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企画展『線の画家 ベルナール・ビュフェ』ベルナール・ビュフェ美術館:われわれ青年を掩(おお)っていた敗戦による虚無感と無気力さのなかに、一筋の光芒を与えてくれたのが彼の絵であった!

2022-06-19 15:52:56 | Weblog
ベルナール・ビュフェ美術館は、フランスの画家ベルナール・ビュフェ(Bernard Buffet)(1928-1999)の作品を収蔵・展示するため1973年に創設された。創設者・岡野喜一郎(1917-1995)がビュフェの作品と出会ったのは、1950年代の前半だった。「数年にわたる戦争から復員したばかりの私は、感動して彼の絵の前に呆然と立ちつくしたことを思い出す。研ぎすまされた独特のフォルムと描線。白と黒と灰色を基調とした沈潜した色。その仮借なさ。匕首(あいくち)の鋭さ。悲哀の深さ。乾いた虚無。錆びた沈黙と詩情。そこに私は荒廃したフランスの戦後社会に対する告発と挑戦を感じた。当時のわれわれ青年を掩(おお)っていた敗戦による虚無感と無気力さのなかに、一筋の光芒を与えてくれたのが彼の絵であった。国土を何回も戦場にし、占領され、同胞相殺戮しあったフランス。その第2次世界大戦の激しい惨禍のなかから、このような感受性と表現力をもった年若き鬼才が生まれでたことに畏怖の念をいだいた。その表現力はまさしく、私の心の鬱々としたものに曙光を与えたのである。以来、私はビュフェの虜となった。無宗教の私に、一つの光明と進路を与えてくれたのが、ほかならぬ彼のタブロオそのものだった。これが私のビュフェへの傾倒のはじまりである。」(岡野喜一郎著「ビュフェと私」1978年4月より)


★ベルナール・ビュフェ「カルメン」1962

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