必然的なヒストリー

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【風林火山・レビュー】奇襲!海ノ口

2007-02-25 21:47:35 | 大河ドラマレビュー《風林火山》

突っ込む隙が無いとは、この事を言うのでしょうか!
45分という時間が非常に短かったです。
トメグループに近藤芳正が表示されているのを見てしまった時は開いた口が塞がりませんでしたが、そんな瑣末なことは吹き飛ばしてしまうような素晴らしい内容。

今回のお話なんて設定だけを借りた、とんだ架空エピソードなんですが「これが真実なのではないか」と思わせられるほどの物語の出来の素晴らしさ。
原作を弄くりまくって失敗したドラマというと最近では「サプリ」が思いつくのですが、この「風林火山」はオリジナル展開でも本当に話が良くまとまっていると思います。

で、物語の最初に信虎による選手宣誓。
仲代さんの話し方を見ていると去年の舘ひろしを思い出します。「一人残らず~、なぁで斬りじゃぁ~」とか去年と同じセリフを吐いていたし。この信虎なら喜んでなで斬りしそうですね。ミツの一件依頼、信虎の一言一言にそういう変態ぶりを感じてしまうのです。

で、この合戦の粗筋は簡単。武田信虎が海ノ口城を攻めた。簡単に勝てると思ったら、意外に苦戦。雪が降ってきたので、悔しいけれど退陣。
と、ここで晴信が殿(しんがり)を申し出ます。
しんがりといえば二階級特進並に命に関わる大事な作業。でも、しんがりは敵の追い討ちを防ぐ為の役目。平賀源心の追い討ちはないと見た変態は殿の必要性を感じず
「しんがりの栄誉がほしいのか~」
「この晴信がしんがりを務めて下さるそうじゃ~」
とのたまいました。本当にどこまでも憎たらしい変態です。晴信の秘めたる策も読めないくせに何をとぼけた事を、と思ってしまいました。変態趣味に続いて僻み根性まで持っているのかこのオッサンは。本当に救いようが無いです。

一方の平賀方。
勘助の策により篭城戦に勝利し、喜びに浸っている城主・平賀源心。
そんな状況を危ぶんだ勘助はすかざず献策します。
「(撤退する武田家へ)追い討ちを!」
平賀がこの時、武田家への追い討ちをかけていたら、武田家の命運は変わっていたかもしれません。変態は完全にヤル気をなくしていたし、晴信はこの時はまだ奇襲の準備は整っておらず、追い討ちをかければ必ず武田家に大きな痛手を負わす事が出来たはずなんですね。
皆が勝ち鬨を挙げている中、勘助ひとりだけが不安感を胸に。勘助には全て分かっていたのでしょう。このシーンには
「ああ、また主役の特権だよ。主役だから何でも分かっちゃうんだよね~」
というガッカリ感ではなく
「勘助ならそれぐらいは読めるだろう」
という説得力を感じたんですよね。
ああ、何でこの人は勘助の言う事を聞かないのだろう、と思いました。
それは防火の為の壁の泥塗り案とか武田方の穴掘り作戦を見破ったとか、この「追い討ち」を献策する前に如何なくその「軍師ぶり」を発揮していたからです。(それにしても穴掘り作戦て・・・。三国志や某国の将軍様じゃあるまいし。本当に武田方は本当にそんな策を採ったのでしょうか)

晴信は軍を引き返し、海ノ口城へ。油断している平賀方にはなす術もなく。
おっと、ここで千葉真一の殺陣ですか。松方弘樹(ハケンの品格で篠原涼子と対決)に続いて、千葉真一も殺陣を披露。亡き深作監督も千葉さんの素晴らしさに彼岸で感動のあまり咽び泣いておられることでしょう。
そして、心配したのは幼い姫。本当に死ななくて良かったです。去年だったら、「何の罪も無い幼い姫を死ぬ設定」にして「合戦の悲劇」を強調しそうなものですが、今年の脚本はそんな野暮な事はしません。そうなんです。むやみやたらに殺生をしないところが(変態信虎は除く)今年のドラマのいいところ。まさしく近藤芳正よ、グッジョブ。よく姫の生害を止めてくださいました。三谷監督もお喜びであらしゃいましょう。
そして菅田俊、まさしくVシネマの『組長』みたいなご最期、迫力がありました。(琉河的には、この役は中尾彬さんが良かった)

