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第447回 新古書店最新事情2021

2021-11-12 | エッセイ
 使い方によっては便利ですので、買うだけでなく、売るほうでも新古書店をよく利用します。本当に手元に置いておきたい本以外は売却処分する、というのがだいぶ前からの方針です。で、もっぱら利用するのが、大手チェーンの「某オフ」で、その商法の一端などを過去に何度か取り上げてきました。今回は「売却」(店側からは「買い取り」)を話題にすることにします。

 2~3年前くらいからでしたかねぇ、某オフ社は、コンピュータを利用した独自の買い取り価格査定システムを導入しました。
 市販される本には必ず付いているISBNのバーコードを読み取り、買い取り価格を瞬時に査定する仕組みです。おそらく、ネット上の古書通販サイトの売値などを、独自にデータベース化して利用しているのでしょう。

 作業は早いですし、担当者によって買い取り価格に差が出ることもありません。店員は買い取り価格査定のノウハウを特段必要としませんから、アルバイト店員の研修もその分、手間が省けそうです。買い取り価格の低さは相変わらずですが、商売のツールとしては、なかなかよく出来た仕組みです。

 で、ここ1~2年くらいのことですが、持ち込んだ本のうち何冊かに「値段が付きませんでした」と言われるケースが圧倒的に多くなりました。10冊につき2~3冊くらいの割合でしょうか。それなりに古い本が多いですが、今のシステムの導入前であれば、安いにしろ問題なく値段が付いていたはずのものです。

 査定されている間は、本棚を見たりしてますので、読み取っている現場をきちんとチェックしているわけではありません。でも、ふと湧いて来た疑念があります。
 ある程度古い本は、店員の判断で、バーコードを読み込ませず、「値段が付かなかった」と言ってるのではないか。というものです。1冊につき5円とか10円のことですけど、客が「仕方がないな、じゃあ、引き取って」と諦めてくれれば、仕入れコストが節減できます。セコいといえばセコいです。

 先日、その疑念が確信に変わるケースに遭遇しました。値が付かなかった、と言われた本の中に、数ヶ月前に買ったばかりの単行本が入っていたのです。単行本ですから、読み取り漏れは考えられません。地味なデザインで、安っぽい紙質でしたから、店員は古い本と判断して、読み取りをかけなかったに違いありません。

 「出たばかりの本だけど」と文句を言うと、奥付で出版日を確認した若い男性店員は、バツの悪そうな顔をして、バーコードを目の前で読み込ませました。ちゃんと240円だか250円だかの値がつきました。アルバイトであろう若い店員を責めても仕方がないので、私なりに、リターン・マッチを試みることにしました。その時、「値が付かなかった」本の中から、「これは」と思う3冊だけを、一旦引き取って、「出直す」ことにしました。ご覧の3冊です。



 2005年出版の文庫が2冊と、CD付き英語ニュースのリスニング教材(2013年版)です。
売るべき本がある程度溜まったら、同じ店へこの3冊も含めて、そしらぬ顔で持ち込みます。果たして、値がつくかどうか見てみようというわけです。それで事を荒立てるつもりは毛頭ありません。私なりのささやかなリベンジです。

 過日、その機会がやってきました。その結果ですが・・・・
 3冊とも値段がつきましたっ!
 右の「テレビの黄金時代」(文春文庫 2005年)は、70円と、この店としては結構いい値段。そして、真ん中の「魂がふるえるとき」(文春文庫 2005年)は、30円、そして、リスニング教材は、5円という結果でした。

 担当者の判断で「値が付かなかった」とするアナログなやり方と、デジタルなシステムを組み合わせる営業方針だ、というのがはっきりして、かえって気持ちがスッキリ。
 ならば、というわけで、私も値が付かなかった本の中で、これは、と思うものは積極的に引き取って、リターン・マッチにかけることにしました。
 私なりに店との駆け引きをゲーム的に楽しんでみよう、との魂胆です。おかげで、売却で店に足を運ぶ時、ちょっぴり楽しみが増え、足取りが軽くなった気がします。

 いかがでしたか?それでは次回をお楽しみに。