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『シラノ・ド・ベルジュラック』(原作:エドモン・ロスタン、シラノ役:吉田鋼太郎、ロクサーヌ役:黒木瞳)日生劇場:シラノは、唯物論的哲学者であり、魔術から解放され、世俗的・理性的だ!

2018-05-27 13:02:24 | Weblog


(1)
シラノ・ド・ベルジュラック(1619-55)は、フランス、ルイ13世時代の剣術家、作家、哲学者、理学者。三十年戦争(1618-48)の時代だ。

(2)
彼は、1897年上演、エドモン・ロスタンの戯曲で名を知られる。大きな鼻に悩みながらも、一人の女性(ロクサーヌ)を胸中で恋い慕い続け、生涯を終える。騎士道精神にあつく正義感の強い男として、描かれる。

(3)
歴史上のシラノは、1639年、ガスコーニュの青年隊に入隊。1640年、三十年戦争で重傷を負い、1641年、軍隊を去る。百人を相手にして2人を殺し、7人を傷つけた武勇伝が伝わる。また彼は、科学、哲学を唯物論的に研究し、モリエールなど自由思想的文人と交わる。詩集、悲劇、喜劇、科学小説を執筆。だが1653年、材木が頭に落ち重傷を負い(陰謀かもしれない)、1655年死去する。(ただし死因は梅毒。)

(4)
劇中のシラノは、臨終のときの言葉が有名だ。彼は「心意気!」にのみ生きた。まさしく劇中では、その通りの人生だ。彼の最期の時、ロクサーヌから「愛しております、生きていてくださいまし! 」と初めて、愛の告白。しかしシラノは「お伽噺」を否定する。「<愛しています>の言葉を聞いて、醜さが消えてなくなる」ことなどない。「わたしは、一向に変わりはしない。」シラノは、唯物論的哲学者であり、魔術から解放され、世俗的・理性的だ。