で、琉河の本音。私は「実際の」この合戦は圧倒的な武田方の勝利で終わったと思っています。晴信は後詰めで何も手柄を立てることが出来なかったと思っています。資料を提示できるような根拠はありません。ただ、話が良く出来すぎている為そう感じただけです。
「初陣の晴信、見事な奇襲作戦で逆転勝利!」
なんか匂うのですよね。
信虎が初陣の晴信にしんがりを許したとも思えず、また仮に晴信にしんがりを許しても息子の能力を侮っていた信虎が奇襲までは許したとは思えない。そして、当時の晴信が命令違反を犯してまで奇襲をかけたとは思えないからです。ということで良い機会だと思いほんの少し調べてみたら、平賀源心の実在どころか、この合戦が史実であった事すら疑われているようですね。うむ、一体どれが史実なのやら。

次回、最終回でもないのに、主役の勘助が討たれるそうです。そりゃ、大変だ!(棒読み)。そして、小日向さんの姿がチラリと。ということはあのヒロインが遂に登場ということですね!
いよいよ物語は井上靖の作り上げた世界に向かっていく模様です。



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26 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ええ~! (くう)
2007-02-25 21:58:11
そうなんですか~(◎-◎)
晴信が、戻って城を落としたと言うのは史実では
ないのですか~!
まるで本当の事のように感じてしまいました。
全然ウソくさくないし。
本当に、今年の大河の出来の良さには脱帽ですわ~!
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はじめまして (なおみ)
2007-02-25 22:07:44
はじめまして、こんばんわ。お邪魔します。
凄い丁寧なレビューですね、拝見していて勉強になります。
今日も面白かったですね。全く飽きさせない45分間ですよね。「静と動」「光と影」上手いなあと毎週感心しています◎
TBさせていただきます、宜しくお願いします。
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こんばんは! (ぱるぷんて海の家)
2007-02-25 22:19:02
確かに今年の脚本家氏は素晴らしいと思います。
このままオリジナルで通してほしいくらい。
すべてに説得力あるんですよね。
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http://plaza.rakuten.co.jp/fuwa2yura2/ (のの雪)
2007-02-25 22:26:17
面白かったですね!!
スリルもあって作戦を見破るところとかも
ワクワクしてしまいました*^^*
来週も楽しみ♪
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真実は闇の中(笑) (琉河岬)
2007-02-25 22:49:32
くうさん、こんばんは!

>晴信が、戻って城を落としたと言うのは史実では
ないのですか~!
誤解を招く書き方をしてしまい申し訳ないです。
私も詳しくは申せませんが、この合戦の史実性を疑っている方もいらっしゃる様子です。
晴信の奇襲については、信虎の懲罰(勝手に行動を起こした罪)を怖れてしていないんじゃないかな、とふと私が思っただけですので、くれぐれも鵜呑みにはしないで下さい。
晴信自身の能力については言うまでもありませんよね。父親よりも人格的にも戦略的にも上回っていることは十分に伝わってきますね。
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絶妙なバランス感が好きです (琉河岬)
2007-02-25 22:56:23
なおみさん、こんばんは!
はじめまして。こちらこそ、よろしくお願いします。

長々と、まとまりがない箇所もいくつかありますが、そういって頂けると大変嬉しいです。ありがとうございます。
風林火山は仰るように「静と動」「光と闇」がバランス良く配分されていて、視聴者を飽きさせないですよね。前評判と違い、視聴率が高い理由もよく分かる気がしました。
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いっそ、このまま (琉河岬)
2007-02-25 23:03:59
ぱるぷんて海の家さん、こんばんは!

>このままオリジナルで通してほしいくらい。
まさしく同意見です
井上靖さんの原作は確かに渋味と重厚さはあるのですが、今までのオリジナル展開の方が見ていて血肉湧き踊るんですよね~。原作の時代へと突入していくこれからの展開も楽しみです!
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スリル!ショック!サスペンス! (琉河岬)
2007-02-25 23:07:43
のの雪さん、こんばんは!

もう今回は「星三つ」状態です。ともすれば10分ぐらいで終わってしまうこの合戦で1話丸ごと間延びせずに使い切った脚本は素晴らしいと思いました。本当にワクワクしたお話でした。
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いや~ (もちきち)
2007-02-26 00:28:28
「サプリ」と一緒にしちゃいけませんよ。
あれは別格です。原作に忠実すぎるドラマも
興ざめですけど。
源心の娘の美瑠姫ですが、私は“将来勘助が
由布姫を命がけで守る動機付けのために”
殺されちゃうかも、と心配してしまいました。
この時美瑠姫を守れなかったから、由布姫は
絶対守るぞ、みたいな感じで。
でもなんとか逃げ延びてたので、ほっとしました。
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こんばんは♪ (ミチ)
2007-02-26 00:56:35
いままでがオリジナル部分だったのですね~。
これからもあまり原作に忠実でなくてもいいから(暴言!)面白い大河にしていただきたいものです。
命を助けられた平賀の娘は再登場するのでしょうか?
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