イスラエルによるパレスチナ自治区ガザへの攻撃で住民の犠牲者が4万人を超えた。繰り返される惨劇を前に無力感すら漂うが、傍観は国際社会の倫理を崩す。各国はいま一度停戦に尽力すべきだ。
ガザではイスラエル軍の無差別攻撃が続いている。今月10日には学校が空爆され、女性や子どもら100人以上が死亡。同軍は学校がイスラム組織ハマスの司令部だったと釈明したが、証拠は示さなかった。
10カ月超の戦闘で死者が4万人を超えたことについて、ターク国連人権高等弁務官は「世界にとって恐ろしい節目」と語ったが、がれき下には1万人以上の遺体があると推測される。人口の9割の約190万人が避難民で、栄養失調など人道危機は深まる一方だ。
停戦交渉ではバイデン米大統領が5月に示した停戦案にハマスは同意したものの、イスラエルがガザとエジプトとの境界掌握といった条件を追加。ハマスのハニヤ最高指導者が7月に訪問先のイランで暗殺され、暗礁に乗り上げた。
一連の動きはイスラエル国内でも、同国のネタニヤフ首相による停戦つぶしという見方が強い。
暗殺をイスラエルの犯行とみるイランは報復を宣言。イスラエル防衛を掲げる米軍との緊張が高まったが、ネタニヤフ氏の狙いが米国を巻き込んだ地域の緊張激化によって自らの政治的延命を図ることにあるという観測が強く、イランは軍事報復を自重している。
バイデン政権は停戦の仲介を続けているが、求心力に欠け、国際社会には手詰まり感も色濃い。
しかし、想起すべきは7月に国際司法裁判所が下した判断だ。
ヨルダン川西岸などイスラエルの占領地での入植活動を国際法違反と断じ、看過してきた国際社会の「不作為」を指摘。各国には占領の維持につながる援助などをしない義務があると踏み込んだ。
イスラエルのガザ攻撃も国際法に反する以上、同様の論理が停戦についても通用しよう。米国に一任せず、各国はイスラエルの攻撃を止める責務を果たすべきだ。平和国家を国是とする日本が例外でないことは言うまでもない。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます