代替案のための弁証法的空間  Dialectical Space for Alternatives

批判するだけでは未来は見えてこない。代替案を提示し、討論と実践を通して未来社会のあるべき姿を探りたい。

国交省による基本高水算出データ公開の意義について

2011年08月16日 | 八ッ場ダム裁判
 八ッ場ダム情報公開裁判で国交省が敗訴したことを受け、大畠国土交通大臣が控訴するか否かの政治的判断に注目が集まっていました。昨日、正式に控訴を断念し、今後は利根川のみならず全国の河川で基本高水算出の根拠となった情報を公開する方向で調整に入ったということです。本日の新聞各紙でも報道されていました。
 下記サイト参照。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2011081502000033.html

 この問題に関しては、大河原雅子参議院議員が8月5日に国会質問で取り上げ、情報を公開し、国は控訴しないように直接大臣に要望しています。また超党派の国会議員で構成される「公共事業チェック議員の会」ならびに「八ッ場ダム等の地元住民の生活再建を考える議員連盟」が大畠国交大臣と江田法務大臣に控訴しないように呼びかける要望書も提出しています。市民の願いと良識ある議員の方々の訴えが実を結んだのだと思います。すばらしいことでした。これ以上、役に立たないダムに税金を使ってほしくないと考える市民の一人として感謝を申し上げます。

 この決定に意義についていくつか書いておきます。

(1)これまで国交省がダム建設の根拠とする基本高水の算出過程が、情報不開示により全く不透明で、これまでは計算が正しいのかどうか誰も検証できない状態でした。第三者による検証が可能になるという点では歴史的な意義のある決定だと思います。貯留関数法による計算値と実測値が乖離することが多いのですが、そのカラクリに関する解析も進むでしょう。

(2)国交省も各都道府県も、市民の知らないところで第三者性のないコンサルに丸投げして貯留関数法によって計算された基本高水に依拠し、その机上の計算値に基づいて多額の血税をダム建設に投入してきました。この基本高水を根拠とする河川計画を今後も継続してよいのか否か、国民的な議論を起こす契機にもなると思います。

(3)公開される流域分割図では、利根川の上流で八ッ場ダム以外にも将来の建設計画のあるダム予定地の情報が書き込まれているそうです。住民の知らないところで進行してきた八ッ場後の「次の計画」「その次の計画」……も明らかになります。ちなみに、利根川の河川整備基本方針を定めた2005年12月の社会資本整備審議会の河川分科会で、河川計画課長(当時)は「利根川上流部の洪水調整施設の整備は、現在建設中の八ッ場ダムで最後」と明言しています。国交省は審議会でウソをついていたという事実も明確になります。


 大河原議員と大畠大臣のやりとりは以下の「八ッ場ダムをストップさせる埼玉の会」のサイトにあります。

http://yambasaitama.blog38.fc2.com/page-1.html

 大河原議員が「情報公開は民主党の大きな柱」と問いただしたのに対し、大畠国交大臣は「八ッ場ダムだけでなく他のダムとも連携している。開示によってさまざまな動きをする方もいるので全部開示するのは現実問題としては難しい」とすっかり官僚に取り込まれた答弁をしていました。この時点では、控訴する気満々であったことがうかがえます。

 これが同じ民主党所属の国会議員同士のやり取りなのです。情報公開という党の方針を承認していたはずの大畠議員が、「大畠国交大臣」になった途端に官僚の方針に迎合するようになるのですから、官僚による大臣支配(=国民無視)の巧妙さたるや恐るべきものがあります

 国交省としては控訴期限ギリギリになるまで、難しい判断を迫られたのでしょう。省内の良識派の方々は控訴断念に向けて動いてくれたのでしょうか。そうした方々が今後は前面に出てきて欲しいものです。
 
 



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