眠れないので窓を開けた
雨音もしないくらいな
ほんの少しの雨が降っているようだった
水と土と植物の匂いが冷気と共に入って来て僕を包んだ
この匂いは月の匂いだと思った
蒼白く甘い月の匂い
目を瞑っているのに夜空に浮かぶ月が観えた
もっと月を観たくて
匂いを辿って嗅覚の触覚を窓の外まで伸ばした
甘い匂いは強まり
その後
雨が染み込んだ古い樹の匂いになった
そうして僕はもう森に居た
携帯に業務メールが入っていることに気付き返信したが
いつものように現実に引き戻されることはなかった
ずっと月を観ながら森の中に浮かんでいる
このままの状態で奏で
分かち合い
生きて死ねたらいい
瞑想の深みに入り
持続させ
日常の騒がしさを俯瞰することは
それがそのまま音楽だと思った