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第374回 しぶとい宇宙-その終わりをめぐって

2020-06-12 | エッセイ

 「Newton」(ニュートンプレス刊)という科学雑誌があります。数学なども含めた科学全般から幅広い話題を取り上げ、文章よりもビジュアル勝負で、分かりやすさに知恵を絞っています。例えば、ご覧のような具合です。

 同誌が、2020年2月号で、「宇宙の終わり」という壮大なテーマに挑んでいます。難しい理屈、理論はヌキで、最先端の科学がどんな宇宙の終焉を想定しているのかを、プロセスを追ってご紹介しましょう。

★太陽系の死まで★
 138億年前のビッグバンによって、「今の」宇宙が誕生しました。そのタイムスケールの中で、20億年後を展望すると、太陽内部での核融合反応はますます盛んになり、1.2倍の明るさになるというのです。地球も温暖化どころではなく、灼熱地獄となり、生物は死に絶えます。

 45億年後、宇宙規模だと「身近な」存在である天の川銀河(地球もその一員)とアンドロメダ銀河が大衝突を起こし、夜空が輝きを増すというのです。星同士が衝突するのはまれで、銀河同士がくっついたり、離れたりを繰り返し、完全に合体して一つの銀河になるには、さらに数十億年かかると考えられています。こんな画像が載っています。

 一方、太陽ですが、60億年後、膨張を開始し、水星と金星を飲み込んでしまいます。地球の軌道にまでは達しないだろうとされています。でも、80億年後には、いったん収縮し、その後、再び膨張して、地球を飲み込んでしまうのです。そんな太陽も、最後には「白色矮星」となって、「太陽系」の時代は終わりを迎えます。

★超銀河の時代からブラックホールの消滅まで★
 で、話はいきなり1000億年後に飛んで、銀河同士の合体が進む超巨大銀河の時代です。こうなると、ある超巨大銀河からほかの銀河は見えません。空間の膨張が早すぎて、光が届かないからです。ひとつひとつの超巨大銀河といえども、ものすごく寂しい存在になってしまいます。 

 その銀河を構成している恒星も、有為転変を繰り返しながら、結局は宇宙へ拡散していってしまい、10兆年後には、すべての星が燃え尽き、宇宙は輝きを失います。だけど、まだまだ、宇宙は終わりません。実にしぶといのです。

 いよいよ、「10の34乗」年後という気の遠くなるような将来、巨大なブラックホールだけが残されます。そのブラックホールですが、これで終わりかというと、まだ先があるんですね。かのホーキングの予測によれば、ブラックホールも、少しずつ光や電子などを放出して、軽く、小さくなっていく、つまり「蒸発」する、というのです。そして、「10の100乗」年後、ブラックホールすら消滅してしまう、というのが、概ね確からしい予測です。

★「その後」の3つのシナリオ★
 やれやれという感じですが、その先を考えるのが科学者のお仕事です。誰も検証出来ませんから、「言いたい放題」のようで、同誌によれば、代表的なシナリオが3つあります。

 ひとつは、ビッグ・フリーズ(大凍結)と呼ばれる予測。宇宙はほぼ空っぽになり、時間も意味を失う、というもの。う~ん、分かりやすいんですけど、これが「終わり」だといわれても、「その先」が気になって、なんだか納得がいきません。
 2つ目は、ビッグ・クランチ(大崩壊)と呼ばれる理論で、空間の膨張が収縮に転じて、最後は”無”に帰すというもの。最初のものと似たり寄ったりの「寂しい」結論です。

 そして3つ目は、ビッグ・フリーズした宇宙が、さらに遠い将来、小さな宇宙に生まれ変わる、との予言です。
 「宇宙は、空間も時間も存在しない”無”から生まれた」とする「無からの宇宙創世論」を1982年に提唱したことで有名なアレキサンダー・ビレンキン博士らの説です。理論的な計算によって導かれたものであり、何よりも宇宙が終わらず、「転生する」というんですから、夢というか救いがありますね。

 宇宙の「終わり」もそうなんですけど、「始まり」も考えだすと、疑問のループに入ってしまいます。138億年前に始ったらしい今の宇宙ですけど、「その前」ってどうなってたんでしょうか?ホントにな~んもなかったんでしょうか?やっぱり”無”から”有”が生じたんでしょうか?まあ、あまり突き詰めず、壮大なロマンとして胸に秘めておくことにします。
 
 いかがでしたか?それでは次回をお楽しみに。