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1901年、モスクワ芸術座で初演。
この時、ロシアは革命前夜。
オリガ、マーシャ、イリーナの三人姉妹の父は、ロシア軍大佐だが、1年前に亡くなった。
彼女らは、モスクワから離れ、小さな地方都市に移る。
良家の没落した三人姉妹。
彼女らは、再びモスクワに帰りたい。
この地方都市に、ロシア軍旅団が駐留し、将校たちが、三人姉妹の住む家を訪れる。
ロシア軍将校は、みな下級貴族の出身で、労働とは無縁の環境に育つ。
将校たち下級貴族の会話が、時代を反映する。
彼らは、時代の進歩について語る。
進歩が信じられた時代。
あるいは、逆に今の時代を懐かしむ時代の到来を、語る。
革命が予感される。
いずれにせよ、時代の変化が不可避と、覚悟されている。
人生あるいはこの世は、存在するとも、存在しないともいえると、60歳の老軍医が語る。
実際、死が永遠で、生=この世は一時だから、この懐疑は当然。
しかし生きる者には、生=この世が圧倒的重みをもち、決して存在の懐疑が生まれる余地はない。
やがて5年が経ち、ロシア軍旅団はこの地方都市を去る。
三人姉妹の家を訪れていた将校たちも、全員いなくなる。
かつて理想を語った末娘イリーナ(蒼井優)は、やがて現実に従い、将校から工場主となった男爵と結婚する。
男爵はイリーナを愛したが、彼女は、妻の義務を果たす約束はするが、夫を愛さない。
旅団が出発する日、彼女は、夫を決闘で失う。
悲嘆の後、彼女はこの世界で、女性教師として独立して生きる決意をする。
理知的な次女マーシャ(宮沢りえ)は、かつて18歳で、自分よりずっと年長の中学校教師と結婚したが、幻滅。
彼女は、ロシア軍旅団の将校と恋仲になるが、結局捨てられる。
しかし夫は優しい。
夫は、マーシャを愛しており、彼女を許す。
だがおそらく、マーシャは、一生、夫を軽蔑し続けるだろう。
長女オリガ(余貴美子)は、しっかり者で堅実。
彼女は、28歳ですでに学校の教頭代理。
そして、5年後には校長を務める。
かつてモスクワへの帰還にあこがれた三人姉妹。
いまは地方都市で堅実に、あるいは不満だが生活手段は確保し、生きる。
主題は、「理想は、現実の中でのみ語られる」という“世界の構造的必然性”である。