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第358回 こんなところにAIー認知症ほか

2020-02-21 | エッセイ

 以前、AI(人工知能)の応用分野のひとつとして、車の自動運転を話題にしたことがあります(第246回「コワい人工知能」。文末にリンクを貼っています)。その後も研究が進んでいるようで、成果の一端を、少し前になりますが、NHKの特集番組で見ました。まず取り上げられたのは、アメリカでの医療分野への応用例で、「認知症発症の判定」というテーマです。

 認知症を発症するかどうかを見極めるカラダのマーカー数値(名前は忘れました)が、ある値を超えると、50%の確率で、近い将来、認知症を発症することが経験的に知られています。

 ということは、数値が該当しても、半分の人は発症しないことになります。発症する、しないを分けるものは何なのかを、AIを利用して探り、出来れば早期治療に役立てようという試みです。

 数値が該当した人の脳のMRI(断層写真)画像を読み込むことから作業は始まります。読み込むのは、脳内の9つのスポットに限定して、サンプルは、数百人規模だったと思います。
 発症したケース、発症しなかったケースの画像の特徴をコンピュータに学習させました。発症したケース、しなかったケース別の画像の特徴を学習し、情報(はやりの言葉で言うと「ビッグデータ」)として蓄積したわけです。

 その結果、先ほどのマーカー数値が該当する人のMRI画像を読み込ませるだけで、90%の確率で、発症する、しないの判定ができるようになったというのです。

 ありとあらゆる画像の組み合わせの中から、検査した人の脳の画像が「発症するパターン」に近いか、「発症しないパターン」に近いかを、「コンピュータだけが判断できる尺度なり基準」で判定して、結果をクールに出力するわけです。

 でも、残念ながら、判断の根拠、理由は示してくれません。現時点でのAIの限界といえば限界です。判断の根拠が「ブラックボックス」化してるとも言えるわけで、なんとも歯がゆい気がします。

 で、アメリカでのことですから、医師は、その結果を本人に伝えるかと思いきや、テレビに登場した医師は、「告知しない」と断言していました。「現状で治療方法がないものを告知しても絶望感を与えるだけだ」というのが理由です。医師の苦渋に満ちた表情が印象に残りました。判定精度の飛躍的向上ということでは、ひとつの成果ですが、早期治療への応用への道は、まだ遠いなぁ、という感を強くしました。

 同じ番組で、天気予報での利用も紹介されてましたけど、ここで使うのは、雲の画像だけというのに驚きました。こんな画像でしょうか。

過去の膨大な雲の画像から、直近の雲の配置パターンに似たものを探し出してきて、その時は、こう天気が推移したから、今回もそのような気象状況(天候、気温など)になるはず、と(ごくかいつまんで言えば)予報するというのです。もちろん、人手による総合判断、調整なども加わって、最終の予報になるとは思いますが・・・

 一言でAIといっても、いろんなやり方、ロジック、応用分野があるものです。私みたいな素人があれこれいうのは、口幅ったいのですが、画像系の分野で、AIが得意とする「(あくまで)ひとつの」やり方を想像してみると

1.とにかく膨大なデータ(当然、画像が中心になります)を読み込めるだけ読み込む。
2.読み込んだデータから、コンピュータだけが分かる形でのパターン化(特徴の抽出)を行う。
3.判定を求められるデータが示されたら、それに近いパターンとその時の条件(認知症の発症の有無、天候など)を膨大なデータの中から探し出し、「理屈とか根拠抜きで」結果だけを出力する。
ということのようです。

 コンピュータの利用という面では大きな進歩ですが、人工知能といっても、「万能」ではない、という認識から物事をスタートする必要がありそうです。晴れか雨かの当たり外れくらいならいいですが、人の命、生活の質に関わる分野は、AIの技術と、人間の知恵、経験、工夫との折り合いを上手く付けていって欲しいものです。

 第246回「コワい人工知能」へのリンクは<こちらです>

 いかがでしたか?次回をお楽しみに。

 <追記>その後、「第369回 こんなところにAI-マスコミほか」でも関連した話題をとりあげています。合わせてごらんいただければ幸いです。