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“ユベール・ロベール、時間の庭”展  2012.3.9 (国立西洋美術館)

2012-03-09 20:32:16 | Weblog
 ユベール・ロベール Hubert Robert(1733-1808)はフランスの反ロココの画家、つまり新古典主義の画家。「廃墟のロベール」として人気を博する。

 「作者不詳、エリザベト・ヴィジェ=ル・ブランに基づく《ユベール・ロベールの肖像》」:普段着の肖像。手に絵筆とパレットを持つ。

               
 
 1748年、ポンペイ遺跡の再発見。他にも多くの遺跡が発掘される。当時、イタリアは、古代遺跡の発掘ブーム。ロココの軽佻浮薄が飽きられ、古代ギリシア・ローマ(古典古代)への回帰運動、新古典主義が誕生する。
 
 ユベール・ロベールは1754-1765年までの11年間、イタリアに滞在した。彼はイタリア時代の思い出をもとに様々の古代遺物を空想的に組み合わせた作品を生み出す。

 「古代遺物の発見者たち」(1765):これは空想の絵画空間。古代遺跡との出会いの感激。同時に野次馬の男女も描かれる。差し込む光の明るさの強調は、ロベールの特徴。

     
               
 「サン=ドニ教会の内部」(1770-1774):王室とかかわりが深い旧体制期フランスの風景。

               
              
 「凱旋橋」(1782-1783):奇妙な想像の風景。もはやロココからは遠く隔たる。



 「メレヴィル庭園の眺め」(1786以降):フランスは幾何学式庭園から風景式庭園への移行期。ユベール・ロベールは庭園デザイナーとしても才能を発揮する。彼はヴェルサイユの庭園の一角をデザインし、ルイ16世から「国王の庭園デザイナー」の称号を与えられる。

                       

 「アルカディアの牧人たち」(1789):大作。理想化された牧歌的古代が描かれる。心和む。しかし作品が描かれたのは、フランス革命開始の年。血なまぐさい時代が始まる。

                            

 「サン=ラザール牢獄の囚人たちの散歩」(1794):旧体制の王族・貴族と関係が深いロベールは、1793-94年に投獄される。この作品は、彼が獄中で作った皿絵。看守を通じて販売。断頭台に上るはずが、彼は別人のロベールと取り違えられ、生き残る。その後、彼は平穏に成功者として晩年を過ごす。