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『傾城反魂香(ケイセイハンゴンコウ)』「土佐将監閑居の場」近松門左衛門作(国立劇場)2014/7/18 

2014-07-19 18:20:46 | Weblog



江戸初期の絵師岩佐又兵衛(イワサマタベエ)の伝説などに取材した作品。

絵師、浮世又平は喋りが不自由。
又平は、妻のお徳とともに、「土佐」の苗字を名乗ることを許してもらうため、師匠土佐将監の閑居を訪れる。

しかし将監は、絵師としての手柄を立てない限り、苗字は授けられないと拒絶。
絶望した又平は死を決意し、この世の名残に手水鉢(チョウズバチ)へ自画像を描く。

ところが又平の一念が奇跡を起こす。
描かれた自画像が、手水鉢を突き抜けて裏側に浮き出る。

土佐将監が、この奇跡の一部始終を見て、又平の絵師としての手柄を認める。
又平は、めでたく「土佐」の苗字を授けられ、土佐光起(トサミツオキ)を名乗る。

全体として、ハッピーエンドの喜劇!

①村にトラが現れるが、それは絵から抜け出たものだという。この設定が、人を喰っている。
②このトラを消すため、絵を描き消す。「描き消す」の意味が不思議。一種のマジカルなおまじない!そして実際トラが消える。
③「土佐」の苗字を授けられず、又平が割腹自殺を決意するあたりは、悲壮感に満ちる。
④又平が描いた自画像が、手水鉢を突き抜けて裏側に浮き出る。その奇跡を目にした妻お徳の驚きの仕草が、コミカル。さらに、又平の驚きもコミカル。
⑤この奇跡を知って土佐将監が又平に、めでたく「土佐」の苗字を授けた時、場面は一転、喜びの頂点にいたる。
⑥苗字を許された後、お徳の鼓に合わせ又平が踊る「大頭の舞(ダイガシラノマイ)」が愉快。

大変楽しい作品で、見終わって嬉しい気分になる。