北朝鮮が4日、日本列島を飛び越える形で弾道ミサイルを発射したことで、自民党では相手国領域内で軍事拠点などをたたく敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有を求める声がさらに強まりそうだ。しかし、北朝鮮は発射手段を多様化させているため、実際に敵基地をたたいてミサイル攻撃を防ぐのは難しい。国内の原発を標的にされれば被害は甚大となる上、国民避難も容易ではない。(川田篤志)
北朝鮮は今回発射した中距離弾道ミサイル(IRBM)と同種のものだけでなく、日本を射程に収める短中距離ミサイルを100発以上保有しているとされる。
発射技術も年々向上している。山岳地帯などの地下施設に隠した移動式発射台から短時間で発射する態勢を整備。鉄道貨車や潜水艦から発射する能力も開発中で、発射位置を事前に探知して攻撃するのは極めて難しくなっている。
政府は年末の「国家安全保障戦略」など3文書の改定に合わせ、敵基地攻撃能力の保有を検討中。有事になれば日米安保条約に基づき日米両国で対処することになるが、日本が敵基地攻撃能力を保有したとしても、北朝鮮のミサイル攻撃を完全に防げるのか不明だ。
自民党の稲田朋美元防衛相は4日、記者団に対し、現行のミサイル防衛(MD)システムだけで全て撃ち落とすのは困難だと指摘し、「日本の防衛を確固たるものにするため反撃能力を持つべきだ」と主張。佐藤正久参院議員も「反撃能力を持てば北朝鮮の抑止につながる」と訴えた。
だが、自民党のベテラン議員は「何発も発射されたら日本は迎撃できない。今は外交努力をいかに頑張るかなのに、党の会議では国防の意見ばかりだ」と懸念を示す。
ウクライナでは、ロシア軍が原発を攻撃しており、安全保障上のリスクが顕在化している。日本国内には廃炉や未稼働施設も含め計60基の原発がある。今回のミサイル発射では政府が全国瞬時警報システム(Jアラート)で国民に避難を呼び掛けたのは、日本上空を通過する2分前。国民の避難も難しい状況だ。
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