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第379回 テレビの世界の紋切語

2020-07-17 | エッセイ

 相変わらずの「テレビ離れ」です。たまに見ると、テレビに出てるアナウンサー、コメンテーター、芸人さんは、今時、大変だなぁと思うことがあります。

 不適切な発言(中身にもよりますが)があっても、昔ならテレビ局へ抗議の電話とか、手紙が行く程度とかだったのでしょう。でも、今や発言内容がSNSで拡散したり、発言者本人のブログが炎上、などの話題も飛び交う時代です。皆さん、発言には慎重にならざるを得ません。そんな時に無難で便利なのが、決まりきった紋切型の言い回し、つまり「紋切語」ではないでしょうか。私なりの批判精神も込めて、いくつかご紹介してみます。

<~としています>
 「私は、今、勉強を「しています」という現在進行形、「部活で野球を「しています」」という日常の習慣や活動、そして「毎週水曜日には、飲みに出かけることに「しています」」という決め事、ルール・・・というのが普通の使い方のはず。でも、いつのほどにか、放送業界では、不思議な使い方が主流になっています。ニュースで頻出するのが、例えば、
 「XX省では、実態を調査し、対策を講じる「としています」」というもの。
 「決めました」と言い切ると「誰が、どこで?」とのツッコミが入りそうで使いたくないみたいです。ホワっとした言い方で、XX省も、報道する方も責任をあいまいに出来るというメリットがあるんでしょう。「では」という本来は場所を指す言葉とセットになって、XX省のあたりには、そんな「空気」が漂っていて、なんとなく決まったみたい、とのイメージだけが先行する「重宝な」言葉です。

<とは>
 「その裏に隠された知られざる秘密「とは」」、「今明かされる驚きの新事実「とは」」で使われる「とは」です。私は、民放でこの「とは」が出ると「あ~、コマーシャルへ行くんだな」と条件反射的に思います(事実、そのパターンが多いです)。
 視聴者を引っ張るだけ引っ張って、チャンネルを変えさせない、という底意が透けるあざとい手法です。今時のテレビ業界が置かれている厳しい現実を反映した言葉かな、と半ば同情もしています。

<あなたにとって〇〇とは>
 「とは」の一類型です。インタビューの最後で、「最後にお聞きします」と来たら、ほぼ間違いなくこのセリフがきます。「あなたにとって音楽とは」「あなたにとって人生とは」の類です。
 気の利いた答えよりも、「ただの暇つぶし」、「カネ儲けの手段」、「家業を継いで、いやいややってるだけ」のような反骨、ホンネの答えが飛び出さないかなと、ちょっと期待するんですけど、残念ながら、期待は裏切られっぱなしです。

<おいしい>
 グルメ番組とかで、タレントが料理を食べる時、どういうわけか、目をくるっと回す場面がよく登場します。一生懸命味わって、言葉を探してるのでしょう。さて、どんな感想、コメントが飛び出すかと思ったら、「おいしい」の一言だけ。
 「おいしいのは分かってる。どうおいしいのかを聞かせてくれ~」と毎度のことながら、虚しくツッコミを入れています。おいしさを言葉で表現するのは確かに難しいです。でも、カネ貰ってんでしょう?ひと工夫欲しいです。

 それで思い出すのが、かつてあった「食いしん坊万才」という5分ほどの番組です。家庭料理を中心に、味わいながら紹介する番組で、いろんなタレントが担当してました。立派だったのは、梅宮辰夫兄ぃ(故人)です。

 とにかく「うまい」「おいしい」を決して使わず。食感、味を言葉で表現することに徹していました。やたら褒めたりもしません。淡々と材料の紹介だけだったり、「うん?」と首を傾げた場面を憶えています。俳優としての矜持なのでしょうけど、なかなか出来ることではありませんでした。

<求められている>
 受身形というのは、主語をはっきりさせなくていいですから、お役所とか、その関係者などが、もっぱら「ご愛用」です。
 「考えられる」、「思われる」、「期待される」などいくらでも思いつきます。
 最近、NHKのニュースなんかでよく耳にするのが「求められている(います)」という表現。
 「早急な原因究明が「求められています」」、「しっかりと説明責任を果たすことが「求められています」のような具合。
 キャスターも本当は、「~するべきだ」、「~する必要がある」と断言したいのでしょう。でも、「各方面への気配り」もあって、ぎりぎりの妥協点として、こういう言い方が「求められている」のかな、とその心の内を「忖度」してますが・・・・

 いかがでしたか?機会があれば続編をお届けしたいです。それでは次回をお楽しみに。

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