欅並木をのぼった左手にあるお店

ちいさいけど心ほっこり、French!テイストなお店♪

残された伝言のそのあと

2012-07-12 | une nouvelle
月明かりのきらめきが寝静まった港の町に。
狭い通りの居酒屋。煙草の煙と熱気で白くかすむ店内。
サテンのドレスを着た踊り子が髪を振り乱し踊っているさなか、カウンターに座る男はじっと熱い視線をステージにむけるのです。
やがて、踊りが終わり、彼女はカウンターの方へ。
ねぇ、いつになったらわたしをここから連れ出してくれるの?
男はうつむいたままなにも答えません。
ウェイターにお酒をもらって、一気に飲み干す彼女は、
男ってみんなそうなのかしら? はっきりしないもの言いで女の心を揺さぶるばかりで・・。
もうひとりの踊り子が彼女に近づいてきて、耳もとでなにかをささやきます。
今日もこれで見納めかしら。また明日がわたしたちになにかをもたらしてくれるかしら・・。
彼女は男の横顔を鋭く見つめて、
ね、おやすみなさい。
ふたりが店の奥へと立ち去って、ウェイターがグラスを片付けにきます。
それはオレが払おう。
よろしいんですか?
男は財布から紙幣をとりだして、
伝えてほしいことがあるんだ。釣りはいらないから。
紙幣の大きさににウェイターは驚いて、
いいんですか。
男は静かに立ちあがって、誰もいないステージを見ながら、
ここにくるのも今夜が最後なんだよ。さっきあそこで踊っていた彼女に伝えてくれないか。
悪いけど、この町を離れることになったからと。
それだけでいいんですか。
ああ、頼むよ。
そう言って、男は店を出て行きます。

客のひいた夜更け。もうひとりの踊り子がウェイターの近くでお酒を飲みはじめて。
あの男の人、もう来ないんだってね。
ウェイターは親しげな口調で、
なんかひさしぶりに男の人を見たって感じだった。
ふたりにはつらい別れね。
でも、なにかすばらしいものを感じるよ。あのふたりにはまだなにか残されているような・・。
まだ続くってこと?
わからないけどね。不思議な巡り合わせはこんなんじゃ終わらない気がする。
そうなの?
でも・・。ウェイターは言います。
あんな恋愛を一度はしてみたいな。ああいうのを人生の輝きって言うんだ。
へぇ、そういう人、今いるの?
え、いないけどさ。
そう。踊り子の声が明るくなって、
わたしはよくわからないけど、人生の輝きなんて響き、嫌いじゃないよ。女心にうといどこかのだれかさん。


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3 Comments

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露を伝う縁の糸 ()
2012-07-13 15:44:21
見えないだけで実は傍に在る
物語を含んだ露が
細い糸を伝って
手のひらに・・・
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Unknown (makoto)
2012-07-13 23:56:28
このような詩が浮かぶのに、ブログには書かないのですね。
詩といっても即興だからと思っていらっしゃるんでしょうけれど、即興なら即興で、楽しい詩の集まりになるものと思ってしまいますけど・・。
ま、わたしが偉そうに言えたものじゃないですけれど

ちょっと訳あって、あさってからパリに行くんです。
フランス的な創作の力をいただきに・・。
というのは大げさですけれど、目指すはノートルダム教会。あそこで不思議な力をもらってきたいと思います。
雨で福岡空港まで行ければの話なのですが・・
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お気をつけて ()
2012-07-14 06:50:38
なにか呟いてみます(笑)
今、モノの創作を再開しました。
パリ、いいですねぇ
私もいつか教会や蚤の市に行ってみたいものです。
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