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第250回 京のユニークな街づくり

2018-01-12 | エッセイ

 お正月ですので(と、無理にこじつけて)京都の話題をお届けします。

 全国的に京都は人気があります。住みたい街とか、行きたい観光地とかのランキングでは、必ず、上位に顔を出します。歴史、文化、伝統の重みなんでしょう。

 一方で、京都人独特のプライドの高さとか、「イケズ」(意地悪)な振る舞いなどについて、(たいていは、京都人自らが)こき下ろす本も、話題になったりします(当ブログでも、「京都のイケズ」(第58回)として取り上げました)。最近では、京都出身の井上章一が「京都ぎらい」なんて、そのものズバリの本を出しています。

 好きにしろ、嫌いにしろ、何かを語りたくなったり、商売のネタにしたくなるのが「京都」というところのようで、つくづく不思議な街です。

 住んだことはありませんが、関西出身でもあり、京都は、それなりに馴染みのある土地です。なので、その手の本が出たら、割合こまめにチェックしてます。

 最近、そのチェックに引っかかったのが、「ときどき、京都人」(永江朗 徳間書店)です。
 著者の永江は、編集者を経て、現在は、エッセイストが本業ですが、茶の湯を本格的に楽しむために、京都市内の町家を改装、購入しました。そして、月の10日ほどは、京都で、残りは東京で、という生活を続けています。タイトル通りです。

 永江の京都に対するスタンスを一言で言えば、「自然体」ということになるでしょうか。とにかく自分の足で、実にこまめにあちこち行ってます。「よそもの」だからこそ見えるものに、素直に驚き、感動し、時に戸惑うこともありますが、変におもねることもなく、あくまでポジティブに受け入れ、心から楽しんでるのが、ストレートに伝わって来ます。久しぶりに心地よいエッセイ集に出会いました。

 その中で、京都の街づくりに触れている箇所がいくつかあります。いかにも京都的で、ユニークなので、まとめて、ご紹介しようと思います。

 なにはともあれ、下の画像をご覧下さい。お馴染みのお店が、京都ではこんな地味な看板を出してます(商品メニューとか、告知が、派手派手なのが笑えますが)。
 「京都市屋外広告物等に関する条例」によって、広告物に、ケバケバしい原色は使えません。白を基調に、グリーン、茶などの使用が基本です。私が若い頃、あの「マクドナルド」が、京都では、看板の色を変えた、というので、随分話題になったのを覚えています。きのう、今日の取り組みじゃないんですね。

 その後、2014年9月から、この条例が完全施行され、パチンコ屋のような点滅看板、ビルの屋上看板、そして、道路に張り出す袖(そで)看板などが禁止となりました。

 都心の繁華街などで、目立ってなんぼ、といわんばかりに、派手さを競う看板、広告が乱立してるのを見る(見せられる)たびに、腹が立ち「ちっとは京都を見習え」と、(無理は承知で)心の内で叫んでいます。

 次は、歩道の拡幅です。でも、やり方がハンパじゃありません。

 片側2車線の道路の、各1車線をまるまる歩道にするというものです。

 場所は、市内一番の繁華街である四条通の約1.4キロの区間です。2013年11月から始まった工事は、今も続いています。同じやるなら、これくらい大胆なことをやって欲しいもの。
 「広い歩道」に挟まれた「狭い車道」を、車の方が、遠慮しいしい走る。なかなか愉快じゃないですか。工事が完了したところは、こんな感じです。車道って、ずいぶん広かったんですね。

 車にとっては、渋滞がいい迷惑かも知れませんが、ちょっと迂回してもらえば済む話。歩行者、観光客もゆったりできるから、道沿いのお店も潤って、いうことなし。コロンブスの卵みたいな施策ですけど、実行に移してるのは立派です。

 最後は、交通信号の廃止。

 三条通の300mほどの区間にある信号(数は書いてませんでしたが、交差点の数からして、4カ所くらいじゃないでしょうか)を廃止しました。
 この周辺を「歩いて楽しい街なかゾーン」と名付けて、街歩きをゆったりと、楽しんでもらおうという取り組みの一環とのことですが、こちらも、負けず劣らず大胆な施策です。

 車にとっても、歩行者にとっても、信号って、鬱陶しいだけですからねぇ。なきゃないで、車も歩行者も気をつけるから、かえって安全向上にもつながるはず。
 交通安全と言えば、とにかく信号の設置。増えることはあっても、減ることはなく、結果、日本中が信号だらけとなってる現状には、うんざりします。

 お役所って、スローガンを作ったり、掛け声をかけるのは、好きで、得意ですけど、それだけで終わってるのが、実に多いです。
「歩いて楽しい」を実現するために、信号を廃止する・・・具体的な施策とセットで推進する京都のやり方を、是非見倣って欲しいものです。

 いかがでしたか?次回をお楽しみに。