代替案のための弁証法的空間  Dialectical Space for Alternatives

批判するだけでは未来は見えてこない。代替案を提示し、討論と実践を通して未来社会のあるべき姿を探りたい。

原発推進論も温暖化懐疑論もまとめて黙らせよう

2015年11月27日 | 温暖化問題
 暗くなるニュースばかりの毎日の中、わずかだが薄明が射すようなニュース。昨年は原発を全く動かしていなかったにも関わらず、CO2は3.0%減少したという速報値。リーマンショックの後にCO2が減って以来、5年ぶりの減少。
 NHKニュースより抜粋引用します。

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http://www3.nhk.or.jp/news/html/20151127/k10010320881000.html

温室効果ガスの排出量 5年ぶり減少   11月27日 5時27分

昨年度の日本の温室効果ガスの排出量は、13億6500万トンと前の年度に比べて3%減少したことが分かりました。

排出量が減少したのは5年ぶりで、環境省は東京電力福島第一原発の事故を受け全国で原発が停止したあと、家庭や事業所での省エネや再生可能エネルギーの導入が進んだことなどを理由にあげています。


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 固定価格買い取り制度が始まって着実に再生可能エネルギーが普及しているので当然の結果だが、素直にうれしい。

 日本の反原発派の中には、「地球温暖化対策を訴える人々は、原子力推進派だ」とおっしゃる人もいるが、誤解も甚だしい。原子力業界が、温暖化問題を原発推進に利用しようと「原発はCO2を出さないからクリーン」などの言説を流してきたのは事実であるが、彼らは「エセ温暖化防止論者」と呼ぶべきであろう。
 現実には原発を推進していた時代にはCO2は減る気配もなかったが、全原発が停止する中で賢明に省エネや再エネ普及に努めた結果、CO2も削減できることが明らかになった。実態は、原発依存からの脱却を志向してこそ、CO2の削減も可能になるのだ。ドイツやスウェーデンがそうなっているように。


 日本は、今年の猛暑を原発なしでやり過ごした。電力9社の統計で、真夏のピーク時の供給電力の6.4%が太陽光だったということが分かっている。(この記事)。原発推進論者は、「原発なしでは真夏のピーク電力を供給できない」という言説を流してきたが、太陽がサンサンと輝く真夏のピーク時には太陽光の発電量も増えるから、太陽光がピーク電力を十分に補えるのだ。いずれ真夏のピーク電力の50%は太陽光で補うことも可能になるだろう。再エネの普及が進めば、もちろん原発は全くいらない。

 以下の図のように、資源エネルギー庁によれば、水力を除く再生可能エネルギーの全発電量に占める比率は2011年の1.4%から、2014年には3.2%に増えてきた。さらに節電や省エネ家電の普及によって年間の発電電力量も5%弱減っている。まずは早期に再エネ比率25%を達成しよう。
 

出所)http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1506/26/news021.html


 下の図のように、ドイツでは固定価格買取制度などで再エネ普及を進めた結果、GDPは成長しながら、着実にCO2排出量も減らすことに成功してきた。再エネの普及が進まず化石燃料に依存してきていた日本は、GDPが増えればCO2が増え、GDPが減ればCO2も減るという具合にGDPとCO2がカップリング(連動)して変化してきた。
 固定価格買取制度が始まり、再エネが離陸しつつある中、これから日本においてもGDPとCO2排出量がデカップリングする(連動しなくなる)。CO2を減らせば減らすほどGDPも増えていくというドイツやスウェーデン型の経済構造に移行することになるのだ。この成果が明らかになるにつれ、原発推進論者も温暖化懐疑論者も沈黙していくことであろう。
  

出所)植田和弘・梶山恵司編著『国民のためのエネルギー原論』日本経済新聞社、2011年




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6 コメント

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Unknown (被本塁打大王)
2018-08-25 17:16:53
原子力“低コスト神話”覆すシンプルな計算法
https://president.jp/articles/-/1279?page=2

> 火力に対する原子力の優位性を論証するためのCO2排出に関する比較も、事実に基づいているとは言い難い。東電傘下の企業に勤務するエネルギー濃縮の専門家は、「原子力は投下エネルギーの8割強が濃縮工程に偏っている。石油火力のCO2排出量が原子力より多いといっても、それは多分15~16%程度」という。「8割強」という数字には、核廃棄物の処理と保管に要するエネルギー分は含まれていない。(上より引用)

