代替案のための弁証法的空間  Dialectical Space for Alternatives

批判するだけでは未来は見えてこない。代替案を提示し、討論と実践を通して未来社会のあるべき姿を探りたい。

勝海舟関係文書の中に赤松小三郎のオランダ語写本発見

2020年07月01日 | 赤松小三郎
 勝海舟と赤松小三郎の師弟関係が窺える、ちょっとした発見を記します。国立国会図書館の勝海舟関係文書の中に、赤松筆跡のオランダ語資料があったという発見です。

 日本銃砲史学会という学会があります。私は会員ではないのですが、昨年「赤松小三郎と銃」について発表して欲しいという依頼を受けました。「私は銃については素人なのでムリです。赤松小三郎と銃については是非銃砲史学会の皆さまで研究していただきたい」とお断りしたのですが、「必ずしも銃に焦点を当てなくてもよいので、今後の赤松研究のためにも是非に」と頼まれ、学会で報告し、論文にもいたしました。専門の研究者の方々が、赤松小三郎に興味を持って下さるというだけで、私としては大変に嬉しいことですので、役不足を承知で、引き受けたわけです。

 さて、銃の学会で報告するのに、銃のことを調べないわけにはいきませんので、赤松小三郎と銃について懸命に調べたところ、いくつか興味深い事実を発見できました。
 論文の骨子: 赤松小三郎は勝海舟の従者として長崎海軍伝習所に赴き、当初は海軍について勉強していたが、長崎滞在2年目にオランダ人から見せてもらった新式のミニエー銃の威力を知って衝撃を受け、関心は海軍から陸軍に移っていった。のちに『英国歩兵練法』を翻訳して、彗星の如く登場する赤松であるが、新式銃に対応する軍隊運用についての基礎的な問題意識は長崎時代に形成されていた。
 学会誌が出版されましたので、勝海舟関係で発見した情報をオープンにします。


『銃砲史研究』第389号(令和2年4月、日本銃砲史学会)
拙稿「赤松小三郎と銃」 28~42頁。

 論文の中で、赤松小三郎の銃にかんするオランダ語の本の訳本の原本を探索しました。その結果、2冊の訳書のオランダ語原本を特定し、訳本と比較することができました。

 赤松小三郎が訳した『矢ごろのかね 小銃彀率』というオランダ陸軍の銃の扱い方のマニュアル本があります。このオランダ語の原書も特定されていなかったのですが、国立国家図書館憲政資料室の「勝海舟関係文書」の中に、この本のオランダ語原書の赤松の手による写本があることを発見できました。
 国会図書館の「勝海舟関係文書」の中には、オランダ語の写本が8冊含まれています。そのうちの2冊は赤松小三郎の筆跡と思われます。その中に、『矢ごろのかね』の原書がありました。
 下に、赤松小三郎が筆写したと思われるオランダ語原書の写本と、小三郎が出版した『矢ごろのかね』の中の写真を比較して掲載します。 


勝海舟関係文書(請求番号116)の赤松の筆跡と思われるオランダ語原書の写本(国立国会図書館憲政資料室蔵 )https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/11222559
オランダ語原書タイトル Voorschrift betreffende de Wapens tot vervaardigen van patronen en de infanteris.(訳すと『弾薬筒を作り、銃を操作するための歩兵の教則』といった意味)

 
出版された『矢ごろのかね』の挿入図(安政5年9月出版)

 オランダ語の写本の筆跡は赤松小三郎の筆跡と思われます。一目でわかりやすいのは歩兵の絵です。オランダ語原本から筆写した歩兵の絵と、小三郎の訳書における小三郎が描いた歩兵の絵がそっくりなので、オランダ語の写本も小三郎の手によるものであることが分かるかと存じます。

 勝海舟関係文書にあるさまざまな資料、小三郎の手によるものもあるのではないかと思って閲覧していったところ、オランダ語の写本に小三郎の筆跡を見つけたというわけです。
 2019年3月に国立国会図書館・憲政資料室の勝海舟関係文書がデジタル化されて一般公開されていました。憲政資料室に行って資料請求せずとも、パソコン上で容易に閲覧できるようになり、自宅で原書を見つけることができたのでした。デジタル化の恩恵に感謝です。

 勝海舟研究は膨大な蓄積がありますが、勝海舟研究者は、ほぼ赤松小三郎の存在を無視してきました。勝海舟の関係文書をちょっと探しただけで、赤松の筆跡のものが見つかるくらいなのに、赤松の存在は無視され続けてきたのです。
 長崎海軍伝習所時代における勝と、その従者であった赤松の関係が窺えます。おそらく長崎で、勝や赤松は、日本陸軍を建設するために必要となるテキストを順次写本し、翻訳もしようとしていたのでしょう。
 ちなみに、小三郎が『矢ごろのかね』を出版しようとした直前、主君の松平忠固は「無勅許条約調印」の責任を取らされて老中から失脚してしまい、小三郎は出版した本を買い取ってもらえなくなって、借金を抱えたまま夜逃げするという悲劇的な事態になるのです・・・・・・・。

 

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