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第442回 大阪弁講座47 「何すんねん」ほか

2021-10-08 | エッセイ

 第47弾をお届けします。

<何すんねん>
 だいぶ古い話ですが、1994年まで阪神ターガースの主砲として活躍したオマリーという選手がいました。こちらです。

 95年にヤクルトに移籍したのですが、彼が甲子園の試合で逆転ホームランを打ちました。阪神ファンが思わず叫んだのがこれ。
 「何すんねん」

 司馬遼太郎と井上ひさしの対談集「国家・宗教・日本人」(講談社文庫)の中で、井上が大阪弁の面白さとして語っていたもので、私も頬が緩みました。

 共通語だと「何てことすんだっ」「何しやがる」と相手を、割合強めに非難する言葉(大阪弁でも言い方によってはそうなりますが)です。でも、「ねん」がついて、いかにも脱力系。
 ファンも本気で怒ってるわけじゃないでしょう。オマリーも今やヤクルトの選手なんですから。

ーーそれにしてもやな、去年まで阪神におってやな、ワイも一生懸命応援したった選手やないか。こんなとこでホームラン打たんでもエエんとちゃうか、ちょっとは気ぃ遣えよ、とついつい言いたなるわけや・・・「アタマ」「理屈」では分かってる、そやけど、「気持ち」が落ち着かんというのか、整理がでけへんわけや。ちょっと難しい言葉でいうたら、「不条理」ちゅうんかなぁ。まあ、済んだことはしゃあないから、阪神もしっかり打って、逆転せえよーー

 阪神ファンの熱くて、複雑な思いを伝える「一言」でした。

<そこそこ>
 キャラとして自分を押し出したり、自慢げに話したりする大阪人て多いようです。でも、ムキ出しに言うのは、避ける知恵も持ちあわせています。

 いいのか悪いのか、判然としない(させない)言い方に「ぼちぼち」というのがあります。
 「商売の方、どないでっか?」「まあ、ぼちぼちでんなぁ」でお馴染みです。
 大赤字ではないが、それほど儲かってるわけでもない、なんとか家族を養ってます・・・実際のところは別にして、メッセージとしてはそんなところでしょうか。

 で、「そこそこ」です。共通語で言う「まあまあ」が近いですが、「ぼちぼち」よりは、気持ちプラスの感じです。
 「試験どうやった?」「うん、「そこそこ」出来たと思う」これだと、自信はあるけど、あえて控えめに言ってる感じです。
 「お返しの品は、「そこそこ」のもんでええんとちゃうか。あまり深い付き合いやないし」これなんかは、カネはかけないが、世間並みの恥ずかしくないものを、という気持ちがでてますね。

 人物をざっくり評する言葉にもいろいろありますが、あえてランキングすれば、
 まあまあー>そこそこー>なかなかー>ひとかどの、といった感じでしょうか。「まあまあ」はニュアンスとして、可もなく不可もなくごく普通、「そこそこ」だと、見所があって、合格点、「なかなか」と言われれば、十分に敬意が払われてます。どうせなら「ひとかどの人物」と言われてみたいですね。今回の記事の出来はいかがでしたか?「そこそこ」だったらいいんですけど。

 いかがでしたか?それでは次回をお楽しみに。