原発のCO2排出量は火発と大差ないとのこと。事実なら、全原発は速やかに廃炉すべきですね。

ブログ主の主張通り、再生可能エネの普及を進めた方が地球温暖化抑止に効果的だと思います。

併せて、省エネや排熱の有効活用等も推進しましょう!
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始めてカキコさせていただきます (被本塁打大王)
2018-08-24 20:14:19
CO2や排熱をムダなく利用するオランダの「スマート農業」
https://services.osakagas.co.jp/portalc/contents-2/pc/w-energy/report/201804/index.html

地球温暖化の原因たるCO2や排熱を農業生産効率の向上に役立てましょう!
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ヒートアイランドでは説明不能 ()
2017-01-15 10:08:07
>地球規模のヒートアイランド現象

 台風やハリケーンの強大化も、サンゴの白化も、局所的なヒートアイランドでは説明できません。(ゲリラ豪雨くらいでしたら説明可能ですが・・・) 地球規模での海水温が上昇しています。
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Unknown (mars)
2017-01-14 16:29:38
全体として寒冷化に向かってる方だと思うけどね…CO2による地球温暖化はあり得ません。異常気象の原因は都市化と砂漠化による「地球規模のヒートアイランド現象」のよる対流異常であって「CO2の排出権取引」では絶対に状況は改善しない。
CO2の影響を現実的に低目に見積もっても原発も火力と同じ熱動力機関であり、イエローケーキの生成エネルギーコストも無視できない。
放射能による「CO2の分解」についての技術解説を見ましたが、クリーンな一酸化炭素と活性酸素に分解するそうですが…猛毒であり、人間以外の生き物も死にます。
結局の所スマートグリッドと化石燃料式小型発電機のコージェネ、地熱、風力、水力といった地域に合う自然エネルギーと宇宙太陽光送電、そしてもっとも重要なのは植林と人口の局地密集による「都市砂漠」の緩和だと思います。
地球温暖化論で不安を煽って原発推進する温暖化論者のやり方は人種的憎悪を煽る核武装論者のようでどうにも気に入らない。
原発にしても完全閉鎖型低温発電(ペルチェ素子やスターリングエンジン)なら爆発の危険が無いのに、地熱やバイオマスに転用されるのが嫌で、わざわざ一番放射能を沢山作るBWRが温暖化解決の切り札と言う辺り核戦争がしたくて仕方がないように見える。
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海水に温暖化の熱エネルギーの90%が蓄積 ()
2015-12-04 17:50:17
りくにす様

 IPCCの第5次報告書の第一作業部会の報告概要が以下にあります。この資料の16ページを見ますと、この50年で海洋表層で水温が0.5℃ほど上昇している様子がわかります。

http://www.env.go.jp/earth/ipcc/5th/pdf/ar5_wg1_overview_presentation.pdf

 海水温の上昇ペースの方が、気温上昇ペースより数倍早いです。
 上のファイルの15ページによれば、「1971年から2010年の40年間において、気候システムにおける正味のエネルギー増加量の60%以上は海洋の表層(0~700m)に蓄積されており、約30%は海洋の700m以深に蓄積されている」と結論されています。

 温暖化で蓄積されたエネルギーの90%は大気ではなく、海洋に蓄えられてきたとのことです。
 このエネルギーが今後大気中に出てくるとなると、さらに破局的な事態の進行が予想されます。
 
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気温上昇の緩衝材になった海水 (りくにす)
2015-12-03 12:06:10
「温暖化説」が警告したほどには気温が上昇しなかったのは、海水に熱が蓄えられていったからだ、とNHKの某番組(すみません失念しました)で言っていました。これからは海水が熱を蓄えきれずストレートに気温が上昇していき異常気象も増えるであろう、ということです。
うちの母などは、海水温上昇は海底火山のせいだろうと思っています。それを言ったら日本の原発や火力発電所もだいたい海岸沿いにありますから海水温の上昇に貢献しているかもしれません。
数字に弱いのでデータを出されても処理できず困ってしまいますが。
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