代替案のための弁証法的空間  Dialectical Space for Alternatives

批判するだけでは未来は見えてこない。代替案を提示し、討論と実践を通して未来社会のあるべき姿を探りたい。

共謀罪、可決されれば密告社会

2006年04月27日 | 政治経済(日本)
 何やら共謀罪が明日にでも強行採決される可能性があるらしいです。締め切り原稿に追われてこの間ブログも書いていなかったのですが、今の状況は本当に恐ろしい。何か行動したくても、仕事と育児に追われて何もできない自分がもどかしいです。共謀罪法案の何が恐ろしいと言っても、あの法案のまま可決してしまうと、いずれ治安維持法下の1930年代の日本、文化大革命時代の中国、秘密警察の支配した旧ソ連・東欧諸国、あるいは現代の北朝鮮に見られるような、「密告社会」が形成されてしまう可能性が高いことだと思います。

 犯罪を実行していなくても、冗談ででも犯罪の相談をすれば罪に問われる。そして密告した人は罪に問われず、密告者以外の人々が逮捕される・・・・。
 あらかじめ市民団体に潜入したスパイが直接行動の相談を持ち出して、その上で「密告」し、市民活動を根こそぎに封じこめてしまうことが可能になります。マハトマ・ガンジーやマルティン・ルーサー・キングのような非暴力直接行動であっても、そしてそれを実行していなくても、十分に罪に問うことが可能になります。
 さらには「密告者」の周到なデッチ上げによって、「犯罪謀議」が偽造され、冤罪に陥れられるケースも発生することでしょう。恐ろしいことです。

 さんざん中国の文革や北朝鮮の体制を批判するネットウヨクの方々こそ、日本社会がそうならないように共謀罪に反対の声をあげるべきだと思います。日本と米国は「自由・民主主義・市場原理という共通の価値観を持っている」という親米右派の方々の多くが共謀罪を支持してるみたいだから何とも不思議?? こんな法案が通ったら、「自由」も「民主主義」も「人権」も根こそぎにされちゃうのに・・・・。

 私の中国の知人は文化大革命中、父親がロシア語をしゃべれるというだけで、「あいつはソ連のスパイだ」と密告され、お父さんは逮捕されてしまったそうです。お父さんが逮捕された後、その方は学校では毎日毎日いじめを受けることになったそうです。

 密告社会の恐ろしさというのは私にも経験があります。私は中学生時代、学校の番長グループに睨まれ、いじめを受けていました。学校の帰り道、思いあまって信頼していた友人に番長グループの非道な行為の数々を漏らしたことがありました。次の日、私は番長グループに体育館裏に呼び出されてボコボコに殴られました。その友人は、私の発言を番長グループに「密告」していたのです。(思い出したくもありませんが・・・)

 それ以来、私は極端な人間不信に陥ってしまいました。基本的におしゃべりな人間だったのですが、そのショックの後、非常に無口な人間になってしまいました。中学校に行って、誰とも口を交わさずに帰ってくるという日もありました。辛かった。あの心の傷から回復するにはずいぶんと時間がかかったものです。
 「学校」という限られた空間のみではなく、社会全体にああいう状態が広まったら如何に恐ろしいことになるかと思うとゾッとするのです。
 文革時代の中国なんか、まさにそういう状態だったのでしょう。戦時中の日本もそうです。まさに「国民総スパイ」。何処に誰の目が光っているか分からない。思っていることを迂闊に口に出すこともできない・・・・。

 密告で罪をデッチあげられる可能性があるのなら、市民は怖くなって市民運動など何もできなくなってしまいます。だってどこにスパイがいるのか分からないのですから・・・。疑心暗鬼で人間不信になり、人前では何も発言できなくなるでしょう。ちょうど中学生の頃の私がそうなってしまったように・・・・。人間同士がお互いを信頼できなくなり、社会の和はズタズタに破壊されるでしょう。
 私は、市民相互を監視させ、密告させ合う社会というのが、およそ考えられる中で最悪の体制だと思います。もっとも人間の尊厳が奪われた状態だと思うのです。
 だから共謀罪に大反対なのです。

 民主党・共産党・社民党の議員の皆様、最後の抵抗を見せてください。お願いいたします。
 


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23 コメント

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密告 (ふるちん)
2006-04-27 21:08:33
「共同謀議」と書くとなんとなく犯罪めいて見えますが…



文革時代、スターリン時代は相当ひどい時代だったようですね。大学受験のため学んだ世界史は大体現代史までたどりつかないので、そういうことは大人になってから知ったことが多いです。



これは全くの私見なんですが、20世紀最大の悪人としてヒトラーをあげる人は多いと思います。確かに彼が善人だった訳はないでしょう。しかし、周りの部下を次々と虐殺はしてないはずですし、密告による恐怖政治は行ってないと記憶しています。



20世紀最大の悪人たち、それは毛沢東、スターリン、ポルポト、あるいはアミン

だと思います。理由のない、根拠のない不安を国民、部下たちに与えるということは。タイムマシーンに乗ることができてもその時代のソ連、中国には行きたくないですね。



ですから、私も共謀罪を唱える人間は「凶暴罪」だと思います(苦笑)
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出きることをいたしましょう。 (こば☆ふみ)
2006-04-27 21:41:05
代替案さん はじめまして 南信州から失礼します。

