Rosa Guitarra

ギタリスト榊原長紀のブログです

『蒼』

2008-08-22 | ギターの栄養
カーテンの隙間から入ってくる青白い稲光が
細く鋭く、部屋の闇を切り取ってく

雷鳴がしないのをいいことに、ベランダに出て夜空を見ると
暗いグレーの空に、それより少しだけ明るいグレーの雲が
速い気流に乗って流されてゆく

いきなり広い空の左の方で光る
と同時に、空と雲の明暗が逆転する

今度は全体で光る、と同時にまた逆転する



「こんな面白いアトラクション、なかなか見れないよな
しかも、冴えた感じで美しいし…
こういうのを『草カンムリに倉と書いて読ませる方の【蒼】』
ってことなんだろうな…」とか
ブツブツ心の中で独り言をいいながら、しばらく見物するうち
法則性なく次々に左右全体と光る稲妻が
「空という広い舞台」で、大声で言葉を交わし合っている「神」
かなんかに思えてくる



この10階のベランダから、
今、目の前に見えているビル郡が、もし一つも無かったら
原始時代に、原っぱの真ん中で、独りで稲妻を見いてたら
きっと僕は怖いんだろうな

怖いから、きっと雷のことを「神」だとか思うんだろうな

だから「捧げ物」でもしないといられない気分になるんだろうな

そして、自分の中の負い目なんかを、神の前で懺悔したくなるんだろうな



人は、「現実での自分の声」が届かない相手のことを
こんな風に擬人化してゆくのだろう



ギターのことを「彼」とか「彼女」とか「友達」とか
「分かってくれた」とか「そっぽを向かれた」とか思うのも
言ってみれば「擬人化」という名の独り遊び

でも僕は、その遊びが好きなんだから、まぁいい






いつの間にか稲妻もおさまり
もっと夜が更けた頃、またベランダに出ると、目に入ってきたのは
ヒョロッと縦長に伸びた高層ビルの上の両角に
ゆっくり瞬いている、二つの赤い点滅灯


ん?サソリじゃん…
明らかに…巨大Roboサソリでしょ
十匹以上いるし…

(まだ、擬人化遊び続いてたんだ...自分)


中でも一番大きな奴が、右側しか点滅してない

ウインク?…
 いや…違うか…何かの信号…

(そろそろ今日は止めといたほうが良いよな、この遊び)


あっ!
僕という司令塔からの、出動命令を待ってるわけね?

ふ~ん…
じゃ
しばらくそこで待機せよ

(調子に乗りすぎるなよ  おまえ...)


とか考えながら、ベランダで煙草を吸ってると
今、体も脳も疲れ切っているからか
目の前の物が、大きな力を持ったかのような装いで、のしかかってくる

自分の中の自制心も効かなくなってゆく

(ほら、だから言ったじゃん)


何やら自分の内部がヤバい感じになってくる

(あ~ぁ... もう戻れない...)




思春期に、高校を辞めてアウトサイドに転がり出た
雑草のような「僕の中の不良」が目覚めてくる




古代人が文献とかに残した神って何なんだよ?
それを、研究してる行為ってのは何なんだ?
そんなものは、今も、いつも、そばに、沢山居るじゃん
近いうちに「神への反逆」っていう美しい曲を書いてやる




他に客が居ない喫茶店の2階で
静かに喫煙していた17歳の僕のセブンスターを取り上げ、
目の前で握りつぶした私服刑事に
「未成年が喫煙出来ないという法律の本質を言ってみろ」
と食ってかかった

その時の自分が、全く変わらず、今、ここに居る

負い目が無いことに対して受ける不条理に
物凄く、破壊的に反発する自分が
今も変わらずに居る


(危ないなぁ…  自分)

いや
危なくて全然良いんだよ

危ないってことを知ってる方が危なくないんだよ.......

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普段、全くテレビなんか見ないのに
たまたま夕べ見てしまった「DEATH NOTE」と
稲妻が「蒼」かったせいにして
もう眠ってしまおう...
コメント
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