全国100カ所ほどで障害者グループホーム(GH)を運営する会社、恵(めぐみ)(東京)の不正問題を受け、愛知県と名古屋市は近く県内5カ所の事業所指定を取り消す。国が組織的な不正と認めれば、12都県にある他のGHでも順次、運営が不可となる。利用者の生活環境が激変することがないよう、行政や関係者に配慮を求めたい。恵のGH5カ所では、利用者から実際の3倍に上る食材費を徴収していたほか、勤務実態のない職員が働いたように装ったサービス報酬の過大請求が発覚。不正の総額は億単位に達するとみられており、運営する資格がないと判断されても当然だろう水戸市のGHでは昨年、食べ物をのどに詰まらせて死亡する事案も起きていた。利用者は5カ所に140人、全国に計2千人。県市は取り消し処分を下しても、「直ちに閉鎖」ではなく、一定の猶予期間を設ける考えだが、スムーズに他施設に移れるよう、支援が必要だ。環境の変化が苦手な人も少なくない。可能な限り、同じ条件下で暮らせるよう、別の運営主体に引き継ぐなどの対処も考えてほしい。GHは心身に障害がある数人から20人ほどが共同生活する。かつては昼間は作業所などに通い、夜だけ過ごす「夜間型」だった。障害者の高齢化や重度化による需要増を受け、国は2018年、24時間対応の「日中型」を新設した。サービスが手厚い分、報酬が増えたこともあり、民間企業が参入。恵も18年、名古屋市緑区に第1号を開設し、一気に全国展開した。GHは元来、利用者の家族らが運営するケースが多かったこともあり、規制が緩い。国が定める研修や実務経験を積んだ責任者1人は必須だが、施設に常駐する必要はない。世話をする人に資格や経験は求められない。企業は利益優先になりがちで、日中型の導入以降、質の低さが指摘されていた。国は本年度、運営の透明性を高めようと「地域連携推進会議」制度を創設。25年度から事業所ごとの設置を義務付ける。利用者の家族や自治会、商店主らがメンバーとなり、定期的に施設を訪問。利用者の様子や職員の対応、施設環境を点検し、「ケアの質」向上につなげる狙いだ。障害の有無や年齢にかかわらず、地域でともに生きる-。地域社会そのものの衰退が叫ばれる時代であればこそ、GHの理念を思い起こしたい。
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