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◆<東京新聞社説>技能実習生事件 制度の非人道性に迫れ

2023年01月31日 08時58分29秒 | ●YAMACHANの雑記帳
 死産した双子の遺体を自宅に放置した死体遺棄罪に問われ、有罪判決を受けたベトナム人元技能実習生の上告審で、最高裁が二月二十四日、弁護側と検察側双方の主張を聞く弁論を開く。弁論は判決変更の際に必要な手続きで、判決が見直される可能性が出てきた。逮捕から判決に至るまで、外国人実習生の妊娠出産を巡る孤立した状況への無理解が批判されてきた事件だ。有罪判決が適正だったか、審理を尽くすよう求める。一、二審判決などによると、被告のレー・ティ・トゥイ・リンさんは技能実習生だった二〇二〇年秋、熊本県内の自宅で死産した男児二人の遺体をタオルに包んで段ボール箱に入れ、一日余り室内の棚の上に置き続けたとされる。リンさんは無罪を主張したが、一審の熊本地裁は一連の行為が遺体を隠し、国民の宗教的感情を害するものだったとして懲役八月、執行猶予三年の有罪判決。二審の福岡高裁は、遺体を放置したと認めるには時間が短いとして一審判決を破棄したが、二重の箱に入れたことなどを「隠匿」と認めて死体遺棄罪成立を認定した上で、実習を続けるために出産を隠そうとした事情を酌み、懲役三月、執行猶予二年に減じた。最高裁では遺体を二重の箱に入れ、封をした行為が隠匿に当たるか否かが検討される見通しだ。リンさんの有罪判決を巡り、無罪を求める九万人の署名や出産経験者や宗教家ら百二十七人の意見書が最高裁などに提出されている=写真は昨年四月の支援者らの記者会見。弁論への重い扉を開くには世論の力もあったのだろう。妊娠による強制帰国を恐れ、雇用先に妊娠を知られないようにしてきた実習生は少なくない。病院に行けず孤立の中で死産を経験する人もいる。リンさんの事件は過酷な状況の一端に過ぎない。技能実習生は安価な労働力として扱われ、非人道的な労働環境や処遇が問題視されてきた。女性の妊娠出産にかかわる自己決定権を脅かす人権侵害の制度でもあるなら、政府は廃止を含めて抜本的に見直す必要がある。最高裁の弁論がその第一歩となることを望む。

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