つばた徒然@つれづれ津幡

いつか、失われた風景の標となれば本望。
私的津幡町見聞録と旅の記録。
時々イラスト、度々ボート。

夏の津幡で、初遭遇。

2010年08月11日 07時21分02秒 | 日記
「今日の一枚」…画面右手のパラボラアンテナを配した建物は、
かつて津幡町の「商工会議所」だった。
かつて僕は、ここで意外な生き物に出会った。

あれは35~6年前の夏、小学校からの帰り道。
ちょうど写真と同じアングルで商工会議所に近づいて行くと、
建物の前に数人の大人が集まって、何やらワイワイと盛り上がっている。
辺りに響く賑やかな声に興味を引かれ輪の中に入ってみると、
座の中心には青い大きなポリバケツが。
プンプンと潮の香りを放つバケツの中には、生きた「真蛸」が漂っていた。

それまで、僕が見たことのある蛸と言えば、せいぜい図鑑の写真か、
パック売りでスーパーの店頭に並んだものくらい。
茶色っぽくてデコボコした皮膚に、張りのないグニャグニャとした身体。
初めて目にしたそれは、何とも奇妙奇天烈な印象だった。
不思議そうに眺める僕の様子を見て、大人達が口々に説明してくれた。

蛸は能登の海で捕まえてきた。
これから、塩で揉んでヌメリを取って湯がく。数分あれば、真っ赤に茹で上がる。
足先から湯の中へ入れると、上手い具合に丸まって調理しやすくなる…等々。
どれも初めて聞く話ばかりで、いちいち頷きながら耳を傾けていた僕に、
ある大人が、笑いを浮かべながらこうもちかけてきた。
「触ってみるか? 但し吸盤には気をつけろ。吸いつかれたら取れなくなるぞ」
僕は、恐る恐る手を伸ばし、蛸の頭を指で押してみた。
見た目の通り、グニャグニャと柔らかい。
「なるほど、軟体動物とはこういうことか」と、腑に落ちる。
生きているとはいえ、かなり弱っているらしく、激しい動きはない。
吸盤に吸い付かれる心配もなさそうだ。…僕がホッとした、その時。
バケツから何かが飛んできたかと思うと、僕の顔から制服の胸元を黒く染めた。
正体は墨である。

いきなりの攻撃にビックリし、所々黒くなった僕の様子を見て大人達が笑い、
つられて僕も大声で笑った。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする