つばた徒然@つれづれ津幡

いつか、失われた風景の標となれば本望。
私的津幡町見聞録と旅の記録。
時々イラスト、度々ボート。

津幡町での初めて物語②

2012年05月03日 11時06分50秒 | 初めて物語
“シリーズ津幡町での極めて個人的初体験”。
「今日の一枚」は、左右を建物に挟まれた「名もない狭き川」。
今から36年前、昭和51年(1976年)の夏の午後、
僕はここで、生まれて初めて「泳ぐ蛇」を見た。

目撃した時期や光景を鮮明に覚えている理由は2つある。
1つは「鮮やかな対比」だ。

下水道が完備された今と違い、当時の姿は典型的なドブ川。
周囲からの汚水が注ぎ込み、時折異臭を放ち、濁っていた。
その水の上を往くのは、一匹の「白蛇」。
細長い体をくねらせながら滑るように進んでいたのである。
茶色く淀んだ水。
目が覚めるほど真っ白な蛇。
強烈なコントラストが目に焼きついた。

もう1つの理由は「畏敬の念」。

僕は、ある人物と白蛇とを重ね合わせていたのである。
その人の名は「ナディア・コマネチ」という。

        

当時ちょうど、日本から遠くカナダ・モントリオールでは
夏期五輪大会が開催中。
「コマネチ」が所属するルーマニア女子体操代表チームのレオタードは、
腕から腋~腰にかけて走る三色の細いラインと、胸元の国章の他は純白。
中心選手だった彼女は“白い妖精”と呼ばれ、
競技史上初の10点満点を7回も記録し、
金3個、銀1個、銅1個のメダルを獲得。
圧倒的に強く美しく、同時にどこか冷たい印象を抱いた。
独裁政権下の社会主義国。
謎のベールに包まれた東欧の国の少女。
演技中の憂いを含んだ厳しい眼差し。
こうした点から、勝手に一種近寄り難いような、
孤高のイメージを持ったのかもしれない。

誰にも邪魔されず、汚れた水にも染まらずに泳ぐ、一匹の白く美しき蛇。
前評判の高かった赤い大国・ソ連を凌駕した、純白の美しきアスリート。
どちらも決して手が届かない、少年の日の「憧れ」だったのである。

 

(※2011年6月11日の投稿に関連記載あり)
コメント
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