季節を描く

季節の中で感じたことを記録しておく

『宝生会月並能』 於:宝生能楽堂 2013.3.10

2013-03-10 19:44:22 | Weblog
●能「蟻通」(ありどおし)シテ近藤乾之助
 紀貫之(ワキ)が蟻通明神の前を馬で通りかかる。馬はその場に釘付けになり、進むことも退くことも、出来ない。
 そこへ蟻通明神(シテ)が長柄の傘を指し、宮人の姿で現れる。宮人が、「馬を下りないから、明神の怒りを買ったのだ」と事情を説明。驚いた貫之が和歌を捧げ、その歌の徳によって明神の怒りを宥めた。
 歌が持つ神秘な力。明神が、静かに穏やかに退出して行く様子に、感動する。

●狂言「寝音曲」(ねおんぎょく)シテ三宅右近
 謡自慢の太郎冠者(シテ)の謡を聞きたいと、主人が所望する。冠者は勿体をつけた挙句、「主人の膝枕でないと声が出ない」などと言い、主人の膝を枕に、気持ちよく謡う。
 ところが熱中し、起きて謡いだし、冠者の嘘がばれる。主人が怒って、逃げる冠者を追いかける。
 初めから終わりまで、可笑しい。

●能「三山」(みつやま)シテ亀井保雄
 その昔、香具山に住む男が、耳成山(ミミナシヤマ)の桂子(カツラコ)(シテ)を捨て、畝傍山(ウネビヤマ)の桜子(ツレ)のもとにだけ、通うようになる。桂子は、嫉妬のあまり池に身を投げて、死ぬ。
 良忍上人(1132没)(ワキ)が大和に入り、念仏を広めていると、桂子の霊が現れ、「成仏させてほしい」と良忍上人に言う。
 しかし嫉妬に狂う桂子の霊が、桜子の霊に、襲い掛かる。緑の桂の枝と、桜の枝の打ち合いが、艶かしい。怒りのカタルシス作用によって桂子の霊が成仏する。
 妖艶さが満ちる。
     

●能「善知鳥」(うとう)シテ金森秀祥
 善知鳥(うとう)は鳩ほどの大きさの鳥。
 旅僧(ワキ)が、立山で老人(前シテ)に会う。老人は、自分は死者(幽霊)だが、形見を、陸奥に住む妻子に届けてほしいと頼む。老人は、元猟師で、鳥獣を殺す生業だった。
 旅僧が陸奥で、妻子に会った時、猟師の亡霊(後シテ)が現れる。
 殺生をした罪で猟師は、地獄に堕ちた。殺された善知鳥(うとう)が、地獄では怪鳥となり、鉄の嘴、銅の爪で、猟師の肉をむしり、眼を抉る。亡霊が、その苦しみを語り、演じる。
 そのまま、凄惨な幕切れとなる。

“ラファエロ”展  2013.3.5 (国立西洋美術館)

2013-03-05 21:54:09 | Weblog
 ラファエロ(1483‐1520)は、レオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロと並び、ルネサンスの3大巨匠と呼ばれる。37歳で夭折。ラファエロの作品は「ルネサンスの優美(グラツィア)」そのものである

 「自画像」(1504‐1506)フィレンツェ、ウフィツィ美術館:20歳初めのラファエロの自画像。穏やかな雰囲気。父は、絵画工房の親方。その父が、ラファエロ11歳のとき、死ぬ。工房をラファエロが引継ぎ、17歳で、彼はすでに親方だった。
          

 「聖ゲオルギウスと竜」(1504‐1505)パリ、ルーブル美術館:古代ローマ末期、カッパドキアの首都ラシア 付近に、巨大な悪竜がいた。通りかかったゲオルギウスが竜を退治し、異教の村人をキリスト教に改宗させる。しかし彼は異教徒の王に捕らえられ、拷問され殉教した。
     

 「大公の聖母」(1505‐1506)フィレンツェ、パラティーナ美術館:18世紀にトスカーナ大公が、この絵を愛蔵した。初め、背景が描かれていたが、後世、黒く塗りつぶされる。ラファエロの最高傑作のひとつである。
     

 「無口な女(ラ・ムータ)」(1505‐1507)ウルビーノ、マルケ州国立美術館:ウルビーノからフィレンツェに移ったラファエロは、ダ・ヴィンチの絵画に感激し、大きな影響を受ける。「ラ・ムータ」は、モナリザに似る。なおラ・ムータがするルビーの指輪は、当時の流行。
        

 「聖家族と仔羊」(1507)マドリード、プラド美術館:レオナルド・ダ・ヴィンチの「聖アンナと聖母子」にも仔羊が描かれる。仔羊は生贄であり、イエスがやがて、人類のため犠牲となることを暗示。
     

 「エゼキエルの幻視」(ca. 1510)フィレンツェ、パラティーナ美術館:エゼキエルは、バビロン捕囚(紀元前597年)の時代の預言者。彼は、バビロンにおいて、捕囚民の精神的指導者となる。エゼキエルは、イザヤ、エレミアとともに3大予言者。彼は、父なる神が、智天使ケルビムを伴い、鷲、人間、牡牛、獅子(新約聖書の4書記を象徴)に曳かれた「玉座」に座って現れるのを、幻視した。