフを首に巻き、まっすぐ歩く姿はまともに見ていられなかった。そして柄本父ちゃん。娘に全幅の信頼を置いてたわけではないだろうが、俺の娘だ。おやじの俺が守ってやりたかった。大事に育てた娘をゴミのように捨てたやつがいる。そのことに対する慟哭と、怒り。きっと娘は「お父さん、ゴメン」と言いたいはずだ。わかってる、わかってるぞ。それらをないまぜにした父ちゃんが絶品。
役者の力を思う存分引き出して、しっかと表したいことを描き切ったと思う。
今までの役柄をふっ切って・・・と、本人自身も、周りも言ってるが、あたしはそうでもないように感じた。ブっキーは、最初がさわやか過ぎて、そのイメージがついて回ったが、結構なチンピラとか、寂しい役回りとか、哀しげな役の方が印象深くて、それほど驚く役とは感じなかった。
以前に、笑顔で喜怒哀楽を表わす堺雅人と、笑顔で喜怒哀楽を隠してしまう妻夫木・・・と感じた覚えがある。笑顔を封印した妻夫木君は何かを取っ払ったかのように素直に見えた。
傑作だと思う。
◎◎◎◎◎
「悪人」
監督・脚本 李相日
出演 妻夫木聡 深津絵里 岡田将生 満島ひかり 樹木希林 柄本明
原作・脚本 吉田修一
音楽 久石譲
ただ、後半かなり光代がフィーチャーされたのに、彼女の人間的な背景が良く見えなかったのが残念です。どうしてそこまで祐一に入れ込むのか。大事な人が欲しかったと言葉で言う前に、寂しい彼女を描写して欲しかったです。もっとも、そこを何となくフォローしてしまうほど深津さんと光代のマッチングは良かったんですけどね。
世の中なんてちょろい、自分はうまくやってると思っている佳代と圭吾。
正反対に何もかもから拒絶されていると思っている光代と祐一。
そして、彼らを取り巻く親、兄弟、友達。
映画を見ながら何度も何度もため息をついてしまいました、一人ひとりの人生が辛すぎて。
この映画、sakuraiさんならどんな感想なのか、楽しみにしていました~♪
誰しもどこかに“悪人”が潜在的に居て、
でもその悪人が顔を見せるかどうかは本人次第。
誰が悪人なのか・・・は難しい問いだけど、
映画の中で突出した悪人は居たけれど、登場人物殆どに
その小さな“悪人”が存在していた。
何と言っても樹木希林さんと柄本 明さんにガッツリやられました(笑)
深っちゃんも妻夫木クンも凄いけど、
あんたら年季がちがいまっせ~って感じで。
mariyonさんの悪人、山田君は僕も思いましたよ^^
どの役者さんも見事でした。
お!やはりプロデューサーの方に目が行きますか。ま、それも全部含めて、総合的に素晴らしかったのだと思いますわ。
物語は決して感動させるようなもんではない地味な話ですが、品格があったように感じます。
光代さんですか・・。
アパートに帰ってきて、妹は彼氏と出かけ、冷蔵庫あけるあたりで、わびしさはなかなか伝わったきたと思いますわ。ベッドを見て、ふすまをバンと閉めたり。
で、もともとどこか寂しげな雰囲気が漂ってるのが、生きてましたかね。
陰と陽のような対称的でありながら、どっちでもなりうるような妙。
なかなかでした。ブッキー!◎。
山田君じゃ、マジな悪人になってしまいそう・・・。ごめんなさい。
誰でも悪の部分を持ち、それを悪とすら思わないだろうし、確信犯的に悪だとわかっていつつも、仮面をかぶってるやつ。いろんなものがないまぜになってるこの世のどろどろを見せられたような気がしました。
それを感じさせたのも役者の力が大きいだろうなあ、と。
引き出したのは監督さんでしょうが、いろんなものが作用した総合的に見事な作品だったと思います。やっぱばあちゃんと父ちゃんが圧巻でしたが。
どこにでもあるような風景、人間関係、ままならない日々、一歩間違えば、ちょっとの行き違いがあれば誰だってこうなり得てしまう。普通の人々の物語。そこが痛いほど伝わってきてました。これこそ役者の力でしょう。
あんなに普段華のある主役の2人が、今回は本当にリアルな痛々しい人間になってくれましたね。ださい車に痛んだ金髪、暗い目、野暮ったいコートに妹の食べ残しのケーキ、全てが自分の一部のようでした。
そして柄本さんの怒りと悲しみに満ちたあの言葉。胸の中をかき乱されました。どうしてこんなに動揺してしまったのか自分でも確かなことはわかりません。しばらく悩み続けると思います。
こんな素晴しい作品とは思っていませんでた。アカデミー賞の外国語映画賞の候補を「告白」から「悪人」に変更して下さい!!
もう出ている役者さんがそれぞれに素晴らしかった。
善と悪の二面性を持っている人間、というのよりももっと善と悪が渾然一体となっている人間というものが深く描かれていました。
自分のいいように解釈してしまうというのは、みんな普段から自分でもやってしまうもので、たぶん自分で自覚するとそうとうイタかったりするわけです。
それを演じるのですから、かなりエネルギーがかかる芝居だったと思いますが、若手からベテランまでしっかりと表現していましたね。
仰る通りの素晴らしい映画でした。
私も妻夫木くんの笑顔も好きだけど、「どろろ」でみせた哀しげな雰囲気が印象的でした。sakuraiさんの慧眼に感服です。
TBさせて頂きますね。
映画のいろんな面が見事に相乗して、映画ってのはつくづく総合的な作品なんだ・・って感じました。
「告白」は、あれはあれで映画のエンタメ性がどんなものを生み出すのか!という思いを感じましたが、こっちは魂に来ました。
地味だけど、すごい力でした。