共謀罪の審議は28日午前9時30分から再開されるようです。出来ましたら法務委員長(司会)の石原伸晃さん(03-3508-7904)理事の早川忠孝さん(03-3508-7469)平沢勝栄さん(03-3508-7257)漆原良夫さん(03-3508-3639)の議員会館事務所にお電話してみるのも良いかもしれません。ご自分の言葉で「不安」を秘書さんに語ってください・・・。どうもあと5時間ほどの審議で採決されるように聞いております。とにかく動きましょう。
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ふるちん様 ()
2006-04-27 23:05:55
 ヒトラー時代でも、ユダヤ人や共産党員などをターゲットとした「密告」はひどかったように思えます。米国でも、マッカーシーによる「赤狩り」体制下で「社会主義者」をターゲットにした密告は奨励されました。

 スターリン、毛沢東、ポルポト、アミンに関してはもう言語を絶します。

 右の支配でも左の支配でも密告社会は形成され得ると思います。

 
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こば☆ふみ様 ()
2006-04-27 23:12:20
 情報ありがとうございました。もう頭の整理もできないうちに悪法が続々・・・・・。これがあの思考停止的9・11郵政選挙の必然の帰結ですね。



 夜なので、とりあえず各議員にメールを出しときました。
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おっしゃる通りでした (ふるちん)
2006-04-27 23:38:49
やはり認識・知識不足でてきとーなことを言ってはいけませんでした。失礼致しました。



赤狩りのときには、映画監督らが密告する・されるという醜い歴史がありました。ユダヤ人に対してもそうでした。



おっしゃる通り、右左関係なく発生しうる悲しいことですね。私見を正しいかのごとくに申し上げて大変失礼致しました。また「代替案」というこのブログのテーマと関係ない話でした。私個人としては、このような会話をできる友人がまわりにいないため、刺激的でありますが…
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共謀罪反対運動が乗り越えるべき壁とは (山澤)
2006-04-28 01:56:23
わたしは路上で「なんでや」というコトバ売り活動をしているので共謀罪反対運動の方も良くお見受けします。路上の人々と話してみると共謀罪反対運動の正統性だけでなく運動の壁も感じられます。以下、るいネットに以前投稿したものです。



http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=600&t=6&k=0&m=99559



http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=600&t=6&k=0&m=99560

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山澤様 ()
2006-04-28 10:00:36
 山澤さんの投稿記事、大変に興味深く拝読いたしました。「市民団体や労働組合などには適用されない」という法務省の説明を信じたいのですが、条文にそれが明確化されていないと「ときの権力者の性格次第で十分にお悪用され得る」と思ってしまいます。

 私も未来を信じたいのですが、治安維持法では、武力闘争の「ぶ」の字も念頭になかった人々も次々に検挙されたという歴史があるので、権力をがその気になったときの悪用を恐れます。



 民主党が適用対象を「犯罪を目的とした集団に限る」という修正案を出しているようですが、そのような適用対象の明確化が必要だと思います。



 それから、「左翼がネオコンになったのは何で?」というTBの問題意識も大変に興味深かったです。私もいちど論じてみたい課題です。
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Unknown (oozora通信)
2006-04-28 21:59:23
犯罪は法によって直接的には防ぎ得ない。ただ犯罪(者)を法によって裁くのみですね。このことによって犯罪行為へのブレ-キの役目をはたすという考え方にたって日本の国内法は成り立っていますが、つまり犯罪が実行された後でなければ法は関与できない仕組みです。

このことに対する承認はなにも犯罪自体を当然のことながら看過しようとするものではない。

我々の社会が成し得る最善のことは統計的な犯罪発生件数の抑制と減少にむかっての条件つくり以外にはないのが現実であるし、直接的に犯罪実行行為以前にまで法が介入しようとしたらどういう現象が起きてくるかは日本国内はもとより世界中の国において経験済みのことです。

条約批准云々に関しては差し戻すべきです。

日本も他の国も同じ問題を内包しているわけですから共感は可能なのではないでしょうか。

その後に国際的テロや越境的国際犯罪にたいする個別法を検討すべきです。日本はむしろこういう方面の提案を国際社会にたいして行うべきなんです。

けっして犯罪一般を対象とすべきではありません。



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追伸 (oozora通信)
2006-04-28 22:12:03
再度、我々は確認しなければならない。

根本的に「犯罪」は、いかなる法をもってしても防ぎ得ない。

いかに国連が、あるいは世界中が防ぎうるといったとしてもそれは誤った認識です。(9.11テロを経験したアメリカに対する同情はあったにせよ)

現状の「共謀罪」は法律として間違った取り組みです。

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リタ-ンなし・・不安 (oozora通信)
2006-04-29 13:30:50
なぜかリタ-ンなし?自分が言ってることにやや不安をおぼえる。

恥の上塗り的についでに言うと、ただでさえ警察はいそがしいのにこの上犯罪実行以前にまで手が回るわけがない。・・・・ということで新たに別組織が税金で作られる。・・・でもってその組織は専門的集団であるがゆえに自らの仕事を創造しはじめる・・・でもって????という社会があらわれる。こうなりゃやけくそだわ!!。
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