林 住 記

寝言 うわごと のようなもの

刈干切唄

2006-10-04 | 歌の翼に

[芸能山城組]は,やくざの[組]ではなく、堅気のパフォーマンス集団で、合唱もする。
合唱では、バリ島のケチャや、ブルガリアンポリフォニーで知られている。
指揮者は山城祥二氏。音響学専攻の学者のはず(詳しくは知りません)。
大昔、会社の運動会で、仮装してケチャを披露した部があって、以前から関心があった。

たまたま見つけて、「入門」、と書いてあるCDを買った。
吃驚仰天、驚天動地ものだった。

特に驚いたのは民謡「刈干切唄」だ。

 ここの山の
 刈り干しゃ 済んだよ
 明日は たんぼで
 稲 刈ろかよ

 もはや日暮れじゃ
 さこさこ 翳(かげ)るよ
 駒よ 往(い)ぬるぞ
 秣(まぐさ) 負えよ

 秋も すんだよ
 田の畦道をよ
 あれも嫁じゃろ
 灯が五つよ

野太い男性合唱を従えて、高音の地声と裏声が混じる日本民謡の発声で、女性が朗々と歌う。
宮崎県高千穂地方の高原の秋の空気が、ヒリヒリと感じられる。
小節を効かせた唄は、哀愁切々として、日本人の遺伝子に直接響いてくるのだ。

管弦楽に編曲した雅楽や邦楽は、時々聴く機会があり、それはそれで良かった。
だが、こういう合唱は初めての経験だった。

このCDには、わらべ歌、小唄、童謡など意表を衝く合唱ばかりか、恐山(おそれざん)や仏教の輪廻を主題にした構えの大きな曲もある。

「入門」と称しているから、ヨーロッパ民謡、アジア民謡(勿論ケチャも)、アフリカ民謡まで収録している。

いずれの合唱曲も、背中がゾクゾクしてくる。深夜、灯りを消して聴くのがいい。
不思議な迫力のある名曲揃いです。

参考記事。

CDタイトル=芸能山城組入門 ビクターエンタテインメント発売 VICL-23094


政治と言葉

2006-10-04 | 拍手

丸谷才一先生の随筆を愛読している。
洒落ているし、意外な紹介があって大変勉強になる。
森男にとって初めての話題でも、養老先生と違って、親切に説明してくれる。
英文学者でもあるのに、カタカナ語は滅多に使わず、美しく明晰な日本語を使う。
日本語は曖昧だといってるヤツは、自分の脳味噌がアイマイなのだ。

褒めるのが上手い。
悪口を言う場合でも、やんわりと、愛情を込めて、品良く書いている。
森男の品の無さとは好対照、と言うのも僭越至極。

丸谷先生が、朝日新聞で月1回連載している「袖のボタン」で、安倍批判をしている。
「政治と言葉」(10/3)という題です。
例によって膨大な知識の中から、歴代総理が愛用した四文字熟語で夫々の業績(または不行跡)を定義づけた後、安倍さんに言及。

これが、辛辣にして愉快。これほど厳しい丸谷先生を読んだことが無い。
一寸長くなるが、要所(実は全部が要所だが、それでは疲れるから、勝手に抜粋)転記します。

☆「美しい國へ」を読んで、小首を傾げたくなった。
本の書き方が不器用なのは咎めないとしても、事柄がすっきり頭に入らないのは困る。
挿話をたくさん入れて筋を運ぶ手法はいいけれど、話の端々にいろいろ気掛かりなことが多くて、それをうまくさばけないため、論旨がうまく展開しない。
議論が常に失速する。得意の話題である拉致問題のときでさえそうだった。

☆一体に言いはぐらかしの多い人で、そうしているうちに話が別のところに移る。
これは言質を取られまいとする慎重さよりも、言うべきことが乏しいせいではないかと心配になった。
すくなくとも、みずから称していう「闘う政治家」にはかなり距離がある。
当然のことながら読後感は朦朧としているが、後味のように残るのは(以下略)、戦前的価値観への郷愁の人という印象であった。

☆近代民主政治は、血統や金力によらず、言葉で行われる。(以下勿体無いが略)
しかし今の日本の政治では、相変わらず言葉以外のものが効果があるのではないか。
わたしは二世、三世の国会議員を一概に否定する者ではないけれど、その比率が極めて高いことには不満をいだいている。
「美しい国へ」でも、父安倍晋太郎や祖父岸信介や大叔父佐藤栄作の名が然るべき所に出て来て、なるほど、血筋や家柄に頼れば言葉は大事ではなくなるわけか、などと思った。

安倍さんは多忙だから、この随筆は読まないだろう。
だが、森男は丸谷先生のお蔭で、曖昧朦朧とした安倍さんへの不快感がスッキリした。
毛並みの良さはよく分かっているから、後はお手並みを拝見しよう。

・・・・ここで終れば、品がいいのだが、以下森男のボタンを縫いつけます。・・・

丸谷先生と、劇作家の山崎正和先生の対談集に、「日本の町」がある。
非常に刺激的でためになる都市論です。

日高市役所のある幹部職員が、ある問題で困っている時に、解決策のヒントにならないまでも、いずれ参考になるだろうからと、この本を差し上げた。
最近別の問題でまた困っているようだから、探りを入れたら全然読んでないんですね。

以前、教育委員会が主催した観光行政に関する公開講座で、観光学会の権威と言われる立教大学教授の講演があった。
非常に有益な内容だった。
しかし市の担当幹部たちは、時候の挨拶だけして講義を聞かずに全員帰ってしまった。

日高市の幹部職員も、親戚同士の二世三世が多いんです。