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第285回 大阪弁講座−33 「〜(し)てんか』ほか

2018-09-14 | エッセイ

 第33弾をお届けします。前回の講座で取り上げた「よそはよそ」は、居庵さんから「山形の米沢でも、親から言われてた」とのご指摘がありました。お詫びして、訂正しつつ、今回は、コテコテの大阪弁を、自信を持ってお届けしようと思います。

<~(し)てんか>
 標準語だと、「~(し)てくれませんか」という依頼、お願いの表現です。7つの音を、例によって、3つだけに縮めて「てんか」になる。親しいもの同士とか、対等のもの同士とかで、カジュアルに使える言い回しです。

 用例としては、

 「なんぞ(なにか)美味しいもんでも、買(こ)うて、来(き)「てんか」」
 「冗談ばっかり言(ゆ)うて、ええ加減にし「てんか」」
 「それって、セクハラやで。やめ「てんか」」

 こんな具合ですけど、言葉のトーンで、柔らかくもキツくもなります。
 と、書きながら思い出したんですけど、もうちょっと「厚かましい応用形」に「へんか」(または、「くれへんか」)というのがあります。
 「これ賞味期限が近いですやん。もうちょっと安ぅなりま「へんか」なぁ」
 「ちょっと急いでんねん。今日中に届けて「くれへんか」な」

 大阪弁独特のイントネーションまでお伝えできなくて、歯がゆいですが、根っからの大阪人でないと使いこなせないですやろな。

<すべった、ころんだ>
 2つとも普通の日本語なんですけど、セットで使うと大阪弁になります。

 前置きがやたら長くて、要領を得ない話とか、ごちゃごちゃした言い訳ばかりで、核心に触れない話とかを聞かせれた方が、ピシャっとやりこめるのに便利な大阪弁。
 「「すべった」「ころんだ」はエエから、はよ(早く)用例でも出しなはれ」「はい、はい」

 「あんたの話も、ようワケが分かりまへんなぁ。浮気がバレて・・・・嫁はんが預金通帳持って逃げて・・・浮気の相手から別れ話持ち出されて・・・・・「すべった、ころんだ」言うてるけど、ワイに何の相談や?何、カネ貸して欲しい?ほんなら、最初からそう言わんかい!このボケっ」

 用例として、いささか穏当を欠く用例のような気もしますが、実際のところ、こんな場面にぴったりの大阪弁やと思います。

<べんちゃら>
 う~ん、今や全国的に通用すると思うんですが、私らにとっては、コテコテの大阪弁、ということになります。お世辞のことなんですけど、「お世辞」と同じで、アタマに「見え透いた」とか「心にもない」とかが付くことが多いです。

 女性の使用頻度の方が高いような気もしますなぁ。

 「べんちゃら」にしろ、「お世辞」にしろ、それを言うのは下心がある男で、言われた女性の方は、「また~、そんな「べんちゃら」言うてぇ~、何も出えへんよ」と謙遜するのが、お約束といえば、お約束。

 昔、砂川捨丸、中村春代という大阪の漫才コンビがよく使ってました。こちらです。


 「また「べんちゃら」やろ?」とツッコむ春代に、
 「いやいや、今のは、「べんちゃら」とちゃう(違う)。「ほんちゃら」や」と返していました。「本気」の「べんちゃら」で、「ほんちゃら」ということなんでしょう。懐かしく思い出しました。

 いかがでしたか?次回をお楽しみに。