http://www.asahi.com/international/update/0502/TKY201105020162.html
オバマ米大統領は1日夜(日本時間2日)、ホワイトハウスで、2001年の米同時多発テロを首謀したとされる国際テロ組織アルカイダの指導者オサマ・ビンラディン容疑者が死亡した、とする声明を発表した。米側がパキスタンの首都イスラマバード郊外で殺害し、遺体を確保しているという。同容疑者の死亡によって、約10年に及ぶ米国のテロとの戦いは大きな節目を迎えた。
オバマ大統領は声明の冒頭で「米国の作戦によってオサマ・ビンラディン(容疑者)が死亡した、と報告する」と述べた。就任直後からビンラディン容疑者を拘束か殺害することを、最優先課題にしてきたとし、「アルカイダ打倒の戦いの中で、最も大きな成果だ」と強調した。
声明によると、米政府はパキスタン当局の協力で昨年8月、ビンラディン容疑者がパキスタンの拠点に潜伏していることを突き止めた。先週、身柄を確保するための作戦に乗り出すことを決め、オバマ大統領の命令で1日、同国北部アボタバードの潜伏先で作戦が実施された。ビンラディン容疑者は銃撃戦の末に死亡し、遺体は米政府側が確保したという。
ビンラディン容疑者の死亡によって、アルカイダの求心力が大きく低下することは間違いない。今年7月に、アフガニスタンからの駐留米軍撤退を始めるオバマ政権にとって、極めて大きな成果と言える。
一方、指導者を失ったアルカイダ側が、欧米を標的にした「報復テロ」の動きを強めるおそれもある。
このため、オバマ大統領は「我々は国内外で警戒心を保たねばならない」と、テロへの警戒を呼びかけた。また、「米国はイスラム世界と戦争しているわけではない」とも述べた。
米同時多発テロの直後、ブッシュ前米大統領はアフガニスタンのタリバーン政権に対し、国内に潜伏しているとされた同容疑者の引き渡しを要求したが、タリバーン側が拒否。これを受けて米英軍はアフガン攻撃に踏み切った。
同容疑者はその後もアフガン東部での度重なる空爆を逃げ延び、アフガンと隣国パキスタンにまたがる山岳地帯に身を潜めてきたとされる。同地域の住民はタリバーンの主要構成民族だったパシュトゥン人で、アルカイダを「神の軍隊」と敬い、排他的な部族社会の中で隠れ家を提供してきたとみられる。情報提供者への報奨金にもかかわらず、米軍の情報収集は困難を極めた。
米当局によると、ビンラディン容疑者は米同時多発テロ事件に主犯として関与した疑いが持たれている。事件は4機の旅客機がハイジャックされ、ニューヨークの世界貿易センタービルに2機、ワシントンの国防総省に1機が突入。ピッツバーグ郊外では1機が墜落した。合計で3千人近くが死亡した。
米当局はテロ実行犯として旅客の中から19人を特定。うち数人をアルカイダのメンバーと確認し、指導者であるビンラディン容疑者を首謀者と認定した。同容疑者は04年10月、中東の衛星テレビが放映したビデオで、米同時多発テロへの関与を初めて認めた。
同容疑者は、サウジアラビアで建設業で財をなした富豪を父に生まれた。旧ソ連がアフガンに侵攻した1979年以降にイスラム・ゲリラに参加。湾岸戦争でサウジが米軍駐留を認めたことへの反発から反米闘争を始めた。
93年の世界貿易センタービル爆破事件でも資金援助した疑いがあるほか、98年のケニア、タンザニア両国での米大使館爆破テロ事件でも首謀者だったとされている。(ワシントン=望月洋嗣、イスラマバード=五十嵐誠)
☆果たしてテロとの戦いの大きな節目になってくれれば良いが。楽観視するのはまだ早い。(合掌)