過激なタイトルで、久しぶりに、「生き物」関係のアカデミックな話題をお届けしようと思います。
実は、これは、ブルーバックスシリーズの本のタイトルで、著者は、広島大学大学院生物圏科学研究科准教授の長沼毅氏です。生物とは何か、生命とは何か、というテーマに、進化、遺伝子などいろんなアプローチで挑んだ意欲作です。なかでも、我々の想像を超える超能力というか、耐性を備えた生き物の話が、群を抜いて面白く、私の好奇心、不思議心をくすぐります。
その世界で有名な生き物といえば、「クマムシ」でしょう。こんな虫です。
体長は、1mm前後のありふれた生き物ですが、過酷な環境にさらされると、カラダの水分をほぼゼロに近い状態まで脱水し、「樽」と呼ばれる状態になります。こうなると、上は151度の高温から、下は、絶対零度近くまで耐えることができます。X線での致死量は、57万レントゲン。人間の致死量は、500レントゲンですから、とんでもない強さです。宇宙空間での実験では、真空に強いことも実証されています。
総合力では、クマムシが、チャンピオン級ですが、微生物まで含めて、部門別に見ると、更にとんでもない生き物がいることが分かってきているというのです。
まずは、<圧力部門>です。チャンピオンは、お馴染みの「大腸菌」。少しずつ高圧に慣らすように培養を続けた結果、なんと2万気圧でも生きていることが確認されました。地球で生きていくには、どう考えてもムダな能力がいとも簡単に身に付いてしまうのが不思議。
次は<塩分>です。基本的に生物は、塩分に弱いのです。塩の浸透圧で、水分が抜かれ、体内のイオンバランスが崩れるからですが、「高度高塩菌」と呼ばれる菌のグループがある。なかでも、「ハロモナス」という菌は、塩分濃度30%の飽和食塩水(ちなみに海水の濃度は、3.5%)から、真水まで適応できるというからこれも驚異。
ついで<放射線部門>です。現在、この部門のチャンピオンは、「ディノコッカス・ラジオデュランス」というバクテリアです。1956年にアメリカで、食肉保存の研究のため、致死量レベルのガンマ線の照射を行ったのですが、生き残ったバクテリアとして「発見」されたものです。
このバクテリアが耐えられる上限値は、シーベルト単位で、「毎時」6000万マイクロシーベルト。ちなみに、人間の限度は、「年間で」、5万マイクロシーベルト。
最近、その秘密が明らかになったのですが、この菌はなんと4セットのゲノム(遺伝情報の総体)を持っているというのです。放射線でDNAの塩基が損傷しても、残るゲノムの情報と突合して、正しくゲノムを修復できる、ということらしい。う~ん、その能力いらんやろ?とツッコミを入れたくなります。
最後は、<長命部門>です。なんと、2億5000万年前の岩塩から生きて発見された「ハロバチルス」と呼ばれる微生物がダントツの世界一。恐竜が地球に出現する以前から生き続けているワケで、ここまでくれば、なにがなんだか分からない。ホンマかいな?
ざっと、こんなところですかな。
たまには、アカデミックな話題、いかがでしたか?それでは次回をお楽しみに。