季節を描く

季節の中で感じたことを記録しておく

“黄金の都、シカン”展(国立科学博物館、2009.9.24)

2009-09-25 22:39:51 | Weblog

 上野公園の秋の朝。日はまだ赤々としているが影は濃く長くなっている。国立科学博物館のシカン展へ行く。 

       

 ペルー北岸で紀元前後から8世紀ごろまで栄えたモチェ文化から13世紀から16世紀のインカまでの間にかつて歴史の空白があった。それを埋めたのがシカン文化(9C-14C)の発見である。   

 Ⅰ シカン文化の世界、インカ帝国の源流 

 さて1991年、シカン文化の中心地、ロロ神殿から発見された「シカン黄金製大仮面」(中期シカン:950-1100年頃)は遺体の顔につけられていた。朱の顔、黄金の装飾が華麗である。

              

 同じく中期シカンの遺体の黄金製の頭飾りは、今は金の部品だけ残るが、上部に羽飾りがあったという。それは今は失われてない。ところが黄金製の羽飾りも製作されていてこれは今も残る。薄く風に揺れるほどである。  

 トゥミ(ナイフ)が無気味である。生贄は動物でなく人間。トゥミは人ののどを切る。黄金の儀式用のトゥミは無気味に美しい。青いトルコ石が黄金に映える。  

             

 生贄の人間の血を入れるケロ(カップ)はシカン神の顔を打ち出している。シカン神は最初のシカンの支配者を神格化したものである。以後、シカン国家の支配者は神そのものとされる。 

               

  リャマの骨のフルート、鳥の形の土笛、黄金製のガラガラなどがある。宗教儀式には音楽が不可欠である。これはいかなる文化にも普遍的なのだと思った。  

  Ⅱ シカンの生活・経済・社会 

 ナイペと呼ばれる薄い銅製の貨幣が興味深い。交易用と思われる。

                     

 交易の対象にウミキクガイ、イモガイがある。これらはシカン社会のエリート層の墓の副葬品である。アンデスではエクアドルのそれらの貝は貴重品であった。 

             

 金の工芸技術は発展している。例えば、①ふいごがないが火吹き竹の先に羽口(土器)がつけられている。②金の薄板を切るのみは金合金製、銅を加工するのみは銅合金製である。③黄金製の頭飾りのためには可動パーツが常に用意されていた。  

 シカンの土器から食べ物がわかる。トウモロコシ、貝、カモ、ザリガニ、リャマ、瓜など。  

               

 また土器は動物もかたどる。ネズミ、無毛犬、豚(いないはずだが豚に似た動物がいる)、蛇、ヒキガエル、カモ、インコなど。  

 シカン国家は他民族国家であり、中心民族のシカンのほか、モチェ、またあごのピアスに特徴があるタヤンからなる。  

 神殿が6ヵ所あり、貴族の輿の背に神殿の儀式の6つのミニチュアが装飾されている。  

              

 シカン社会には厳格な階層がありこれは墓の副葬品からわかる。エリート層は金・銀の副葬品、庶民は砒素銅のそれである。  

 シカン展は昼近くなって混雑してきた。黄金製の製品、土器などを誰もがしげしげとよく見ている。外にでれば日が高くなり気温も上がった。しかし風は涼しい。


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